慶應義塾保険学会叢書4
人口減少時代の保険業
価格:3,300円 (消費税:300円)
ISBN978-4-7664-1824-8 C3333
奥付の初版発行年月:2011年05月 / 発売日:2011年05月中旬
社会構造の大転換点を迎える日本において、保険業はいかに舵を取るべきか?!
▼研究者・実務家が協働し、人口減少が保険事業に与える影響に着目しながら、保険商品・サービス開発、ビジネスモデル、経営戦略、海外進出、さらに保険行政における最新の動向を紹介し、各々について戦略・政策提言を行う。
田畑康人(タバタヤスヒト)
愛知学院大学商学部教授
岡村国和(オカムラクニカズ)
獨協大学経済学部教授
上記内容は本書刊行時のものです。
目次
はしがき 田畑康人・岡村国和
第1部 人口減少時代の諸課題
第1章 人口減少時代の到来と保険業への影響 堀田一吉
1 はじめに——問題意識
2 人口構造の転換と社会経済
(1) 戦後日本の人口構造変化とその特徴
(2) 人口減少社会の到来と社会経済的影響
(3) 人口構造と保険業の特性
3 戦後保険業の成長と人口構造
(1) 戦後保険業の成長過程と人口要因
(2) 戦後保険業におけるビジネスモデルの特徴
(3) 人口減少時代への移行と保険市場をめぐる環境変化
4 人口減少時代の到来と保険業の課題
(1) 保険市場の成熟と収益構造の変化
(2) シルバーサービス産業としての保険業
(3) 人口減少時代における保険経営の課題
5 おわりに——人口減少社会と転換期を迎えた保険業
第2章 生活設計の変化と生命保険 河本淳孝
1 はじめに
2 生命保険と生活設計論
(1) 生涯収支の可視化(生涯収支均衡モデルの機能)
(2) 生涯収支均衡プラン
(3) 家計のリスクと保険
3 人口減少と生活の変化
(1) 人口減少と生活にかかる指標の変化
(2) 働き方の多様化(非正規職員化の進展)
(3) 賃金カーブのフラット化
(4) 企業福祉の後退と格差
(5) 「人口オーナス」期の日本経済と家計
4 これからの生活設計のあり方を考える視点
(1) 不確実性の増大と予備的貨幣動機
(2) 現役に過度に依存しない生き方
(3) 「Aリスク」と「Vリスク」
(4) 自在性(固定値のパラメーター化)
(5) デフォルトと金利
(6) 予算制約と廉価商品
5 おわりに
第3章 第三分野保険の動向と課題 伊藤 豪
1 問題意識
2 民間に業保険の動向
3 民間医療保険をめぐる諸問題
(1) 民間医療保険の特徴と商品特性
(2) 民間医療保険の特殊性
(3) 人口減少社会が及ぼす影響
4 先進医療と医療技術革新が及ぼす影響
(1) 先進医療の現状と高額療養費制度
(2) 医療技術革新が及ぼす影響
5 第三分野保険のリスク管理
6 保険者の役割転換と相互強化にむけて
第4章 「保険と金融の融合」の動向と規制改革 後藤和廣
1 はじめに
2 保険セクターによる金融リスクの引受け
(1) 信用保険、保証保険、ボンド
(2) ARTによる金融リスクの取り込み
——「保険と金融の融合」の進展
(3) 金融技術・商品による金融リスクへの投資、取り込み
3 2008年の金融危機と保険セクター
(1) 2008年の金融危機の概要
(2) 保険セクターへの影響
(3) AIG社の実質破綻の経緯
4 規制強化の検討
(1) 国際的な金融規制改革の推進体制と方向性
(2) アメリカの金融規制改革
(3) BISとIAISの規制改革と保険セクターの反応
(4) 予想される金融規制改革の今後と保険セクターへの影響
(5) 規制改革に関しさらに検討するべき事項
5 「保険と金融の融合」の今後
(1) リスク資本と「保険と金融の融合」の関連性
(2) 「保険と金融の融合」今後の動向
6 おわりに
第5章 生命保険会社の資産運用と課題 石田成則
1 生命保険会社における保障業務の変化と金融業務
(1) 生命保険の保障内容の変遷
(2) 保障業務の多角化の動向
(3) 運用資産の変化と金融業務の変遷
2 生命保険会社におけるリスク種別とそのヘッジ手段
(1) 金融リスクと業務リスク
(2) 金利(変動)リスクのヘッジ手段
(3) 金融派生商品(デリバティブ)の活用
3 リスク軽量化におけるVaRの活用
4 金融リスク管理のためのリスク推計とその合算
(1) 資産サイドのリスク推計
(2) リスク合算の手法
