医療介護の一体改革と財政 再分配政策の政治経済学Ⅵ
価格:5,060円 (消費税:460円)
ISBN978-4-7664-2195-8 C3033
奥付の初版発行年月:2016年01月 / 発売日:2016年01月上旬
▼本当になすべき改革はここにある!
「医療介護の一体改革」の言葉を生んだ制度改革のキーパーソンが、一連の改革過程をたどりながら、社会保障の意義と役割、制度の仕組みと改革の概要、さらに医療と政治経済との関わりを平易に解説。そして、誰もが安心して暮らせる地域社会づくりに向け、喫緊に取り組むべき課題を提示する。
権丈 善一(ケンジョウ ヨシカズ)
慶應義塾大学商学部教授 博士(商学)
1962年福岡県生まれ。1985年慶應義塾大学商学部卒業、1990年同大学院商学研究科博士課程修了。嘉悦女子短期大学専任講師、慶應義塾大学商学部助手、同助教授を経て、2002年より現職。この間、1996年~1998年ケンブリッジ大学経済学部訪問研究員、2005年ケンブリッジ大学ダウニングカレッジ訪問研究員。
公務では、社会保障審議会、社会保障国民会議、社会保障制度改革国民会議、社会保障制度改革推進会議の委員や社会保障の教育推進に関する検討会の座長など、他にもいくつか引き受けたり、いくつかの依頼を断ったり、また、途中で辞めたり。
主要業績に、『年金、民主主義、経済学 ―― 再分配政策の政治経済学Ⅶ』(2015年)、『社会保障の政策転換 ―― 再分配政策の政治経済学Ⅴ』(2009年)、『医療政策は選挙で変える ―― 再分配政策の政治経済学Ⅳ[増補版]』(2007年〔初版2007年〕)、『医療年金問題の考え方 ―― 再分配政策の政治経済学Ⅲ』(2006年)、『年金改革と積極的社会保障政策 ―― 再分配政策の政治経済学Ⅱ』(2004年、労働関係図書優秀賞)、『再分配政策の政治経済学Ⅰ ―― 日本の社会保障と医療[第2版]』(2005年〔初版2001年、義塾賞〕)(以上、慶應義塾大学出版会)、『医療経済学の基礎理論と論点(講座 医療経済・政策学 第1巻』(共著、勁草書房、2006年)、翻訳としてV. R. フュックス著『保健医療政策の将来』(共訳、勁草書房、1995年)などがある。
目次
はじめに
医療介護一体改革 関連年表
第Ⅰ部 賽は投げられた
―― 競争から協調の時代への第一歩 ――
第1講 医療介護一体改革の政治経済学
―― The die is cast, it’s your turn next
The die is cast ―― 賽は投げられた
国のガバナンス問題
医療政策を取り巻く財政問題
所得再分配制度としての社会保障制度
医療者と保険のかかわり方
税と社会保険料の政治経済学
財源調達のあり方に関する考え方
完全雇用余剰と日本の税構造の弱点
財政の持続可能性とピケティの『21世紀の資本』
公的年金と比べて明るい医療介護の財政ポジション
人口減少社会に向けての街作り、コンパクト・シティと医療界
It’s your turn next ―― 次はあなたたちの番
改革の方向性
医療は“競争から協調へ”
役員との質疑応答より抜粋
第2講 医療は「競争から協調へ」
社会保障制度改革国民会議での発案
競争よりも協調が必要となる理由
医療の経済特性とガバナンスの基本
ご当地の社会的共通資本構築の理念として「競争よりも協調を」
第Ⅱ部 混迷のなかで
―― 2009年から2012年 ――
第3講 依怙によっては弓矢はとらぬ、ただ筋目をもって何方へも合力す
―― 2009年総選挙直前のとある日に
第4講 多数決、民主主義、集合的意思決定考
―― はたして民意、団体の意思とは?
追記
第5講 医療費の将来見通し方法の進化
日本の前提としての政府債務
「医療介護費用のシミュレーション」提出への道程
社会保障国民会議の設置
医療費の将来見通しに関する検討会
医療費の将来見通し方法の進化
あるべき医療介護の財政シミュレーション
社会保障機能強化のための中期プログラム
第6講 増税と景気と社会保障
第7講 不磨の大典「総定員法」の弊
第8講 政界と税と社会保障
参考資料 ―― 貧困の減らし方
第9講 皆保険50年の軌跡とわれわれが次世代に残した未来
租税に強く依存した皆保険制度の財源
必要に応じて利用できる“平等主義型の医療サービス”を実現した日本
財源を租税に依存する“制度の危うさ”
トレード・オフの関係にある制度の「普遍性」と「安定性」の価値
なぜ、医療費が予算削減のターゲットになるのか
高齢化と国民負担率
財源確保のルール「ペイアズユーゴー」
G20サミットで特別扱いされる日本
消費税率アップが財政再建の鍵を握る
われわれが次世代に残した未来は高負担・中福祉社会
社会保障の機能強化で持続可能な中福祉国家へ
恵まれた環境下にある日本
第10講 憲政史上最大の確信犯的公約違反とその後遺症への学術的関心
2月24日の書き込み
2月25日の書き込み
2月26日の書き込み
第11講 消費税と福祉国家
第12講 震災復興と社会保障・税の一体改革の両立を
以前から国難に足し合わされた新しい問題
中福祉国家実現の負担とは
社会保障は新たな改革が必要
復興は前線、財政は兵站
第13講 財政・社会保障一体改革の工程表を
第14講 政治は税制改革を邪魔する存在
第15講 無政府状態下の日本の財政・社会保障
日本が無政府状態に至った理由
あるべき社会保障の「設計図」と「見積書」はとうの昔にできている
前門の虎、後門の狼
追記
第16講 いかにして社会保障を守るか
100兆円って、何メートル?
