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近代日本の金・外貨政策

近代日本の金・外貨政策

A5判 1648ページ 上製
価格:44,000円 (消費税:4,000円)
ISBN978-4-7664-1891-0 C3033
奥付の初版発行年月:2015年02月 / 発売日:2015年02月下旬
発行:慶應義塾大学出版会  
発売:慶應義塾大学出版会
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内容紹介

世界の「信認」獲得をめぐる国際金融家たちの活躍と苦闘。

明治以降、日本は激動する国際情勢のなか、幾多の戦争や経済危機を乗り越えながら、貨幣・金融制度の確立と財政健全化に挑む。
高橋是清、井上準之助、深井英五、森賢吾、津島寿一ら世界から称賛された国際金融家たちの思想と活躍、そして苦闘を追いながら、近代日本の興隆と崩壊を描く一大叙事詩。
現代日本の金融・財政政策に鋭い示唆を与える画期の超大作!

「正貨政策」、それは貨幣・金融制度と財政運営の根幹をなすと同時に、戦争準備、産業振興など文字どおり日本の命運を握る国策の枢要であった。
本書は、「信頼・信認・信用」をキーワードとして、国内・海外の膨大な一次資料を渉猟し、国際的な金本位制の成立・崩壊過程を詳細に描きながら、日本の正貨政策の全貌と国際金融システムの本質を解き明かす。

著者プロフィール

齊藤 壽彦(サイトウ ヒサヒコ)

千葉商科大学商経学部教授、慶應義塾大学非常勤講師。博士(商学)。
1945年香川県生まれ。1968年慶應義塾大学経済学部卒業、70年同大学大学院経済学研究科修士課程修了、74年同大学院商学研究科博士課程単位取得。同年千葉商科大学商経学部専任講師、77年同助教授、83年から現職。2006~10年同学部長、2010~12年同大学大学院経済学研究科委員長。この間、1987~88年に在外研究員としてイギリス、カナダ、アメリカに派遣(ロンドンのシテイ・ユニバーシティ・ビジネススクール客員研究員)。日本金融学会理事・幹事、証券経済学会理事・幹事、日本経済学会連合評議員・英文年報編集委員などを歴任。
主要業績には、著書として、『戦間期の通貨と金融』(共著、有斐閣、1982年)、『日本金融論の史的研究』(共著、東京大学出版会、1983年)、『大正期日本金融制度政策史』(共著、早稲田大学出版部、1987年)、『戦時体制下の金融構造』(共著、日本評論社、1991年)、『戦後地方銀行史Ⅱ』(共著、東洋経済新報社、1994年)、『近代日本の経済官僚』(共著、日本経済評論社、2000年)、『日本銀行金融政策史』(共著、東京大学出版会、2001年)、『金融危機と地方銀行』(共著、東京大学出版会、2001年)、『金融ビジネスモデルの変遷』(共著、日本経済評論社、2010年)、『信頼・信認・信用の構造』(第3版第5刷、泉文堂、2014年)その他。論文として、「第一次世界大戦期の正貨獲得政策」(『三田商学研究』第16巻第3号、1973年8月)、「横浜正金銀行の国家機関的性格と営利機関的性格」(『金融経済研究』創刊号、1991年7月)その他。編集・監修として、『近代日本金融史文献資料集成』第28~33巻(共編、日本図書センター、2005年)、八木慶和『日本銀行総裁 結城豊太郎』(監修、学術出版会、2007年)。翻訳として、F. ベアリング『イングランド銀行論』(共訳、日本経済評論社、1988年)、E. ビクター・モーガン『改訂増補 貨幣金融史』(共訳、慶應通信、1992年)。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

本書の論点 ―― 問題提起と結論

序 章 日本の正貨政策に関する研究史
 第1節 正貨政策に関する鳥瞰的研究
 第2節 金本位制確立前の正貨政策に関する研究
 第3節 金本位制確立以後の正貨政策に関する研究
 第4節 第1次世界大戦から昭和初期までの正貨政策に関する研究
 第5節 金本位制離脱後の正貨政策に関する研究

 第1編 金本位制確立前の正貨政策

第1章 日清戦争以前の正貨政策
 第1節 明治前期の弊制改革
 第2節 明治初期の紙弊と信認
 第3節 兌換制度による銀行券の信用・信認の維持と弾力的な銀行券の
 発行
 第4節 「準備金」と正貨蓄積・在外正資
 第5節 横浜正金銀行の外国為替業務による正貨吸収と日本銀行の外国
 為替資金融通
 第6節 日本銀行の地金銀購入および地金銀購入資金融通
 第7節 外資導入と公定歩合操作の正貨吸収策としての未採用

第2章 日清戦争賠償金と正貨政策
 第1節 日清戦争賠償金の獲得と保管
 第2節 日清戦争賠償金保管金の機能

 第2編 金本位制確立期の正貨政策

第3章 金本位制の確立
 第1節 金本位制の確立過程
 第2節 金本位制実施方針の決定と実施方法の検討
 第3節 金本位制の確立 ―― 金本位制への一般的信認の確立
 第4節 金本位制の確立が日本経済に及ぼした影響

第4章 確立期金本位制の機構
 第1節 金貨の国内流通なき金貨本位制
 第2節 日本銀行金兌換券に対する一般的信認
 第3節 在外正貨依存の金本位制とその限界
 第4節 在内正貨の吸収とその存在意義
 第5節 金本位制確立期の公定歩合操作と金・正貨維持

