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数理経済学の源流と展開

数理経済学の源流と展開

武藤 功:編著, 花薗 誠:編著
A5判 336ページ 上製
価格:5,500円 (消費税:500円)
ISBN978-4-7664-2253-5 C3033
奥付の初版発行年月:2015年08月 / 発売日:2015年08月下旬
発行:慶應義塾大学出版会  
発売:慶應義塾大学出版会
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在庫あり

内容紹介

▼経済分析に妥協のない論理を貫く数理経済学
その伝統と現代経済学への展開を描く

数理経済学の目的は、経済主体の合理的な経済行動とは何か、経済活動の社会的な集計による相互連関やその帰結はどのようなものになるか、の二つを明らかにすることといえる。しかし、その定式化にあたっては、経済社会をどのように捉え、その背後の人間の特性をいかに描写するかといった、研究者の人間観・社会観に関する様々な論争も引き起こされてきた。
本書は、効用理論と意志決定、社会数学の伝統、および動学と均衡理論という3つのテーマによって、数理経済学の歴史的発展を振り返り、複雑に変容する社会に挑む最先端の研究成果を示す。

著者プロフィール

武藤 功(ムトウ イサオ)

防衛大学校人文社会科学群公共政策学科教授
1987年慶應義塾大学経済学部卒業、1989年同大学大学院経済学研究科修士課程修了、1992年同博士課程単位取得退学。1992年防衛大学校講師、1996年同助教授を経て、2007年より現職。専門は近代経済学史。
主要業績:「ワルラスと『社会数学』の伝統」『三田学会雑誌』(86巻2号、1993年);『経済数学への招待』(共著、勁草書房、1994年); “Mathematical Economics in Vienna between the Wars,” Advances in Mathematical Economics, 5, 2003; アダム・スウィフト『政治哲学への招待』(共訳、風行社、2011年)ほか。

花薗 誠(ハナゾノ マコト)

名古屋大学大学院経済学研究科准教授
1994年慶應義塾大学経済学部卒業、1996年同大学大学院経済学研究科修士課程修了、2003年ペンシルベニア大学Ph.D.(経済学)。2003年京都大学経済研究所講師、2006年名古屋大学大学院経済学研究科講師を経て、2007年より現職。専門は産業組織論、ゲーム理論、契約理論。
主要業績:「不完備契約の再交渉におけるコミットメント」『三田学会雑誌』(98巻3号、2005年); “Collusion Fluctuating Demand, and Price Rigidity,” co-authored, International Economic Review, 48(2), 2007; “Dynamic Entry and Exit with Uncertain Cost Positions,” co-authored, International Journal of Industrial Organization, 27(3), 2009 ほか。

上記内容は本書刊行時のものです。

【編著者】
武藤功(Isao Mutoh)〔序文、第4章〕
防衛大学校人文社会科学群公共政策学科教授

花薗誠(Makoto Hanazono)〔序文、第7章〕
名古屋大学大学院経済学研究科准教授

【執筆者】
須田伸一(Shinichi Suda)〔第1章〕
慶應義塾大学経済学部教授
1984年慶應義塾大学経済学部卒業、1986年同大学大学院経済学研究科修士課程修了、1992年ペンシルベニア大学Ph.D.(経済学)。1987年慶應義塾大学経済学部助手、1993年同助教授を経て、2000年より現職。専門は一般均衡理論。
主要業績:“Real Indeterminacy of Equilibria in Sunspot Economy with Inside Money,” co-authored, Economic Theory, 2, 1992; 『数学で考える経済学』(共著、丸善出版、2008年);「サミュエルソンの顕示選好理論」 『三田学会雑誌』(103巻2号、2010年)ほか。

細矢祐誉(Yuhki Hosoya)〔第2章〕
関東学院大学経済学部専任講師
2002年慶應義塾大学経済学部卒業、2004年同大学大学院経済学研究科修士課程修了、2010年同博士課程単位取得退学、博士(経済学)。2004年慶應義塾大学経済学部研究助手、2008年財団法人三菱経済研究所研究員を経て、2014年より現職。専門は理論経済学、ミクロ経済学、消費者理論。
主要業績:“Measuring Utility from Demand,” Journal of Mathematical Economics, 49, 2013; “Identification and Testable Implications of the Ramsey-Cass-Koopmans Model,” Journal of Mathematical Economics, 50, 2014; “A Theory for Estimating Consumer’s Preference from Demand,” Advances in Mathematical Economics, 19, 2015 ほか。

