慶應義塾大学東アジア研究所 現代中国研究シリーズ
現代中国政治研究ハンドブック
価格:3,520円 (消費税:320円)
ISBN978-4-7664-2209-2 C3031
奥付の初版発行年月:2015年07月 / 発売日:2015年07月下旬
▼大きく変化し、ますます注目を集める現代中国政治。
海外を含むこれまでの主な研究・文献を分野別に整理し、問題設定・研究アプローチ(分析枠組み)・今後の課題と研究の方向性の見取り図を明快に描く、最新の研究ガイド。
▼中国政治を学び、研究対象とする、学部3・4年生(学部専門課程)・大学院生・および若い研究者たちが、自分のレポート・卒論・学位論文の研究テーマ・方向性を練り上げる際に参照できる水先案内であり、また、中国関係者・メディア関係者がこの分野における研究状況・研究者を把握しようとする際にも読める、もっとも信頼できるガイドブックである。
高橋 伸夫(タカハシ ノブオ)
慶應義塾大学法学部教授・東アジア研究所所長。1960年生まれ。慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学、法学博士。主要業績:『中国革命と国際環境―中国共産党の国際情勢認識とソ連、1937年~1960年』(慶應義塾大学出版会、1996年)、『党と農民―中国農民革命の再検討』(研文出版、2006年)、ほか。
(※掲載順)
【編著者】
高橋伸夫(たかはし のぶお)
慶應義塾大学法学部教授・東アジア研究所所長。
【執筆者】
江藤名保子(えとう なおこ)
日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員。スタンフォード大学国際政治研究科修士課程修了(MA)、慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程単位取得退学、博士(法学)。主要業績:『中国ナショナリズムのなかの日本―「愛国主義」の変容と歴史認識問題』(勁草書房、2014年)、『日中関係史 1972-2012 Ⅰ政治篇』(共著、東京大学出版会、2012年)、ほか。
小嶋華津子(こじま かずこ)
慶應義塾大学法学部准教授。1970年生まれ。慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程単位取得退学、博士(法学)。主要業績:『現代中国政治外交の原点』(共編著、慶應義塾大学出版会、2013年)、『現代中国の市民社会・利益団体―比較の中の中国』(共編著、木鐸社、2014年)、ほか。
加茂具樹(かも ともき)
慶應義塾大学総合政策学部教授。1972年生まれ。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程単位取得退学、博士(政策・メディア)。主要業績:『現代中国政治と人民代表大会―人代の機能改革と「領導・被領導」関係の変化』(慶應義塾大学出版会、2006年)、『党国体制の現在―変容する社会と中国共産党の適応』(共編著、慶應義塾大学出版会、2012年)、ほか。
毛利亜樹(もうり あき)
筑波大学人文社会系助教。1976年生まれ。同志社大学大学院法学研究科博士後期課程修了、博士(政治学)。主要業績:『党国体制の現在―変容する社会と中国共産党の適応』(共著、慶應義塾大学出版会、2012年)、「習近平中国で語られる近代戦争」(『アジア研究』第60巻第4号、2014年)、ほか。
中岡まり(なかおか まり)
常磐大学国際学部准教授。1969年生まれ。慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程単位取得退学。主要業績:「中国地方人民代表大会選挙における「民主化」と限界―自薦候補と共産党のコントロール」(『アジア研究』第57巻第2号、2011年)、「人民代表大会直接選挙に見る中国共産党の適応能力―独立候補への対応を例に」(『常磐国際紀要』第19号、2015年)、ほか。
磯部 靖(いそべ やすし)
慶應義塾大学法学部准教授。1968年生まれ。慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程単位取得退学、博士(法学)。主要業績:『現代中国の中央・地方関係―広東省における地方分権と省指導者』(慶應義塾大学出版会、2008年)、『現代中国政治外交の原点』(共著、慶應義塾大学出版会、2013年)、ほか。
