子どものワークショップと体験理解 感性的な視点からの実践研究のアプローチ
価格:3,080円 (消費税:280円)
ISBN978-4-7985-0198-7 C3037
奥付の初版発行年月:2017年03月 / 発売日:2017年03月下旬
全国各地で取り組まれている子どもたちとのワークショップ。実践者はどのようにワークショップの体験を理解することができるのか。幼児・児童が参加する絵画や映像の表現ワークショップを事例に、関与観察とエピソード記述の方法で、実感に根ざした感性的な視点から体験を捉え、その意味や価値を考察していくワークショップの研究方法を詳しく紹介。ワークショップにかかわり、ワークショップについて「書く」人たちのための一冊。
笠原 広一(カサハラ コウイチ)
笠原広一(かさはら こういち)
東京学芸大学教育学部准教授。
九州大学大学院統合新領域学府博士後期課程ユーザー感性学専攻修了。博士(感性学)。
専門は美術科教育・ワークショップ・幼児の造形表現。チルドレンズ・ミュージアムでの
ワークショップや展覧会企画,芸術系大学附属の幼児教育施設での保育と美術教育,教員
養成大学勤務を経て現職。
目次
はじめに 実感に根差した体験理解へ
第1章 子どものワークショップ実践と研究のこれまで
1.子どものワークショップ実践の状況
2.ワークショップ研究における違和感と問題点
3.ワークショップを語る言葉の変化の背後にある問題
4.本研究の問題設定
5.ワークショップの実践領域の拡大と研究目的の多様化
6.求められる報告や研究の外側にある体験理解の領域
7.ワークショップを理解することの難しさ
第2章 表現活動を媒介とする子どものワークショップ研究の検討
1.研究論文の推移
2.研究論文のジャンル別件数
3.子どもの表現活動に関連するワークショップ研究の検討
4.ワークショップとしか言えない今日的なワークショップ
5.研究目的と研究方法の検討
6.ワークショップ研究の今日的状況に潜む問題点
7.ワークショップ研究の今日的状況の先にある問題点
8.本研究の目的
9.本研究で使用する用語の確認
第3章 感性的な体験理解のアプローチ
1.はじめに
2.感性と理性の統合という芸術教育の命題
3.1980年代以降の感性主義の時代
4.感性研究の視座
5.感性的コミュニケーションとは
6.かかわり合う主体の両義性
7.関与観察と間主観性
8.感性的コミュニケーションによる情動体験の把握
第4章 Vitality affect の検討
1.情動の力動的な「感じ」
2.形としての vitality affect
3.体験の実感に形を与える
4.出来事ベースと体験・情動ベースの違いによる相互交流の検討
5.Vitality affect と芸術表現の理解
第5章 関与観察とエピソード記述
1.臨床研究における客観科学の相対化
2.臨床的実践研究における接面の重視
3.エピソード記述のアクチュアリティと明証性
4.パラダイムと生活世界への問題意識
5.関与観察とエピソード記述
第6章 動きの中にあるワークショップを捉える視点
1.フィールドへの向き合い方
2.トランザクショナルなワークショップの体験過程
3.二者関係での理性的・感性的コミュニケーションと接面の構造
4.事例研究にむけて
第7章 事例研究(1) 絵画表現ワークショップ
1.絵画表現ワークショップについて
2.事例研究の概要
3.エピソード記述による考察
4.エピソード記述の総合考察
5.コーディングによる分析
6.総合考察
7.まとめ
第8章 事例研究(2) 映像表現ワークショップ
1.映像表現ワークショップについて
2.映像表現ワークショップの理論的背景
3.事例研究の概要
4.エピソード記述による考察
5.エピソード記述の考察のまとめ
6.コーディングによる分析
7.まとめ
第9章 事後検証(1) 観察者視点の4ヶ月間の変化
1.観察者視点の考察の必要性
2.事例研究の概要
3.子どもアート・カレッジ2012の概要
4.記述データ
5.コーディングによる分析
6.考 察
7.まとめ
第10章 事後検証(2) ビデオ記録の共同検証
1.ビデオ記録を使った実践の検証
2.事例研究の概要
3.分析データ
4.観察者視点の考察
5.まとめ
第11章 体験理解の創出
1.間主観的な実感に根差したワークショップ体験の把握と理解
2.間主観的な vitality affect の感受によって捉えた体験の内容
3.ワークショップ体験の捉え方や位置づけの可能性
4.接続と充塡から考えるワークショップ体験
第12章 子どものワークショップの体験理解の可能性
1.かかわり合う中でワークショップ体験の動態を捉える研究方法
2.充塡と接続というワークショップの体験理解の新たな視点
3.体験の感性的位相を問う意義
4.実践者や観察者が為し得るワークショップの臨床研究
5.研究方法の明証性と体験の新たな研究方法の検討
6.さいごに
参考文献
初出一覧
あとがき
索 引