アルスター長老教会の歴史 スコットランドからアイルランドへ
価格:5,940円 (消費税:540円)
ISBN978-4-7664-2210-8 C3022
奥付の初版発行年月:2015年03月 / 発売日:2015年03月下旬
▼北アイルランドのプロテスタント
―― そのメンタリティ、アイデンティティとは?
北アイルランド紛争におけるプロテスタント側の中心をなす長老派が辿ってきた400年にわたる歴史を生き生きと描き出した初の研究書。
17世紀初め、アルスター地方(≒北アイルランド)がイングランドによって植民地化され、イギリス国教徒をはじめとするプロテスタントがこの地方の支配層に定着したことが、現代まで続く北アイルランド紛争の起点とされている。
長老派は、この時代にスコットランドから入植したプロテスタントの一派で、当初、圧倒的多数派だったカトリック(被抑圧層)の敵意に対抗するために、自らの教義に強く依拠して社会的コミュニティを作り、発展してきた。
本書は、北アイルランド紛争の一方の当事者であるプロテスタントの中心をなす長老派の辿ってきた400年にわたる歴史を、社会史家の立場から描き出すことにより、プロテスタント側に起因する紛争の側面と現在の北アイルランド社会を理解する一助となる、日本では類のない研究書である。
松井 清(マツイ キヨシ)
明治学院大学社会学部教授。
1947年生まれ。慶應義塾大学大学院社会学研究科博士課程修了。東京都立大学助手、明治学院大学社会学部専任講師、同助教授を経て、1985年より現職。1986年ウォリック大学(英)客員研究員、1998年アルスター大学(英)客員教授。専門は、比較社会学。
著書・訳書に、『北アイルランドのプロテスタント――歴史・紛争・アイデンティティ』(彩流社、2008年)、『教育とマイノリティ――文化葛藤のなかのイギリスの学校』(弘文堂、1994年)、『社会学理論と哲学的分析』(共訳、弘文堂、1976年)など。
目次
はじめに
序章 アルスターとスコットランド
1 アルスターとスコットランド
2 アルスター植民
3 改革派と長老派
4 ノックスとスコットランド宗教改革
第Ⅰ部 形成期のアルスター長老教会
第一章 アルスター長老教会の誕生
1 プレスコパリアンの時代
2 ブレアとリヴィングストン
3 シックス・マイル・ウォーターのリバイバル
4 最初の長老会
第二章 アルスター「契約派」
1 「契約」という思想
2 「厳粛な同盟と契約」
3 「抗議派」と「決議派」
第三章 「非国教徒」というアイデンティティ
1 クロムウェルの時代
2 王政復古と長老派
3 デリーの包囲
4 アルスター・シノッドの成立
第Ⅱ部 分裂と統合の時代のアルスター長老教会
第四章 「古い光」と「新しい光」
1 「理性の時代」
(一) B・ホードリとバンガー論争
(二) ソルターズ・ホールの論争
(三) トーマス・イムリンの事件
2 ジョン・アバーナシと第一次署名論争
3 「分離派」と「改革長老派」
第五章 ユナイテド・アイリッシュメンとオレンジ会
1 ユナイテド・アイリッシュメンの蜂起
2 「至福千年王国」を夢みた変革
3 長老派とオレンジ会
第六章 ヘンリー・クックの時代
1 アリウス主義論争 ―― 第二次署名論争
2 政治と宗教
(一) カトリック解放
(二) 国民教育システム
(三) アイルランド教会の非国教化
(四) 連合撤回運動
3 教会総会の成立
第七章 福音主義とリバイバル
1 福音主義の定着
2 一八五九年のリバイバル
3 長老派の職業と教育
第八章 アイルランドのナショナリズム
1 アイルランドのナショナリズム
(一) カレン大司教とカトリック教会
(二) 「青年アイルランド党」
(三) 「借地権同盟」と「独立アイルランド党」
(四) アイザック・バットと「自治連盟」
(五) パーネルとグラッドストン
(六) 文化的なナショナリズム
2 「アイルランド自治」と長老派
第Ⅲ部 二〇世紀のアルスター長老教会
第九章 北アイルランドの成立
1 ネ・テメレとマッキャン家の事件
2 「アルスターの契約」
3 「北アイルランド」の成立
第一〇章 モダニストとファンダメンタリスト
1 異端論争 ―― アーネスト・デイヴィ教授の場合
2 W・P・ニコルソン
3 イアン・ペイズリー
第一一章 北アイルランド紛争とアルスター長老教会
1 エキュメニズムと反カトリシズム
2 アルスター長老教会の現在
結びにかえて
引用・参考文献
索 引