大学出版部協会

 

新しい近代への道危険社会

叢書・ウニベルシタス609
危険社会 新しい近代への道

四六判 502ページ 上製
価格:5,500円 (消費税:500円)
ISBN978-4-588-00609-8(4-588-00609-6) C1336
奥付の初版発行年月:1998年10月 / 発売日:1998年10月上旬

内容紹介

チェルノブイリ原発事故やダイオキシン問題など、致命的な環境破壊をもたらす可能性のある現代の危険(リスク)と、それを生み出し増大させる社会のメカニズムを追究した現代社会学の基礎文献。科学と政治のあり方を問い直し、今日のエコロジー運動の展開にも多大に貢献したウルリヒ・ベック(1944〜2015)による世界的ベストセラー。

著者プロフィール

U.ベック(ベック ウルリヒ)

1944年生まれの現代ドイツの社会学者。ミュンヘン大学で社会学、政治学、心理学、哲学を学ぶ。1979年から92年までミュンスター大学、バンベルク大学教授を歴任し、92年以降現在にいたるまでミュンヘン大学社会学部教授をつとめている。雑誌〈Soziale Welt〉の主任編集者でもある。本書『危険社会』はチェルノブイリ原発事故発生と同年に刊行され、大好評を博してベストセラーにもなった。

東 廉(アヅマ レン)

1949年生まれる。東京大学教養学部教養学科卒業。三重大学人文学部教授。著書:『緑と人の触れあう市民農園』(家の光協会)。訳書:『図説大百科 世界の地理12』(朝倉書店)。

伊藤 美登里(イトウ ミドリ)

1965年生まれる。文学博士(早稲田大学大学院文学研究科)。大妻女子大学教授。著書:『共同の時間と自分の時間』(文化書房博文社)、『現代人と時間』(学文社)。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

 はじめに
 序論

第一部 文明という火山──危険社会の輪郭

第一章 富の分配と危険の分配の論理について
1 自然科学から見た有害物質の分配と社会の危険状況
2 近代化に伴う危険は科学的知識に依存する
3 階級に特有の危険
4 文明に伴う危険が地球的規模で拡大する
5 二つの時代と二つの文化──危険を知覚することと危険が発生することとの関連
6 世界社会というユートピア

第二章 危険社会における政治的知識論
1 文明は貧困化するか
2 科学の危険に対する誤り、まやかしおよび過失とそれらに対する真実──科学の合理性と社会の合理性の対立をめぐって
3 社会が抱く危機意識──危険を間接的にも経験していない
4 近代化に伴う危険が認知されると政治的原動力が発生する
5 展望──二十世紀末の自然と社会

第二部 社会的不平等の個人化──産業社会の生活形態の脱伝統化

第三章 階級と階層の彼方
1 生活形態の文化的進化
2 個人化と階級形成──カール・マルクスとマックス・ウェーバー
3 伝統的な大集団が終焉を迎えるか
4 個人化、大量失業、そして新たなる貧困
5 将来の展開についてのシナリオ

第四章 わたしはわたし──家族の内と外における男女関係
1 男性と女性の情況
2 産業社会は、近代的な身分社会である
3 女性役割と男性役割からの解放か
4 不平等の意識化──選択可能性と選択の強要
5 将来の展開のシナリオ

第五章 生活情況と生き方のモデル──その個人化、制度化、標準化
1 個人化の分析的諸次元
2 ドイツ連邦共和国において個人化を推進する力の特殊性
3 生き方のモデルの制度化

第六章 職業労働の脱標準化──職業教育と仕事の未来
1 標準化された完全就業システムから柔軟で多様な部分就業システムへ
2 幽霊駅──職業につけない職業教育
3 教育による機会の分配はなされているのか

第三部 自己内省的な近代化──科学と政治が普遍化している

第一部と第二部の回顧と第三部の展望
第七章 科学は真理と啓蒙から遠く離れてしまったか──自己内省化そして科学技術発展への批判
1 単純な科学化と自己内省的な科学化
2 科学による認識の独占が解体される
3 応用上のタブーと理論上のタブー
4 「副作用」の評価可能性について

第八章 政治の枠がとり払われる──危険社会において政治的コントロールと技術-経済的変化とはいかなる関係に立つか
1 近代化における政治とサブ政治
2 政治システムの機能喪失を論難する
3 政治を無力化する民主化
4 政治文化と技術発展──進歩のコンセンサスの終焉か
5 サブ政治としての医学──極端な例
6 テクノロジー政策のジレンマ
7 企業合理化というサブ政治
8 要約と展望──三つのシナリオ

 訳者あとがき
 著者紹介
 主な邦語訳文献
 参考文献


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