尾崎裕之(Hiroyuki Ozaki)〔第3章〕
慶應義塾大学経済学部教授
1986年慶應義塾大学経済学部卒業、1992年ウィスコンシン大学マディソン校博士課程修了、Ph.D. in Economics。1993年ウェスタン・オンタリオ大学助教授、1996年東北大学経済学部助教授を経て、2005年より現職。専門は経済動学、意思決定論。
主要業績:“Search and Knightian uncertainty,” co-authored, Journal of Economic Theory, 119, 2004; “An axiomatic approach to e-contamination,” co-authored, Economic Theory, 27, 2006; “Irreversible investment and Knightian uncertainty,” co-authored, Journal of Economic Theory, 136, 2007; “Conditional implicit mean and the law of iterated integrals,” Journal of Mathematical Economics, 45, 2009; “Monetary Equilibria and Knightian Uncertainty,” co-authored, Economic Theory, 59, 2015 ほか。

金子創(Soh Kaneko)〔第5章〕
慶應義塾大学経済学部助教(有期)
2008年慶應義塾大学経済学部卒業、2010年同大学大学院経済学研究科修士課程修了、2014年同博士課程単位取得退学。2014年より現職。専門は経済学史。
主要業績:“Cantillon on Value,” KES Discussion Paper GS. 12-1, 2012; 「カンティロンとチュルゴ」『経済学史研究』(56巻1号、2014年); “On the Existence and Characterization of Unequal Exchange in the Free Trade Equilibrium,” co-authored, IER Discussion Paper A. 620, 2014 ほか。

佐藤伸(Shin Sato)〔第6章〕
福岡大学経済学部准教授
2004年慶應義塾大学経済学部卒業、2006年同大学大学院経済学研究科修士課程修了、2009年同博士課程修了、博士(経済学)。2009年福岡大学経済学部講師を経て、2012年より現職。専門は社会的選択理論。
主要業績:“A Sufficient Condition for the Equivalence of Strategy-proofness and Nonmanipulability by Preferences Adjacent to the Sincere One,” Journal of Economic Theory, 148, 2013; “A Fundamental Structure of Strategy-proof Social Choice Correspondences with Restricted Preferences over Alternatives,” Social Choice and Welfare, 42, 2014; “Bounded Response and the Equivalence of Nonmanipulability and Independence of Irrelevant Alternatives,” Social Choice and Welfare, 44, 2015 ほか。

虞朝聞(Chaowen Yu)〔第8章〕
慶應義塾大学経済学部助教(有期)
2007年慶應義塾大学経済学部卒業、2009年同大学大学院経済学研究科修士課程修了、2013年同博士課程単位取得退学。2013年より現職。専門はゲーム理論、ミクロ経済学。
主要業績:『偏微分方程式と需要関数の微分可能性 ―― Nikliborcの定理とその応用』『三田学会雑誌』(共著、105巻3号、2012年);『微分方程式の滞留解と模索過程の安定性』『三田学会雑誌』(共著、106巻1号、2013年); “Corrigendum to “The Weak Core of Simple Games with Ordinal Preferences,” 〔Games and Economic Behavior 44 (2003) 379-389〕,” Games and Economic Behavior, co-authored, forthcoming ほか。

友寄一郎(Ichiro Tomoyose)〔第9章〕
スコール・サービス・ジャパン株式会社マネージャー
1994年慶應義塾大学経済学部卒業、1996年同大学大学院経済学研究科修士課程修了。1996年海上自衛隊、2003年大同火災海上保険、2009年フコクしんらい生命保険、2011年ライフネット生命保険を経て、2012年より現職。専門は損害保険数理、生命保険数理。
主要業績:「台風リスクの証券化に関する一考察」『社団法人アクチュアリー会会報』(60、2007年);「出産保障の商品化に関する考察」『社団法人アクチュアリー会会報』(64、2011年)ほか。

田中久稔(Hisatoshi Tanaka)〔第10章〕
早稲田大学政治経済学術院准教授
1997年早稲田大学政治経済学部卒業、2000年同大学大学院経済学研究科修士課程修了、2013年ウィスコンシン大学マディソン校博士課程修了、Ph.D. in Economics。2000年早稲田大学政治経済学部助手、2008年同専任講師を経て、2010年より現職。専門は数理経済学、計量経済学。
主要業績:“Understanding Regression Versus Variance Tests for Social Interactions,” co-authored, Economic Inquiry, 46(1), 2008; 『経済数学(経済学教室3)』(共著、培風館、2012年); “Local Consistency of the Iterative Least-squares Estimator for the Semiparametric Binary Choice Model,” Advances in Mathematical Economics, 17, 2013; 『経済学入門(第3版)』(共著、東洋経済新報社、2015年)ほか。

