大学出版部協会

 

経営と情報の連携ウェブポータルを活用した大学改革

ウェブポータルを活用した大学改革 経営と情報の連携

四六判 274ページ 上製
価格:3,630円 (消費税:330円)
ISBN978-4-501-62480-4 C3037
奥付の初版発行年月:2010年03月 / 発売日:2010年03月下旬

内容紹介

「大学ポータル」は、ネット情報の入口となるウェブポータルの大学版であり、大学に関連するすべての情報を一元管理し、利用者に応じてカスタマイズして提供するものである。入学希望者・学生・父兄・OB・企業など、それぞれに対応したサービスを提供することが、大学生き残りのためには必要である。本書では、「大学ポータル」の導入・構築・運営を通して大学を改革し、新たなビジネスチャンスを掴む方策を詳解。

出版部から一言

●書籍関連情報は こちら をご覧ください。

(リンク先)http://www.tdupress.jp/kanren_978-4-501-62480-4

前書きなど

 刊行によせて  
        伊藤義人
        名古屋大学情報連携統括本部情報戦略室室長兼副本部長
 大学における教育研究および管理運営(経営)において、膨大化する情報・通信の適切かつ効率的な操作・利用と促進、および多様な処理要求に対する即時対応が必要となっている。その実現には、情報基盤の一層の充実と利用が必要不可欠であり、大学は一貫した理念にそった情報環境整備施策を保持する必要がある。この情報環境の整備充実を促進するため、名古屋大学では、2007年に情報戦略室・情報促進部からなる情報連携統括本部を設置し、さらに二年間をかけて情報連携基盤センター、情報メディア教育センターを含む組織改革の議論を行ってきた。その結果、2009年4月からは、戦略面を受け持つ情報戦略室、情報サービスの日々の運用を行う情報推進部、そして、次世代情報サービスの研究開発を行う情報基盤センターの三組織により情報連携統括本部を再編し、それぞれの組織の役割を明確にしつつ、強力な連携の下で名古屋大学の情報化を推進する新しい体制がスタートした。この再編に情報連携基盤センター運営委員・協議会委員として中心的に関わり、現在は、情報戦略室室長兼副本部長として関わっている経験から、大学における情報戦略と今後のウェブポータルについて本書の前書として私見を述べたい。
 まず、「情報戦略」というと大げさに考えすぎるきらいがあるが、ここでいう情報戦略は、「大学の戦略を支える情報のあり方」をいうのであって、決して大学の戦略の前に情報戦略があるわけではない。また、戦略という用語自体を軍事用語として好きになれないという人もいるが、これも大それたものではなく、要するに持てる力や限られた資源(ヒト、モノ、カネ)をどのように長期的な視野を持って配分するかということと理解すればよい。塩野七生が『ローマ人の物語』で書いているように、古代ローマ人が、頭脳でギリシャ人に、技術でエトルリア人に、経済力でカルタゴ人に劣るといわれていたのに成功したのは、まさに戦略があったからである。運営費交付金や私学助成の削減、少子化、国際化など、極めて厳しい環境の中で、大学が教育、研究および社会貢献において活性化し、自立性と個性化を進めるためには、大学に戦略が重要であり、必要不可欠なことは明らかである。特に、情報革命を通じて、教育研究における情報の役割はすべての学問分野に広がっており、多くの教員・職員・学生が、時代に合致した情報支援を求めている。この状況は、今後の情報技術の進展によりますます激変することが予想され、大学の教育研究を支える「学術基盤」として、戦略のないハードウェア、ソフトウェアおよびコンテンツの情報環境整備はもはや限界に来ている。このように、大学が持つべき戦略の中でも、情報環境に関わる戦略は欠くべからざるものになってきている。
 情報環境の中でも、ウェブポータルは、情報戦略に基づいて大学の情報サービス・コンテンツを構成員に一元的に提供するワンストップサービスであり、情報戦略の良し悪しを構成員一人ひとりが日々実感することができる「効果観測点」となる。現在話題となっているブログやソーシャルネットワークサービス(SNS)などに代表されるように、ウェブポータルを支えるウェブ技術自体、私が十数年前に米国の教育研究のコンピュータ事情を調査したときに感じた「ウェブの可能性」をはるかに超えて深化しつつある。この教訓からも、巨費を投じて一気に作り上げる固定的なウェブポータルではなく、最新のウェブ技術を動態観測しながら時宜を逸しないように漸進的に整備されるウェブポータルであることが必要であろう。
 このように、大学における情報戦略とウェブポータルは密接な関係がある。中長期的には、現在の組織の再編も視野に入れて、時代に取り残されないように情報戦略やその効果観測点としてのウェブポータルの整備を継続的に押し進める「情報戦略システム」の構築が必要であると思う。
 米国の大学でのウェブポータルにまつわる初期段階の状況をまとめた本書が、各大学において情報戦略とウェブポータルの整備に関わる方々の一助になることを願う。


目次

第1章 ウェブポータルとは何か
 ポータルを推進する企業
 ポータルはホットな話題
 ポータルは大学運営を変える
 どういうメタファでポータルは語れるか?
 マス・プロダクションからマス・パーソナライゼーションへ
 本質的に何が新しいのか?
 ポータルは重要なのか?
 ユーザロールとセルフサービスに関することでもある
 道のりは険しい
 チャンスは確かにある
第2章 カスタマー中心主義による大学リソース
 カスタマー
 ウェブ
 ユーザ認証
 権限認証
 ポータルによるリレーション管理
 サービス
 チャレンジ
第3章 大学におけるカスタマー・リレーションシップ・マネジメント
 CRMとは何か?
 なぜ高等教育機関でCRMビジネス戦略を採用するのか?
 高等教育におけるCRMの事例
 大学組織へのCRMの影響
 CRMビジネス戦略の投資対効果
 結論
第4章 ホームページとウェブポータル
 ポータルとは何か?
 C・P・A・D
 垂直型ポータルではどうか?
 チャネル
 はじめの一歩
第5章 大学におけるeビジネス
 eビジネスには何が含まれるか?
 なぜ大学はeビジネスに挑むのか?課題と矛盾
 どのように取り組むか、最初に影響を受けるのは誰か?
 教育における価値または供給プロセスの再構築
 トレンドと課題
第6章 大学業務における課題
 運営の効率化
 収入戦略
 おわりに
第7章 ボストン大学におけるポータル
 大学ポータルとは何か?
 大学ウェブ戦略
 Uポータル—ポータル標準フレームワーク
 ポータル戦略の選択肢
 ポータル戦略の重要性
 リーダーシップと全学的な課題
 結論
第8章 カリフォルニア州立大学におけるポータル
 ポータルは大学に必要か?
 ポータルの恩恵を享受するのは誰か?また、それはどのようなものなのか?
 どのように始めるか?
 ポータルのトップベンダはどこか?またポータルの費用はどのくらいかかるのか?
 大学にとってのポータルベンダの選択肢は?
 考慮すべきポリシー的課題は?
 ポータルは必要か?そして次に来るものは?
第9章 組織に関する課題
 九十年代の教訓
 今、学んでいること
 チェンジマネジメントの教訓
第10章 ポリシーに関する課題
 ポータル・eビジネスを支えるポリシーフレームワークの必要性
 統合ポリシーフレームワークの構成要素
第11章 まとめ
 新たなビジネスチャンス
 サービス提供
 ステークホルダー・リレーションシップ・マネジメント
 ポータル
 テクノロジが暗示するもの
 ポリシー
 人
 結論


訳者あとがき
参考文献
索引
著者紹介
訳者紹介


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