田島英一(たじま えいいち)
慶應義塾大学総合政策学部教授。1962年生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科後期博士課程単位取得退学。文学修士。主要業績:『弄ばれるナショナリズム―日中が見ている幻影』(朝日出版社、2007年)、『協働体主義―中間組織が開くオルタナティブ』(共編著、慶應義塾大学出版会、2009年)、ほか。
金野 純(こんの じゅん)
学習院女子大学国際文化交流学部准教授。1975年生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了、博士(社会学)。主要業績:『中国社会と大衆動員―毛沢東時代の政治権力と民衆』(御茶の水書房、2008年)、『上海―都市生活の現代史』(共編著、風響社、2012年)、ほか。
メラニー・フランシス・マニオン(Melanie Frances Manion)
デューク大学教授。ミシガン大学博士号(政治学)取得。ロチェスター大学准教授。ウイスコンシン大学マディソン校教授を経て現職(2015年7月~)。主要業績: Corruption by Design: Building Clean Government in Mainland China and Hong Kong (Harvard University Press, 2004), Contemporary Chinese Politics: New Sources, Methods, and Field Strategies (co-edited, Cambridge University Press, 2010), ほか。
目次
序文(高橋伸夫)
総論(高橋伸夫)
はじめに ―― 日本の中国政治研究が置かれている状況について
Ⅰ 近年における日本の中国政治研究の諸傾向
Ⅱ われわれの認識装置をいかに組替えるか
Ⅲ 本書の狙い
第Ⅰ部 政治体系の環境を形づくる要素
第1章 政治文化の役割(高橋伸夫)
はじめに ―― 政治文化の概念
Ⅰ 政治文化へのアプローチ
1 解釈学的アプローチと実証主義的アプローチ /
2 政治文化の概念をめぐる批判
Ⅱ これまでの研究 ―― 中国の政治文化の特徴をめぐって
1 解釈学的研究の代表例 ―― L・パイとR・ソロモン /
2 日本人による解釈学的研究 /
3 実証主義的研究の代表例 ―― A・ネイサンと閔琦
Ⅲ 中国の政治文化の変化と持続
―― グローバリゼ―ションのなかで
おわりに ―― 中国の政治文化研究の展望
第2章 中国政治に対する外部からの影響
―― グローバリゼーションと現代中国(江藤名保子)
はじめに
Ⅰ アプローチ ―― 中国政治の主体性と受動性をめぐって
1 二つの対立的なアプローチ /
2 戦後中国研究のパラダイム転換 /
3 現状に対するアプローチと新しい課題
Ⅱ 現状と課題 ―― グローバリゼーションと中国の政治体系
1 グローバリゼーションの理論的考察と中国 /
2 中国の政治経済とグローバリゼーション /
3 外部からの民主化圧力と中国の政治体系
おわりに
第Ⅱ部 権力機構
第3章 中国共産党と中国政治(小嶋華津子・加茂具樹)
はじめに ―― 政治体系と中国共産党
Ⅰ 中国共産党への視座
Ⅱ 中国共産党の政治的機能に関する先行研究
―― イデオロギーと組織
1 イデオロギー工作 / 2 組織工作
Ⅲ 巨大利権ネットワークと化した中国共産党とその将来
1 非制度的側面の把握 / 2 共産党統治の強靱性を測る基準
おわりに ―― 中国共産党研究の展望
第4章 人民解放軍の役割(毛利亜樹)
はじめに
Ⅰ 研究へのアプローチ
1 中国の軍事、安全保障研究の誕生 / 2 主要な分析枠組
Ⅱ これまでの研究
1 軍事専門化と政治統制の葛藤 / 2 解放軍の政治行動 /
3 改革開放時代の政治と軍事 / 4 天安門事件(1989年)
Ⅲ 現状と展望 ―― ポスト鄧小平時代の政軍関係
1 制度による軍隊統制と軍の官僚化 / 2 軍隊の国家化? /
3 軍事と外交の調整
おわりに
第Ⅲ部 政治体系への「入力」に関わる要素
第5章 政治参加(中岡まり)
はじめに ―― 「政治参加」とは何か?
