神秘哲学 ギリシアの部
価格:6,380円 (消費税:580円)
ISBN978-4-7664-1729-6 C3010
奥付の初版発行年月:2010年12月 / 発売日:2010年12月中旬
井筒思想の源泉である初期の名著を復刊。
▼世界的なイスラーム学者、言語学者である故井筒俊彦(1914–1993)自らが〈思想的原点〉と言った初期の代表的著作。密儀宗教時代、プラトン、アリストテレス、プロティノスに神秘哲学の奥儀を読み解く。
▼今回の復刊にあたっては、『神秘哲學-ギリシアの部』(世界哲學講座14、哲學修道院、1949年)を底本とし、新字・新かなにあらためた。なお、哲學修道院版は、「井筒俊彦著作集」(中央公論社、1991年)に収録された『新版 神秘哲学』(人文書院、1978-9年)の元本。「著作集」、人文書院版とも現在入手不可。好評『読むと書く』につづく、読者待望の書。
▼復刊企画として『アラビア哲学』(2010年夏)、『露西亜文学』(2010年冬)を刊行予定。
ギリシアの哲人達が、彼等の哲学の底に、彼等の哲学的思惟の根源として、まさしくVita Contemplativaの脱自的体験を予想していることを知った時、私の驚きと感激とはいかばかりであったろう。私はこうして私のギリシアを発見した。(本書 序文より)
井筒俊彦 Izutsu Toshihiko
1914(大正3)年、東京都生まれ。1931(昭和6)年、慶應義塾大学経済学部予科に入学。のち、西脇順三郎が教鞭をとる英文科へ転進。1937(昭和12)年、慶應義塾大学文学部を卒業し、同大学文学部英文科の助手となる。1950(昭和25)年、同大学文学部助教授を経て、1954(昭和29)年、同文学部大学教授に就任。ギリシャ語、ギリシャ哲学、ロシア文学、比較言語学などの授業を担当した。1969(昭和44)年、カナダのマッギル大学の教授、1975(昭和50)年、イラン王立哲学研究所教授を歴任した。 1979(昭和54)年、イラン革命のためテヘランを去り、その後は研究の場を日本に移し、著作や論文の執筆、講演などに勤しんだ。
1967(昭和42)年からは、鈴木大拙に次ぐ2人目の日本人として、スイスで開催される国際会議、エラノス会議へ参加し、以後12回にわたって東洋哲学に関する講演を行った。
主な著作に、『コーラン』(翻訳、上中下、岩波文庫、1957-58[昭和32-33]年)、『イスラーム文化』(岩波書店、1981[昭和56]年)、『意識と本質』(岩波書店、1983[昭和58]年)など多数。『井筒俊彦著作集』(全11巻別巻1、中央公論社、1991-93[平成3-5]年)がある。また、1956(昭和31)年に刊行されたLanguage and Magicを始めとして英文による著作を多数執筆。Sufism and Taoism: A Comparative Study of Key Philosophical Concepts、Ethico-Religious Concepts in the Qur'an、Toward a Philosophy of Zen Buddhismなど一連の英文著作で世界的な評価を受けた。
1982(昭和57)年、日本学士院会員。同年、毎日出版文化賞受賞、朝日賞受賞。1993(平成5)年没。
没後、The Izutsu Library Series on Oriental Philosophy(井筒ライブラリー・東洋哲学)として東洋の思想を欧米の言語によって紹介するシリーズ(欧文)が、慶應義塾大学出版会から 2001(平成13)年より刊行されている。
目次
第一部 ギリシア神秘哲学
第一章 ソクラテス以前の神秘哲学
(1)ディオニュソス神
(2)クセノファネス
(3)ヘラクレイトス
(4)パルメニデス
第二章 プラトンの神秘哲学
(1)序
(2)洞窟の譬喩
(3)弁証法の道
(4)イデア観照
(5)愛【エロース】の道
(6)死の道
第三章 アリストテレスの神秘哲学
(1)アリストテレスの神秘主義
(2)イデア的神秘主義の否定
(3)アリストテレスの神
(4)能動的知性
第四章 プロティノスの神秘哲学
(1)プロティノスの位置
(2)プロティノスの存在論体系
(3)一者
(4)流出
(5)神への思慕
附録・ギリシアの自然神秘主義——希臘哲学の誕生
第一章 自然神秘主義の主体
第二章 自然神秘主義体験
第三章 オリュンポスの春翳
第四章 知性の黎明
第五章 虚忘の神々
第六章 新しき世紀
第七章 生の悲愁
第八章 ディオニュソスの狂乱
第九章 ピンダロスの世界
第十章 二つの霊魂観
第十一章 新しき神を求めて
第十二章 輪廻転生より純粋持続へ
解説 堀江聡(慶應義塾大学文学部教授)