慶應義塾大学東アジア研究所叢書
パブリック・ヒストリーの実践 オルタナティブで多声的な歴史を紡ぐ
価格:4,950円 (消費税:450円)
ISBN978-4-7664-3005-9 C3020
奥付の初版発行年月:2025年01月 / 発売日:2025年01月下旬
・一般市民が担う歴史実践から、新たな視野をひらく。
・学問が歴史を占有せず、人びとと共に、人びとの歴史を作り上げていく営みである「パブリック・ヒストリー」。
・声なき声を聴くその歴史実践から、共生の可能性を考える。
従来の「アカデミック・ヒストリー」へのオルタナティブな方法論として登場した「パブリック・ヒストリー」。その理論的な枠組みを解説したうえで、日本国内からアフリカまでさまざまな地域・時代にわたる研究実践を紹介。さらに方法論そのものを再検討する論文を収載することで、学問分野の新たな視座をひらく一冊。
笠井賢紀(カサイヨシノリ)
慶應義塾大学法学部准教授。
1983年生まれ、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程修了、博士(政策・メディア)。専門分野:社会学。
主要著作:『栗東市の左義長からみる地域社会』(サンライズ出版、2019年)『共生の思想と作法――共によりよく生き続けるために』(共編著、法律文化社、2020年)、ほか。
田島英一(タジマエイイチ)
慶應義塾大学総合政策学部教授。
1962年生まれ、慶應義塾大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学、修士(文学)。専門分野:中国地域研究、宗教と公共性。
主要著作:『弄ばれるナショナリズム――日中が見ている幻影』(朝日新聞出版、2007年)、『協働体主義――中間組織が開くオルタナティブ』(共編著、慶應義塾大学出版会、2009年)、ほか。
目次
第Ⅰ部 「パブリック・ヒストリー」の理論
第1章 堆積するオルタナティブな歴史と記憶
第2章 歴史におけるふたつの「公」
第Ⅱ部 実践に埋め込まれた歴史
第3章 共鳴する親子ラジオ
──アメリカ統治下沖縄のラジオ放送が紡いだもう一つの歴史
第4章 ロシアの「チャストゥーシカ」と歴史実践
第5章 東日本大震災の災害伝承施設とパブリック・ヒストリー
── Google Maps レビューデータから紡がれる声
第Ⅲ部 語りづらさを超えて
第6章 何のためなら災禍をめぐる経験を語れるのか?
──映像制作を通して共に考える
第7章 「語らない」から「語りだす」へ
──満洲引揚者・土屋洸子の戦後経験に着目して
第Ⅳ部 誰が歴史を紡ぐのか
第8章 ひきこもりのパブリック・ヒストリーの可能性と不可能性
第9章 宗教的経験と「歴史」実践のあいだ
──セネガルのスーフィー教団を事例として
第10章 パブリック・ヒストリーからジェノサイドへ
──パレスチナ/イスラエルにまつわる歴史実践の相克
第Ⅴ部 歴史実践を生み出す
第11章 住み継ぐまちづくりに向けた「住まいの記憶史調査」の活用方策
第12章 四国遍路につつまれて
──自己の死と歴史実践としての蘇生
あとがき