ものと人間の文化史158
鮪(まぐろ)
価格:3,630円 (消費税:330円)
ISBN978-4-588-21581-0 C0320
奥付の初版発行年月:2012年04月 / 発売日:2012年04月中旬
下魚から高級魚へ、立身出世をとげたマグロの履歴書。図絵や図譜に描かれたマグロ、古典文献に記されたマグロを紹介し、漁法・漁具から運搬と流通・消費までを歴史的にたどる。また、聞書きを軸に漁民たちの暮らしと民俗・信仰を探り、一時期は水揚高日本一を誇った三浦三崎の興亡を語るとともに、生態系保護の観点から漁獲量が規制される時代にあって、マグロをめぐる食文化の未来を展望する。
田辺 悟(タナベ サトル)
1936年神奈川県横須賀市生まれ.法政大学社会学部卒業.海村民俗学,民具学専攻.横須賀市自然博物館・人文博物館両館長,千葉経済大学教授を経て,現在,三浦市文化財保護委員会会長など.文学博士.日本民具学会会長,文化庁文化審議会専門委員などを歴任.2008年旭日小綬章受章.著書:『海女』『網』『人魚』『イルカ』(ものと人間の文化史・法政大学出版局),『日本蜑人(あま)伝統の研究』(法政大学出版局・第29回柳田国男賞受賞),『近世日本蜑人伝統の研究』『伊豆相模の民具』『海浜生活の歴史と民俗』(慶友社),『潮騒の島──神島民俗誌』(光書房),『母系の島々』(太平洋学会),『城ヶ島漁村の教育社会学的研究』(平凡社・第2回下中教育奨励賞受賞),ほか.
上記内容は本書刊行時のものです。
目次
プロローグ
I 綜合・芸術文化とマグロ
マグロを描いた人々
幕末・彦根藩士が描いたマグロ
『グラバー図譜』にみるマグロ
『三重県水産図解』のマグロ
『魚類写生図』の大マグロ
「絵馬に描かれた」マグロ
マグロの大漁を描く──マイワイ(万祝)
マグロを描いた鋳貨
切手のデザインとマグロ
アクセサリーになったマグロ
マグロのオブジェ、モニュメント
II 民俗・生活文化とマグロ
マグロの釣鉤
マグロ漁と海上習俗──ヨイヤマ(宵山)
ヨイヤマの本来的な意義・目的
東京湾にもマグロはいた
マグロにかかわる習俗
神仏になったマグロ
「マグロ網」の改良・民俗技術
須賀利浦の史的背景
奈屋浦の支毘大命神
五島有川湾のマグロ漁──漁業組織
食生活とマグロ
気になるマグロ資源
縄文の魚食・弥生の米食
マグロと江戸前の鮨
マグロの「旬」は冬季
マグロの加工・製造
マグロの缶詰
マグロの脯・鮪節
地中海のボッタルガ(カラスミ)
III 歴史・伝統文化とマグロ
1 マグロ漁の史的背景
先史時代のマグロ漁──貝塚が語るマグロ漁
『古事記』の中のシビ(マグロ)
『日本書紀』の中の鮪
『風土記』の中のシビ(マグロ)
『万葉集』の中の鮪
『和名抄』の中のマグロ
『和漢三才図会』の中のマグロ
『日本山海名産図会』にみるマグロ
『紀伊国名所図会』のマグロ
『西国名所図会』のマグロ
街道・宿場町と魚市(場)
2 マグロ漁業の展開──漁業技術の発達
江戸時代以後──各地のマグロ漁業
青森のマグロまき網漁業
陸前・牡鹿半島のマグロ建網
鮪大網(宮城県・牡鹿半島)
磐城・陸前のマグロ巻網漁
マグロ流網漁──常陸・茨城県那珂郡平磯
『五島列島漁業図解』の鮪漁業
江戸(東京)周辺のマグロ漁
三浦三崎のマグロ漁──釣漁業専門
城ヶ島のマグロ流し網漁──網漁業専門
相模湾のマグロ漁──マグロ漁の系譜
3 遠洋操業と遭難
マグロ漁の遠洋化
マグロ漁船の近代化
マグロの延縄漁と遭難
4 運搬と流通・消費
押送り船と馬の背と
マグロ専用の移送用「トロ箱」
IV 自然・共生文化とマグロ
マグロを調べた人々
マグロ一族の系譜
カジキマグロ漁──「突ン棒」漁など
V マグロのア・ラ・カルト
「シビ」から「マグロ」へ
「シビ」という魚・方言と地名
マグロの和名と英名など
大きなマグロ、高価なマグロ
マグロと魚付林
マグロの産卵
マグロの漁獲制限・輸出の禁止
ビキニ環礁とマグロ
海洋汚染と新しい学の提唱(文化史学)
趣味で釣るマグロ
現代・マグロ伝説──マグロにかけた男たち
エピローグ
マグロの本(引用・参考文献)
あとがき