Ⅰ 現代中国の政治参加へのアプローチ
Ⅱ これまでの研究
1 1950~60年代 ―― 全体主義モデルからの脱却 /
2 1970~80年代 ―― 「政治参加」の定義拡大から研究対象の拡
大へ /
3 1980年代以降 ―― 民主化を促進するのか
Ⅲ 研究の現状と課題
1 米中における研究の相違 /
2 研究の現状 ―― 民主化の可能性と権威主義体制の維持の間で
おわりに ―― 研究の課題と展望
1 研究の課題 / 2 中国の政治参加の展望
第6章 中国政治と「市民社会」(小嶋華津子)
はじめに
Ⅰ 政治学における市民社会論の復活
Ⅱ 市民社会研究史 ―― 民主化の萌芽を求めて
1 市場経済化と市民社会の発展 /
2 自律的市民社会による民主化への期待と挫折
Ⅲ 中国の現実に即した市民社会理解の試み
1 「分析的市民社会論」と実態の量的把握 /
2 規範的市民社会論からの脱却と多面的・多層的実態の質的把握
おわりに ―― 日本からの発信:市民社会研究の展望
第Ⅳ部 政治体系からの「出力」に関わる要素
第7章 政策決定と政策過程(加茂具樹)
はじめに
Ⅰ 研究の射程
Ⅱ 研究の現状
1 政策決定機構の研究 / 2 分断化された権威主義 /
3 「強靱性」という概念 / 4 偽装された民主制度 /
5 二つの強靱性
おわりに
第8章 中央・地方関係(磯部 靖)
はじめに
Ⅰ 中央・地方関係へのアプローチ
1 主要概念 / 2 アプローチ
Ⅱ これまでの研究
1 毛沢東時代の中央・地方関係をめぐって /
2 鄧小平時代の中央・地方関係をめぐって /
3 ポスト鄧小平時代の中央・地方関係をめぐって /
4 研究の現段階
おわりに
第9章 国民統合(田島英一)
はじめに ―― 本章の関心
Ⅰ これまでの研究
1 原初主義的な試み ―― 中国国内の研究から /
2 再構築される中国アイデンティティ ―― 天安門事件と冷戦崩壊
後の議論 /
3 大衆ナショナリズムの顕在化 ―― コソボ紛争と海南島事件後の
議論 /
4 少数民族問題 ―― 諸民族集団のエスノ・ナショナリズムと民族
政策
おわりに
第10章 社会の統制(金野 純)
はじめに ―― 社会統制へのアプローチ
Ⅰ これまでの研究① ―― 抑圧的統制
1 毛沢東時代の社会統制論 ―― 中国社会主義モデルからのアプ
ローチ /
2 近代化理論から見た逸脱と統制 ―― J・リュウらの共同研究 /
3 社会統制の組織分析 ―― X・グオ
Ⅱ これまでの研究② ―― 情報統制
1 毛沢東時代のメディア統制 ―― 全体主義モデルからのアプロー
チ /
2 メディア統制への相互作用論的アプローチ ―― S・シャーク /
3 インターネット革命とオンライン・アクティビズム ―― G・ヤン
の多元相関論 /
4 「応対性のある権威主義体制」 ―― D・ストックマン
おわりに ―― 研究の課題と展望
第Ⅴ部 政治体系の変化
第11章 民主化の可能性(高橋伸夫)
はじめに
Ⅰ 概念とアプローチ
1 構造的アプローチ / 2 主意主義的アプローチ /
3 状況的アプローチ
Ⅱ 既存の研究
1 「下からの」民主化のポテンシャルに関する兆候発見主義的文献
群 /
2 中国における権威主義体制の「強靱性」について論じた文献群
Ⅲ 民主化への展望はいかに開けるか
1 不安定化しつつある均衡状態 / 2 均衡の崩壊と民主化の可能性
おわりに
補遺 欧米の研究者による中国政治研究
―― 道具箱のなかのあらゆる道具を使用する?(メラニー・マニオン/
上野正弥訳)
はじめに
Ⅰ 利用可能な方法論的ツール
Ⅱ 実際に使用されている方法論的ツール
Ⅲ 2013年に発表された三つの優れた研究
おわりに
人名索引・事項索引