経済変動の進化理論
価格:6,160円 (消費税:560円)
ISBN978-4-7664-1389-2 C3033
奥付の初版発行年月:2007年10月
20世紀後半を代表する経済学〈現代の古典〉、邦訳成る。
▼20世紀後半を代表する経済学の古典的理論書An Evolutionary Theory of Economic Change,The Belknap Press of Harvard University Press, 1982の翻訳。
▼技術革新が進み、経済社会の急速な変化によって将来の予測がより難しくなるなか、本書は「進化理論」を基に経済・社会のダイナミックな変動の解明のための理論を構築し、社会科学の新しいプラットフォームを提示している。出版以来、本書の影響は、経済学に留らず、社会学、政治学、経営学、歴史研究など、社会科学のほぼ全領域、さらには進化理論そのものへと拡がったのである。
【著者】
リチャード R.ネルソン(Richard R. Nelson)
コロンビア大学教授。1956年にイエール大学より「マルサスの罠」に関する研究で博士号を取得。1957年からランド研究所でエコノミストとして活躍。そこで、本書の共著者であるシドニー・ウィンターと出会う。その後、大統領経済諮問委員会スタッフなどを経て、1968年からイエール大学で教鞭を取った。1981年から86年まで、同大学社会・政策研究所(Institution for Social and Policy Studies)所長を務める。87年よりコロンビア大学教授(政治学部、国際関係学部、ビジネススクール、ロースクール)。
シドニー G.ウィンター(Sidney G. Winter)
ペンシルバニア大学教授。1964年イエール大学で博士号を取得。その後、イエール大学、ミシガン大学、カリフォルニア大学で教鞭を取り、93年よりペンシルバニア大学ウォートンスクールで経営学を教えている。99年より同経営政策・戦略・組織センターのディレクター。その他、ランド研究所エコノミスト、大統領経済諮問委員会スタッフ、General Accounting Officeの主任エコノミストを歴任。2001年から05年まで、国際シュンペーター学会副会長。
【訳者】
後藤晃(ごとう あきら)
公正取引委員会委員。一橋大学大学院経済研究科修了。1973年成蹊大学経済学部助教授。同教授を経て89年一橋大学経済学部教授。1993年一橋大学博士(経済学)。1997年一橋大学イノベーション研究センター教授。2001年東京大学先端経済工学研究センター教授。同センター所長、同大学先端科学技術センター教授を経て2007年より現職。
角南篤(すなみ あつし)
政策研究大学院大学准教授。ジョージタウン大学卒業。1989年の村総合研究所研究員、1997年サセックス大学科学政策研究所フェロー、2001年コロンビア大学PH. D. 取得。2001年、独立行政法人経済産業研究所TAGフェロー。2003年より現職。
田中辰雄(たなか たつお)
慶應義塾大学経済学部准教授。東京大学大学院経済学研究科修了。1991年国際大学グローバルコミュニケーションセンター研究員、97年コロンビア大学客員研究員を経て、1998年より現職。
目次
日本語版への序文
はじめに
第Ⅰ部 概観と本書のねらい
第1章 序章
1. 議論されるべき概念——“正統派的”と“進化理論的”
2. 進化理論的モデル化
3. 本書のプラン
第2章 進化理論の必要性
1. 正統派による経済変動の取り扱いの不適切さ
2. 診断と処方箋
3. 進化理論の味方と先人
4. 経済学における実りある理論化の性質
第Ⅱ部 経済進化理論の組織論的基礎
第3章 現在の正統派理論の基礎
1. 企業の目的
2. 生産集合と組織の能力
3. 最大化選択という行動
第4章 スキル
1. プログラムとしてのスキル
2. スキルと暗黙知
3. スキルと選択
4. スキルを表す名称の有用性
5. 範囲の曖昧さ
6. ビジネスマンのスキル
第5章 組織の能力と行動
1. 組織的記憶としてのルーティーン
2. 一時的休止状態としてのルーティーン
3. 目標としてのルーティーン——管理、再現、そして模倣
4. ルーティーンとスキル——その類似性
5. 最適なルーティーンと最適化のルーティーン
6. ルーティーン、ヒューリステッィクス、そしてイノベーション
7. 要約——遺伝子としてのルーティーン
第Ⅲ部 教科書的経済学の再考
第6章 淘汰均衡の静学
1. 経済淘汰過程の特性を把握する
2. 経済的淘汰のモデル
3. 複雑さと潜在的な問題
第7章 市場条件の変化に対する企業と産業の反応
1. 企業と産業の反応の説明
2. マルコフモデルと要素代替
3. それがどのような違いをもたらすのか
付録
第Ⅳ部 成長理論
第8章 新古典派成長理論——批判的検討
1. 経済成長の残差による説明
2. 経済成長理論への進化理論的アプローチの必要性
第9章 経済成長の進化モデル
1. モデル
2. シミュレートされた経済の成長の記録
3. 実験
4. 要約と結論
第10章 純粋な淘汰過程としての経済成長
1. 経済発展と後発性——技術が二つのときの進化モデル
2. 多くの技術と変数のインプット
第11章 探索と淘汰に関するさらなる分析
1. 探索戦略とトポグラフィー
2. 淘汰の環境
3. 要約
第Ⅴ部 シュンペーター的競争
第12章 動学的競争と技術進歩
1. シュンペーター的理論の複雑な構造
2. モデル
3. 特別なケースにおけるモデルの展開
4. イノベーションと模倣の間の競争シミュレーション
付録1
付録2
第13章 シュンペーター的競争下で集中を促進する力と抑制する力
1. 仮説と実験の設定
2. 結果
3. 結論とまとめ
第14章 シュンペーター的トレードオフ再考
1. トレードオフと政策ツール
2. 実験
3. シミュレーション結果
4. 政策的実証的含意
第Ⅵ部 経済厚生と政策
第15章 進化理論的視点による規範的経済学
1. よく知られた問題の再考
2. 厚生経済学の標準的問題の再評価
第16章 公共政策の進化と理論の役割
1. メカニズムとアクター
2. 政策形成における分析の役割
3. 産業における研究開発に対する政府の政策
第Ⅶ部 結語
第17章 本書を省み,将来を展望する
1. 本書を省みる
2. 経済学の知的自己完結性についての補足
3. 将来を展望する
訳者あとがき
参考文献
索引