八尾政行(Masayuki Yao)〔第11章〕
慶應義塾大学経済学部助教(有期)
2008年慶應義塾大学経済学部卒業、2010年同大学大学院経済学研究科修士課程修了、2014年同博士課程単位取得退学。2014年より現職。専門はマクロ経済学、経済動学、経済理論。
主要業績:“Fixed Point and Mean Ergodic Theorems for New Nonlinear Mappings in Hilbert Spaces,” co-authored, Journal of Nonlinear Convex Analysis, 12, 2011; “Recursive Utility and the Solution to the Bellman Equation,” (平成25年度兼松フェローシップ(大学院生研究奨励賞)論文); “An Application of Kleene's Fixed Point Theorem to Dynamic Programming: A Note,” co-authored, International Journal of Economic Theory, forthcoming ほか。

加藤寛之(Hiroyuki Kato)〔第12章〕
嘉悦大学経営経済学部専任講師
2000年慶應義塾大学経済学部卒業、2002年同大学大学院経済学研究科修士課程修了、2008年同博士課程単位取得退学。慶應義塾大学経済学部研究助手、理工学部数理科学科研究助手を経て、2013年より現職。専門は理論経済学。
主要業績:「適応的期待と不安定性について」『三田学会雑誌』(96巻3号、2002年);「動学的一般均衡モデルにおける合理的期待均衡の頑健性」『三田学会雑誌』(97巻2号、2003年); “An Approximate Moving Average Representation of the Periodic Stochastic Process,” Journal of the Japan Statistical Society, 43(1), 2013 ほか。

盛本圭一(Keiichi Morimoto)〔第13章〕
明星大学経済学部准教授
2006年慶應義塾大学経済学部卒業、2008年大阪大学大学院経済学研究科博士前期課程修了、2011年同博士後期課程修了、博士(経済学)。2009年日本学術振興会特別研究員、2011年明星大学経済学部助教を経て、2014年より現職。専門はマクロ経済学、金融経済学。
主要業績:“Inflation Inertia and Optimal Delegation on Monetary Policy,” Economics Bulletin, 32(2), 2011; “Fiscal Sustainability, Macroeconomic Stability, and Welfare under Fiscal Discipline in a Small Open Economy,” co-authored, Graduate School of Economics and Osaka School of International Public Policy, Discussion Paper in Economics and Business 13-07, 2013; 「IS-LMモデルによるコールレート操作の理解について」『青山経済論集』(共著、第66巻第4号、2015年)ほか。

目次

序文

 第1部 効用理論と意思決定

第1章 効用理論の学説史
    ―― ParetoとSamuelsonについての覚書(須田伸一)
 第1節 はじめに
 第2節 Paretoと積分可能性問題
 第3節 Samuelsonと顕示選好理論
 第4節 おわりに

第2章 効用理論の新展開(細矢裕誉)
 第1節 はじめに
 第2節 効用理論の論点
  1 どんな好みならば効用で表せるのか
  2 どうやって実際に効用を測るのか
  3 効用理論は妥当か否か
  4 効用は比較できるか否か
 第3節 積分可能性について
  1 古典的な結果
  2 Hurwicz-Uzawa理論
  3 筆者の結果
  4 もうひとつの方向性
 第4節 効用理論の未来

第3章 曖昧さとシグナリング・ゲーム(尾崎裕之)
 第1節 はじめに
 第2節 曖昧さを伴う不完全情報展開形ゲーム
  1 フレームワーク
  2 均衡概念の拡張
 第3節 曖昧さを伴うシグナリング・ゲーム
  1 モデル
  2 逐次均衡
  3 一括均衡
  4 分離均衡
  5 Cho-Krepsによる均衡選択
 第4節 おわりに

 第2部 社会数学の伝統と経済理論の潮流

第4章 「社会数学」の学統と数理経済学の誕生(武藤功)
 第1節 はじめに
 第2節 数理経済学への批判
 第3節 Condorcet の「社会数学」の構想
 第4節 Cournot の方法論
  1 大量現象としての規則性
  2 集計による円滑化効果
 第5節 Cournot からWalras へ
 第6節 おわりに
  
