アラブ諸国の情報統制 インターネット・コントロールの政治学
価格:3,520円 (消費税:320円)
ISBN978-4-7664-1515-5 C3031
奥付の初版発行年月:2008年04月 / 発売日:2008年04月上旬
▼グローバル化によるIT革命の波に直面するアラブ諸国政府は、インターネットに対してどのような政策的対応を図っているのか。権威主義体制のアラブ諸国に長期滞在し、情報統制政策の立案・実施に係わる政府官僚・政府系機関幹部・ICT関連企業幹部への取材を重ねた著者が、各国の情報統制の現状を技術的・政治的な視点から詳細に分析。情報化の推進により経済的な利益を最大限に得つつ、同時に政治的リスクを最小限に抑制する、アラブ諸国の巧みな情報統制の実態をあきらかにする。
山本達也(やまもと たつや)
名古屋商科大学外国語学部専任講師
1975年東京生まれ。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科博士課程修了。博士(政策・メディア)。シリア国立アレッポ大学学術交流日本センター主幹・客員研究員、慶應義塾大学COE研究員(RA)などを経て、現職。専攻は、国際関係論。
主著に、『サイバーポリティクス——IT社会の政治学』(共著、一藝社、2002年)、『国家の現在』(共著、芦書房、2007年)など。
目次
序章 インターネット時代の非民主主義国家
1 新しいメディアの登場
2 インターネットと政治体制をめぐる研究
3 本書の着眼点
第1章 情報化の波に直面するアラブ諸国
1 情報化の波の到来
2 情報化に熱心な各国政府
3 政府の抱える懸念
4 政権に課せられた課題
第2章 情報統制のパターン
1 三つの時期区分と四つのパターン
2 政府による一元的管理の時代
3 衛星放送の出現
4 インターネット時代の幕開けと情報統制パターンの分化
5 「情報国家モデル」との対応
第3章 コード層でのインターネット・コントロール
1 「インターネット特性論者」の盲点
2 ネットワーク・アーキテクチャ
3 コードのデザイン
4 三つの構成要素
5 コントロールを可能とする技術
6 コントロールの実効性
7 プロキシサーバーを導入する国々
第4章 物理層でのインターネット・コントロール
1 インフラのアーキテクチャ
2 ツリー構造ネットワークとグラフ構造ネットワーク
3 各国におけるインフラのアーキテクチャ
4 インターネット・コントロールの分析枠組み
第5章 インターネット・コントロール政策をみる視点
1 二つの疑問
2 「メガネ」としての政策決定理論
3 いくつかの仮説
4 検証のポイント
5 地域の特殊要因としてのイスラーム
第6章 インターネット・コントロール志向型情報統制国家
1 事例の選定
2 シリア
3 アラブ首長国連邦
4 エジプト
5 政策決定のメカニズム
第7章 インターネット・コントロール放棄型情報統制国家
1 ヨルダンの情報化
2 インターネット導入の背景と情報化関連政策
3 ヨルダンのネットワーク・アーキテクチャ
4 他国との差異の源泉
5 ヨルダンにおける変化の胎動
第8章 アラブ諸国のインターネット・コントロール政策
1 コード層および物理層に着目した分析枠組み
2 インターネット・コントロール政策の決定要因
3 「情報国家モデル」への示唆
4 中・長期的視点からの展望
終章 グローバル化とアラブ諸国