5 負債サイドの特性を加味したALM管理
(1) 保険負債の特殊性
(2) ALM管理の展開
(3) ALM管理の問題点とその改善
6 新たなソルベンシー規制が促すALM管理の高度化
(1) 保険規制環境の変化
(2) 保険規制がALM管理に及ぼす影響
7 これからの資産運用とリスク管理のあり方
第2部 人口減少時代の新展開
第6章 リスクマネジメントビジネスの新展開 高橋孝一
1 はじめに
2 損保系リスクマネジメント会社のコンサルティング
(1) 改正保険業法と損保系リスクマネジメント会社の設立
(2) リスクマネジメント事業分野のプレーヤー
3 会社法とリスクマネジメント
(1) 会社法
(2) 会社法におけるリスクマネジメント
4 企業のリスクマネジメント活動
(1) リスクマネジメントのプロセス
(2) リスクアセスメントの具体的プロセス
(3) リスク特定
(4) 業種別のリスク一覧表の例示
(5) リスク算定
(6) リスクマップの例示
(7) リスク対応の流れ
(8) リスクマネジメントのフレームワーク
5 新たなリスクの登場
6 おわりに
第7章 保険業界の再編と経営戦略 根本篤司
1 はじめに
2 人口減少の影響と保険会社の経営戦略
(1) 人口減少と保険市場の縮小
(2) 市場競争の進展と保険会社の対応
3 業界再編成と企業規模拡大戦略の限界
(1) 業界再編成と保険会社の企業規模拡大戦略
(2) 保険会社のグローバル戦略
4 おわりに
第8章 損害保険会社の海外進出と新展開 有田礼二
1 はじめに
2 海外展開の現状
(1) 国別の展開状況
(2) 国内外比率等について
(3) 元受における海外展開の現状
(4) 再保険における海外展開の現状
3 環境変化と課題・対応策
(1) 課題
(2) 課題への対応策
4 予想される今後の展開
(1) 各保険会社グループの海外展開
(2) 政策株式の売却
(3) タカフル
5 おわりに
第9章 中国保険市場の成長と展望 塔林図雅
1 はじめに
2 中国保険市場における市場開放と経営環境の変化
(1) WTO加盟による中国保険市場の開放
(2) 外資系保険企業の中国市場参入の経緯と動向
(3) 保険業の特殊性と監督行政の特徴
3 中国保険市場の現状と成長要因
(1) 国民経済における保険の位置づけ
(2) 中国保険市場の現状
(3) 中国保険市場の成長要因
4 中国保険市場の成長とその特徴
(1) 生命保険市場の発展とその特徴
(2) 損害保険市場の発展とその特徴
5 中国保険市場における外資系保険企業の位置づけ
(1) 中国における外資系の定義
(2) 中国保険市場における外資系保険企業の現状
(3) 中国保険市場における日系保険会社の位置づけ
6 中国保険市場の潜在成長性と今後の課題
(1) 中国保険市場の潜在成長性
(2) 中国保険市場の政策的課題
7 おわりに
第10章 消費者主権と新たな保険規制の可能性 田畑康人
1 問題意識——消費者主権を考える意義
2 消費者主権と保険消費者
(1) 消費者主権と消費者保護法
(2) 1970年代から本格導入された消費者主義と消費者主権
(3) 消費者主権と保険消費者
3 保険政策の大転換と保険消費者
——新保険業法・新保険法と消費者
(1) 旧保険業法の問題点と保険政策の大転換
(2) 新保険業法と保険消費者
(3) 新保険業法下での消費者主権は達成されていたか
4 保険における消費者主権と保険政策(保険規制)
——人口減少社会を意識して
(1) 新保険業法施行後の問題と消費者主権
(2) 人口減少社会でも不可欠な保険とその対応
(3) 新たな規制(reregulation)は必要か
——コーポレート・ガバナンスの空白
5 おわりに
第11章 人口減少時代における保険業の戦略的課題と将来 岡村国和
1 はじめに
2 保険業を取り巻く環境変化と競争圧力
(1) 保険業を取り巻く4つの環境変化
(2) 保険市場に脅威をもたらす内外の5つの要因
3 保険業の競争戦略とその課題
(1) M. ポーターによる競争優位の戦略の3類型
(2) 保険業におけるイノベーションのジレンマ
(3) 保険業におけるランチェスターの戦略
4 保険会社のビジネスモデルと販売チャネル
(1) ビジネスモデルの中核となる販売チャネルの類型
(2) 販売チャネル改革の課題と展望
5 おわりに
索引