あなたは今、この文章を読んでいる。 パラフィクションの誕生
価格:2,200円 (消費税:200円)
ISBN978-4-7664-2162-0 C0098
奥付の初版発行年月:2014年09月 / 発売日:2014年09月中旬
円城塔、伊藤計劃、筒井康隆、辻原登、舞城王太郎、ジョン・バース、コルタサル、ジーン・ウルフ――
メタフィクションの臨界点を突破する、2010年代のための衝撃のフィクション論。
「フィクション」の「虚構性」を意識的に描き出そうとする、「メタフィクション」は、ゼロ年代に入り、ゲームとアニメ、インターネットの進化と連動しながら、あらゆるジャンルで著しい勃興を遂げた。しかし、世に氾濫する過剰な「メタ」は、或る重大な問題をはらんでいたのである。すなわち、フィクションが複雑化・階層化されるにつれ、物語の外部で操作する「作者」の絶対性は強化される、というパラドックスである。
ところがゼロ年代後半から、「メタ」の限界を乗り越えるべく構想された作品群が登場しはじめる。それらのテクストには、「読者」に「読む」という能動的行為を要求するプログラムが内包されていた。
本書では、そのプログラムを「近傍の/両側の/以外の/準じる/寄生する」という意味をもつ「パラ」を冠するフィクションとして名づけ、提言する。「読者」つまり「あなた」が読むたびに新たに生成されるフィクション、それが「パラフィクション」である。
佐々木 敦(ササキ アツシ)
1964年名古屋市生まれ。批評家、早稲田大学文学学術院教授、音楽レーベルHEADZ主宰。20年以上にわたり、音楽、文学、映画、演劇などの批評活動を行なう。著書に『即興の解体/懐胎』(青土社、2011年)、『未知との遭遇』(筑摩書房、2011年)、『批評時空間』(新潮社、2012年)、『シチュエーションズ』(文藝春秋、2013年)、『「4分33秒」論』(Pヴァイン、2014年)、『ex-music〈L〉ポスト・ロックの系譜』、『ex-music〈R〉テクノロジーと音楽』(共にアルテス、2014年)など多数。
上記内容は本書刊行時のものです。
目次
プロローグ
パラフィクションとは何か?
「道化師の蝶」の選評をめぐって
メタフィクションの「問題」
メタリアル・フィクション再考
第1部 メタフィクションを超えて?
1 「メタフィクション」とは何か?
メタフィクションの定義いろいろ
自意識のフィクションと、その外部
メタフィクションの左旋回
由良君美のメタフィクション論
2 『虚人たち』再読
虚構内存在とは誰か?
平岡正明の『虚人たち』論
渡部直己の『虚人たち』論
『虚人たち』から『脱走と追跡のサンバ』へ
3 辻原登の「虚人」たち
人称と視点
作者たちのレイヤー
「虚構内人物」の「自覚」とは何か?
遊動亭円木は虚構内人物である
4 マリー=ロール・ライアンの(メタ)フィクション論
「……ということにしましょう」
AW―TAW―TRW
虚構内存在としての作者と読者
5 ジョン・バースから竹本健治へ
「虚構内虚構」の幾つかのパターン
ジョン・バースの「枠組物語」
メタフィクションとしての『匣の中の失楽』
6 「ゲーム的リアリズム」再考
『九十九十九』の分裂?
「現実」を肯定する?
メタフィクションとしての「イキルキス」&「ビッチマグネット」
「日本的メタフィクション」の起源?
7 「メタフィクション」の何が問題なのか?
『虚構内存在』の「虚構内存在」
「作者」から「読者」へ
第2部 パラフィクションに向かって
8 「あなたは読者である」
二つの掌篇
二人称小説とは何か?
「爪と目」は二人称小説か?
9 パラフィクションとは何か?
「読者」の創出
他者言及機関としての小説
README
10 書く者と書かれる者/読む者と読まれる者
「屍者」の帝国へ/から
「わたし」の物語
11 パラフィクションとしての『屍者の帝国』
ヒズ・ボーイ・フライデー
フライデーとは誰か?
12 日本・現代・SF
「雪風」的な世界
「言葉使い師」の憂鬱
エピローグ
あとがき
参照文献
作品名索引
人名索引