第5章 自由貿易均衡と不等価交換(金子創)
 第1節 はじめに
 第2節 準備および問題の概観
  1 Perron-Frobenius定理
  2 国際的不等価交換論
 第3節 代替的なHeckscher-Ohlin モデル
  1 経済
  2 均衡
 第4節 不等価交換としての労働搾取
  1 搾取の定式化
  2 搾取を伴う均衡の存在と特徴付け
 第5節 おわりに

第6章 社会的選択理論の基礎(佐藤伸)
 第1節 はじめに
 第2節 記法と定義
 第3節 定理
  1 Arrowの定理
  2 Senの定理
  3 Gibbard-Satterthwaiteの定理
 第4節 証明
  1 Arrowの定理の証明
  2 Senの定理の証明
  3 Gibbard-Satterthwaiteの定理の証明
 第5節 無関連対象からの独立性
  1 正当化
  2 限定反応性
 第6節 耐戦略性
  1 耐戦略性に特有の事情
  2 小さな嘘
 第7節 おわりに

第7章 価格決定・資源配分機構としてのオークションの理論(花薗誠)
 第1節 はじめに
 第2節 オークションモデルの設定と類型
 第3節 対称独立私的価値のモデル
  1 封印一位価格入札
  2 封印二位価格入札
  3 期待収入等価(Revenue Equivalence)
  4 表明原理と期待収入等価定理
  5 リスク回避的な入札者
 第4節 調達入札とスコアリングオークション
  1 スコアリングオークションの考え方
  2 準線形の評価ツール
  3 価格性能比による評価ルール
  4 その他のケース
 第5節 おわりに

第8章 協力ゲームにおけるNTU値の公理論的関係(虞朝聞)
 第1節 はじめに
 第2節 準備
  1 数学的記法
  2 NTUゲーム
  3 NTU値
 第3節 結果
  1 公理
  2 NTU値の特徴付け
  3 公理の独立性
 第4節 おわりに

第9章 がん保険の数理(友寄一郎)
 第1節 はじめに
  1 がん保険商品の現状
  2 がん統計の現状
 第2節 がん保険商品の分類
  1 タイプ1(1回払い継続)
  2 タイプ2(1回払い消滅)
  3 タイプ3(複数再発払い)
  4 タイプ4(複数継続払い)
 第3節 モデルの導入
 第4節 数理モデル
  1 マルコフモデルの基礎
  2 がん保険のタイプ別基礎率
 第5節 モデルの実装
  1 がん有病率の導出
  2 死力の導出
  3 回復力の導出
  4 がん罹患力の導出
  5 支払インターバルの修正
  6 マスター方程式の数値解
 第6節 おわりに

第10章 一様大数法則とその応用について(田中久稔)
 第1節 はじめに
 第2節 一様大数法則と計量経済学
 第3節 Glivenko-Cantelli の定理
 第4節 対称化・鎖状化・集中不等式
  1 準備
  2 補題
  3 定理4の証明
 第5節 具体例
  1 リプシッツ連続函数族
  2 単調函数族
  3 ノンパラメトリック回帰
  4 多変数単調族
  5 線形指数族
 第6節 おわりに

 第3部 動学と均衡理論の潮流

第11章 順序集合上の不動点定理と動的計画法(八尾政行)
 第1節 はじめに
 第2節 不動点定理
  1 位相空間の不動点定理
  2 距離空間の不動点定理
  3 順序集合の不動点定理
 第3節 経済学における動的最適化問題と動的計画法
  1 例:1部門成長モデル
  2 モデル
  3 ベルマン作用素の不動点
 第4節 おわりに

第12章 貨幣的資産価格モデルと経済変動理論(加藤寛之)
 第1節 はじめに
 第2節 結果の概観
 第3節 モデル
 第4節 分析
 第5節 おわりに
 第6節 数学付録

第13章 公債発行ルールとマクロ経済動学(盛本圭一)
 第1節 はじめに
 第2節 公債発行ルールの理論研究
  1 経緯と比較
  2 先行研究のまとめ
 第3節 公債発行ルールの数理分析
  1 Morimoto et al.(2013)のモデル
  2  Morimoto et al.(2013)の結果
  3 成長モデルにおける財政政策と数理解析
 第4節 今後の課題と展望
  1 数量評価
  2 公債発行ルールの理論的基礎付け
 第5節 おわりに

索引


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