住まいの化学物質 リスクとベネフィット
価格:3,410円 (消費税:310円)
ISBN978-4-501-62940-3 C3052
奥付の初版発行年月:2015年11月 / 発売日:2015年11月上旬
人の暮らしにおいて、「建てる」、「暮らす」、「生きる」、「備える」に関わる、化学物質が引き起こす室内環境問題について幅広く解説。日常生活や自然災害からの化学物質の発生源に加え、健康・建物被害とその対応方法、環境濃度とその測定法などを紹介。化学物質の利便性とリスクを理解し、上手な付き合い方を考える。
住まいは,私たちの生活の器です。健康を守り,生活を支える,快適で安全な環境を保つためには,室内環境問題はきわめて重要なテーマとなっています。
2000年代前半まで,シックハウス問題が深刻化してきたことにより,室内環境学会では,居住空間における化学物質に関する研究が活発に行われました。その後は,シックハウス問題に加え,微生物,ハウスダスト,においかおり,環境たばこ煙などによる室内汚染も重要な研究課題となり,室内環境研究が対象とする「場」や対象とする「物質」は多様化する傾向にあります。
本学会は2010年に書籍「室内環境学概論」(東京電機大学出版局)を上梓しました。この「概論」では室内環境に関わる広範な内容を扱い,室内環境学の現在を俯瞰しています。本書は,「室内環境学概論」の続刊であり,「化学物質」に焦点をあてたもので,人の住まいにおけるライフステージ(建てる・暮らす・生きる・備える)に関わる12の物質群を対象としました。これらの室内環境における発生から,挙動,健康影響,環境濃度,測定法,対策方法などを記述しています。健康で快適な室内環境づくりに携わる技術者,建築,物理・化学,衛星・保健学分野の大学生,環境問題に取り組んでいる方が活用しやすいよう,化学物質の物理化学性状や具体的な測定。対策技術についてもわかりやすく解説しました。シックハウス問題に関連する類書も見受けられますが,本書ではたばこ煙,ハウスダスト,ナノ粒子,火山ガスや放射性物質なども含め詳解し,ヒトの快・不快感に関わる水,二酸化炭素,におい・かおりについても取り上げています。また,化学物質を負の因子としてとらえるのではなく,化学物質のベネフィット(利便性)とリスクを理解し,上手に付き合うためにはどうすればよいかを考えて構成しました。
本書を刊行するにあたり,室内環境学会理事長・中井里史先生(横浜国立大学),事業委員会委員長・山口一先生(清水建設),学術委員会委員長・東賢一先生(近畿大学),出版委員会委員長・川﨑たまみ先生(鉄道総合技術研究所),事業委員会・森本正一先生(新菱冷熱工業),事務局長・中島大介先生(国立環境研究所),川上裕司先生(エフシージー総合研究所),阿部恵子先生(環境生物学研究所),柳宇先生(工学院大学)に多大なるご支援を頂きました。記して感謝の意を表します。またご尽力をいただいた東京電機大学出版局・石沢岳彦氏,石井理紗子氏にお礼申し上げます。
2015年10月
一般社団法人室内環境学会 化学物質分科会長 関根嘉香
目次
第1章 住まいと化学物質
1.1 住まいの化学物質とは
1.2 健康で長生き
1.3 シックハウス症候群
1.4 日用品からの化学物質
1.5 曝露経路
1.6 住まいの生体ガス
1.7 災害と室内環境
第2章 建てる―建築物と化学物質
2.1 ホルムアルデヒド
2.2 揮発性有機化合物(VOCs)
2.3 準揮発性有機化合物(SVOCs)
第3章 暮らす―日用品と化学物質
3.1 農薬・殺虫剤
3.2 たばこ煙
3.3 粒子状物質(ハウスダスト)
3.4 ナノ粒子
第4章 生きる―生命活動と化学物質
4.1 水
4.2 二酸化炭素
4.3 におい・かおり
第5章 備える―災害と化学物質
5.1 放射性物質
5.2 火山ガス・火山灰
第6章 化学物質とうまく付き合う
6.1 リスクベネフィット
6.2 リスクコミュニケーション
6.3 グリーンケミストリー
執筆者一覧
索引