 第3編 日露戦争以後の金本位制維持政策

第5章 日露戦争以後の正貨維持吸収政策と在外正貨
 第1節 正貨維持吸収策
 第2節 日露戦争以後の外債発行と募集金の運用
 第3節 日露戦争以後の公定歩合操作と正貨政策
 第4節 在外正貨保有の増大・恒常化とその保有形態
 第5節 在外正貨の対外支払手段としての機能と金の取寄機能
 第6節 日本銀行の在外正貨売却政策 ―― 大口為替売却政策を中心と
 して
 第7節 在外正貨の正貨準備繰入れ
 第8節 在外正貨の資金運用原則とその実態
 第9節 国際関係と正貨
 補 論 東アジアをめぐる国際政治関係

第6章 明治末・大正初期の正貨危機対策構想
 第1節 日露戦争終了時の高橋是清の正貨維持意見(1905年9月)
 第2節 日本銀行の「正貨維持ノ事ニ就キ上申」書(1906年4月)
 第3節 正貨準備維持に関する閣議案(1907年)
 第4節 日本銀行の「再正貨維持上ノ事ニ付上申」書(1908年4月)
 第5節 正貨事項会議における外債依存の積極的正貨維持方策
 第6節 「正貨準備維持ニ就キ積極、消極孰レノ主義ニ拠ラントスル哉
 ニ関シ政府ノ方針内示方上申」書(1912年)
 第7節 大蔵省内作成『正貨吸収二十五策』(1913年)
 第8節 正貨吸収基本協定の締結(1914年7月)

 第4編 第1次世界大戦期の正貨政策

第7章 第1次世界大戦期の正貨吸収政策
 第1節 国際収支の大幅黒字下の正貨吸収政策
 第2節 輸出為替買入の奨励
 第3節 政府を中心とする在外資金買上政策
 第4節 為替資金供給、在外資金買上政策の要約とその行詰り

第8章 第1次世界大戦期の正貨処理政策
 はじめに
 第1節 外債償還政策 ―― 消極的正貨処理政策
 第2節 正貨蓄積政策 ―― 中間的正貨処理政策
 第3節 「正貨の産業資金化」政策 ―― 積極的正貨処理政策
 第4節 対外投資政策
 補 論 対中国投資の展開

 第5編 第1次世界大戦後の正貨政策

第9章 正貨吸収と正貨保有、国際信用と日銀券への信認の維持
 第1節 国際収支構造と国際収支改善策
 第2節 外資導入と正貨吸収
 第3節 諸外国の金・外貨準備保有と日本
 第4節 日本の正貨保有構造とその使途
 第5節 震災復興・借換併用外貨国債の発行と国際信用
 第6節 金輸出禁止下の日本銀行券信認維持の継続

第10章 金輸出禁止下の在外正貨払下政策とその転換
 第1節 第1次世界大戦後の在外正貨払下げの概要
 第2節 第1次世界大戦後の在外正貨払下げ開始
 第3節 在外正貨払下げによる為替相場維持政策の事実上の開始
 第4節 在外正貨の払下げによる為替相場維持政策の展開
 第5節 在外正貨払下政策から在外正貨補充政策への転換過程
 第6節 在外正貨補充政策の展開

第11章 金解禁政策
 第1節 第1次世界大戦後当初の国際政治環境と金輸出禁止の継続
 第2節 金解禁論の台頭と大蔵省の対応
 第3節 国際的金本位制復帰とその日本への影響
 第4節 在外正貨の枯渇
 第5節 浜口内閣の金解禁方針と政策当局者の政策思想
 第6節 金解禁準備政策
 第7節 金解禁への世論操作と金解禁反対行動の取締り

 第6編 金輸出の解禁実施と再禁止

第12章 金解禁実施下の正貨政策
―― 再建金本位制の内実
 第1節 金解禁維持政策
 第2節 金解禁実施下の正貨吸収政策
 第3節 金解禁実施の基本方針の策定、基本的枠組み
 第4節 金兌換と在外正貨売却による金本位制の維持の重視(1930
 年)
 第5節 正金銀行の為替統制売り

第13章 金輸出再禁止と金兌換停止
―― 日本の金本位制に対する「一般的信認」の事実上の崩壊
 第1節 恐慌の深刻化と金輸出再禁止輿論の形成
 第2節 満州事変の勃発
 第3節 イギリスの金本位制離脱後の外貨・金の流出
 第4節 満州事変後の連立内閣構想と民政党内閣の崩壊
 第5節 金輸出の再禁止と金兌換の停止
 第6節  金輸出再禁止・金兌換停止後の金・外貨政策

 第7編 人物からみた戦前日本の国際金融

第14章 海外駐箚財務官制度成立以前の在外国際金融担当者
 第1節 日露戦争以前――海外派遣大蔵官僚とロンドン駐在外交官僚・
 正金銀行ロンドン支店支配人
 第2節 帝国特派財政委員の派遣

第15章 戦前日本の国際金融官僚
―― 海外駐箚財務官を中心として
 第1節 海外駐箚財務官制度の成立
 第2節 海外駐箚財務官制度展開期の財務官とその協力者
 第3節 海外駐箚財務官制度後退期の財務官

終 章 各章の要約

あとがき
主要参考文献一覧
索引


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