叢書・ウニベルシタス984
スペイン・イタリア紀行
価格:3,080円 (消費税:280円)
ISBN978-4-588-00984-6 C1326
奥付の初版発行年月:2012年09月 / 発売日:2012年09月中旬
大革命下のフランス全土をくまなく歩き、自然景観、街や村の暮らしと風俗、政治情勢などをつぶさに記録したイギリスの農学者A・ヤング。その『フランス紀行』は第一級の旅行記として有名だが、本書は第1回と第3回のフランス視察の際に立ち寄った、スペインとイタリアに関する記録。ヤングならではの観察眼から、農業だけでなく、絵画芸術、名所、建築などの様子も描かれる。
アーサー・ヤング(ヤング,A.)
(Arthur Young)
1741-1820。イギリスの農学者、農業経済学者。早くから農業経営に携わり、かたわらイングランド、ウェールズ、アイルランドの各地を旅行して農業調査に従事し、旅行中発見したノーファク農法(小麦、カブ、大麦、クローバーの四年輪作方式)の採用などを提唱して、イギリス農業の経営・技術両面の改良に寄与した。その後、行動的な研究者として名声を博し、王立学会の会員となり、ドイツ、イタリアの学会にも名を連ねる。1784年には、雑誌『農業年報』を創刊し、その編集長として1815年まで記事・論文を多数執筆。その間、農業調査会の事務長の職に就き、終生その地位にあった。ヨーロッパ大陸には、1787年から1790年までの3回農業視察を目的に旅行をした。第1回目はフランスの南西部、北部、スペインのカタルーニャ地方を旅し、第2回目はフランスの西部を旅し、第3回目はフランスの東部、中央部、南東部、イタリアの北部、中部を旅し、その見聞を『1787年、1788年そして1789年の期間中の旅行記』全2巻にまとめた。それは本叢書の訳書としては『フランス紀行』と『スペイン・イタリア紀行』となる。いずれも、農事視察旅行の報告という枠を超えた、18世紀フランス、スペイン、イタリア社会の探訪記、大革命の体験記として、好評をもって迎えられたが、今日もなお、これらの国々の景観史、農村社会史、大革命の研究において、その重要性を失っていない。
宮崎 揚弘(ミヤザキ アキヒロ)
1940年、東京都に生まれる。慶應義塾大学大学院文学研究科史学専攻博士課程修了。慶應義塾大学名誉教授。専攻は近世フランス史。著書『フランスの法服貴族── 18世紀トゥルーズの社会史』(同文舘出版、1994年)『ヨーロッパ世界と旅』(編著、法政大学出版局、1997、年)、『続ヨーロッパ世界と旅』(編著、法政大学出版局、2001年)、『災害都市、トゥルーズ── 17世紀フランスの地方名望家政治』(岩波書店、2009年)。訳書に、アーサー・ヤング『フランス紀行── 1787、1788&1789』(法政大学出版局、1983年)、モニク・リュスネ『ペストのフランス史』(同文舘出版、1998年)。
上記内容は本書刊行時のものです。
目次
凡例
スペイン紀行〈一七八七年七月一○日~七月二一日〉
アラン渓谷──製材所──村の貧困と悲惨──ビエリャ到着──司令官を訪問──快適だと聞いていた宿屋──パリャルス・ソビラー峠──材木流し──ピレネー山脈の頂──放牧場──トゥルーズの市場用松材──地震の爪痕──筏流し──司祭館に宿泊──村の様子──製鉄所──リアルプ──王立製塩所──オリーヴの木出現──岩山──ラ・ポブラ・ダ・サグー──個人の家に宿泊──ムンテスキウ──アラゴン地方の山並み望見──フルケー──大嵐──崇高な情景──貴人の邸宅──便利な渡し船──脱穀風景──ハエ払い装置──オリーヴとカシ類の木々──早朝のミサ──モンセラット山望見──登山──修道院到着──モンセラット山の夜──視界不良──ある庵──一路バルセロナへ──アスパラゲーラ──凱旋門──シラミ捕り──素晴らしい街道──花崗岩の橋──多数の荷車──多数の別荘──市門の刻限──バルセロナ──ラゾウスキ氏の疲労困憊──上等の宿屋──上等の夕食──市街地見物──バルセロネータ──王立大砲製造工場──見事な埠頭──……ほか
イタリア紀行〈一七八九年九月二一日~一二月二○日〉
ニース出立──同乗相客──老大佐と再会──ブロス峠越え──野生的で崇高な景色──空想をかきたてる集落──テンダ峠越え──新道とトンネル──美しい渓谷──クネオ到着──背の高い女主人──高いヴィーゾ山──老大佐の招待──美しい平坦な平野──ラッコニージ──モンカリエーリ城──トリノ到着──フランス人亡命者の話──市内見物──街の様相──王宮と城館の印象──紹介状の提出──農業協会副会長、カプリアータ氏──カプラ騎士と会見──続々と知己できる──宮殿見物──絵画鑑賞──オペラ『勇敢なウグイ』へ──スペルガ──塔からの見晴し──ブラッコ氏──不作法な出発──カプラ騎士の農場論──サルデーニャ王国の国庫──国王の人柄──アルトワ伯──稲作──フランス人亡命者の話──市内見物──街の様相──王宮と城館の印象──紹介状の提出──農業協会副会長、カプリアータ氏──カプラ騎士と会見──続々と知己できる──宮殿見物──絵画鑑賞──オペラ『勇敢なウグイ』へ──スペルガ──塔からの見晴し──ブラッコ氏──不作法な出発──カプラ騎士の農場論──……ほか
原註および訳註
訳者あとがき
年表(一七五○~一七九九年)
地図(アーサー・ヤングの行程地図)
事項索引
固有名詞索引
関連書
A.ヤング著/宮崎洋(揚弘)訳『フランス紀行』