社会保障と市場の関係
臼杵市から見通す日本の将来
第2号保険料で地域間の再分配機能を
税と社会保険料は何が違うのか
借金のストック問題
借金のフロー問題
日本の財政支出構造
日本は低負担すぎた
社会保障の財政問題と政治の立ち位置
ポピュリズムと戦う静かなる革命戦士
民主党のマニフェストは何だったのか
われわれが次世代に残した未来
第17構 合成の誤謬の経済学と福祉国家
―― そのなかでの医療団体の政治経済学的位置
合成の誤謬と自由放任の終焉
合成の誤謬を改善する政策に抗う経済界
資本主義的民主主義のなかでの医療政策
経済界のプロパガンダと規制緩和圧力
資本主義的民主主義と対日圧力
成長戦略と戦略的貿易論
イノベーションと経済政策
付加価値生産性と物的生産性
福祉国家を支える集団としての医療界に求められるもの
第18構 持続可能な中福祉という国家を実現するために
2012年春という今
政権交代から一体改革法案提出までの財政運営
今回の一体改革の意味
持続可能な中福祉という国家像
最後に ―― 胴上げ型、騎馬戦型、肩車型?
第19構 国民皆保険という不安定な政治均衡
社会保障としての国民皆保険制度
皆保険という不安定な政治均衡
皆保険維持に要する費用とその負担
社会保障としての国民皆保険の将来を左右するもの
第20構 研究と政策の間にある長い距離
HTAとのかかわり
実証分析と規範分析
規範経済学の学説史 ―― 基数的効用から序数的効用へ
厚生経済学から新厚生経済学へ
アローの不可能性定理と分配問題
経済学と価値判断
QALYに内在する基数的効用
HTAの政策立案への活用可能性
パネルディスカッション
後日談
第21講 税収の推移と見せかけの相関
追記
第Ⅲ部 大混乱期を過ぎて
第22講 あるべき医療と2つの国民会議
第23講 医師国保は必要か
財政補助の論理性 ―― 支払能力に応じた負担が社会保険の原則
医師国保がもし国庫補助を絶たれたら?
47都道府県医師国保による健保組合で、「支払い側」交渉力を
第24講 社会保障制度のなかの歯科医療
医療サービスと歯科サービス
歯科サービスに対するニーズの変化と歯科医師数
歯科口腔保健の推進に関する基本的事項と歯科サービス分配のあり方
第25講 日本的医療問題の解決に道筋を
第26講 医療介護の一体改革
第27講 国民会議報告は医療界の“ラストチャンス”
日本の低い医療費水準、経済界は目を背けたい事実
建て替えのタイミング、統合や連携を基金で後押し
国民会議の見どころ、7月12日には“事件”も
メディアの反応に見る「持てる者と持たざる者の戦い」
追記
第28講 民主主義と歴史的経緯に漂う医療政策
財政健全化のスピードと社会保障機能強化の取り分
問題意識と事実認識という社会を見る角度
社会保障制度改革国民会議の位置づけ
制度設計における税と社会保険料の相違
将来給付費の名目値と対GDP比
社会保障給付費の経費別割合の見方
胴上げ、騎馬戦、肩車論への批半と「サザエさん」の波平さん話
「あるべき医療、あるべき介護」と2008年社会保障国民会議
第29講 競争ではなく協調に基づいた改革を
社会保障国民会議から社会保障制度改革国民会議
社会保障制度改革国民会議報告書のポイント
2008年社会保障国民会議が示していた改革の方向性
日本の医療制度の特徴
行政や経済界への要望
囚人のジレンマと競争から協調へ
第30講 守るべき国民医療とは何か
第31講 超高齢社会の医療を考える
病院完結型から地域完結型へ
医療と介護の一体化
国民皆保険制度
第32講 医療供給体制と経済界のあり様
経済界の社会保障に対する見識
組合運営は瀬戸際? 問われる保険料格差
保険者機能と被用者保険の一元化
提供体制の改革を苦手とする診療報酬
第Ⅳ部 国民会議と医療介護改革の政策形成過程
第33講 2025年に向け、 医療専門職集団に求められるもの
「医療政策フィールド」のなかでの各国の位置と日本の特徴
医療の経済特性と制度設計
医療提供体制の制御機構
医療とはQOLの維持・向上を目指すサービス
患者側の意識とインセンティブ
病状にふさわしい提供体制への改革と効率化の意味
職能集団の責務
医療職種の業務見直しと医師不足
フリーアクセス
国民健康保険の都道府県化と被用者保険のあり方
提供体制の再編とホールディング、そしてまちづくり
QOLとQOD
あとがき
主要参考文献
索引