九州大学人文学叢書18
中国語の「主題」とその統語的基盤
価格:5,940円 (消費税:540円)
ISBN978-4-7985-0303-5 C3387
奥付の初版発行年月:2021年04月 / 発売日:2021年04月上旬
本書は、「主題」にまつわる語用論的側面と、その解釈の基盤となる統語論的側面を峻別し、統語論においてPredication関係という統語関係を仮定することにより、中国語の「主題」をめぐる様々な現象の説明を試みるものである。
中国語は、しばしば主題優性言語(topic-prominent language)であると言われる。これは、文頭に「主題」が出てくることが多いからであり、中国語の統語論の研究においても、「主題」という概念が言及されることは少なくないが、実は、この「主題」の定義ははっきりと決まっているわけではない。この概念は、どのように捉えられるべきであろうか?
本書では、「主題」の語用論的側面と統語論的側面を峻別し、統語論的側面のみを形式的に定義するという方策をとるのであるが、そこで中心的な働きをなすのは、SubjectとPredicateの間に成り立つPredication関係と呼ばれる統語関係である。Predicationとは「陳述」の意味であり、Subjectは「主部」、Predicateは「述部」であることを考えると、この関係は意味的なものだという印象を持たれるかもしれないが、これらの名称は、統語論の中では単なるラベル以上の何ものでもない。統語論の中でしるしづけられた関係が語用論において様々に評価され、解釈されているだけなのである。本書では、統語論においてこのPredication関係というものを仮定することによって、さまざまな現象が説明できるということを主張する。
Predication関係の仮定によって、
「主題」をめぐる様々な現象を
統一的に分析できることを示す。
陳 陸琴(チン リクキン)
2011年 中国杭州師範大学外国語学院日本語学部卒業
2014年 日本熊本大学大学院社会文化科学研究科交換留学修了
2014年 中国杭州師範大学外国語学院修士課程修了
2019年 日本九州大学大学院人文科学府博士後期課程修了
現 在 中国嘉興学院外国語学院日本語講師
目次
まえがき
凡 例
1.序 論
1.1.統語論の位置づけ
1.2.本書のアプローチ
1.2.1.Information database
1.2.2.Lexicon
1.2.3.Numeration
1.2.4.Computational System
1.3.意味の解釈
1.3.1.「意味」の3つのsource
1.3.2.LF意味表示
1.3.3.統語論と語用論のインターフェイス
2.動詞連続構文
2.1.問題提起
2.2.Predication 関係を判定するためのテスト
2.2.1.否定を表す「不 (bu) 」
2.2.2.限定を表す「只 (zhi) 」
2.2.3.否定を表す「没 (mei) 」
2.2.4.Predication 関係と等位関係の区別
2.2.5.適用例
2.3.Nominalization
2.3.1.名詞句としてのXP1
2.3.2.具体的な操作
2.4.機能範疇T
2.5.具体的な分析
2.6.まとめ
2.7.Appendix
3. 「名詞句主題文」
3.1.Subjectが名詞句のPredication関係
3.2.主要部が名詞句の修飾関係
3.3.修飾関係とPredication関係との違い
3.4.Predication Merge
3.5.VP
3.6.Predication 関係と語用論
3.7.まとめ
3.8.Appendix
4.「A是A構文」
4.1.問題提起
4.2.先行研究
4.3.本書の目的
4.4.A1の役割と逆接
4.4.1.「 是 (shi) 」
4.4.2.A1の必要性
4.4.3.A1の役割
4.5.統語的規則
4.5.1.「是 (shi) 」とTP
4.5.1.1.NPとしてのA1
4.5.1.2.「地 (de) 」副詞と否定を表す「没 (mei) 」
4.5.1.3.機能範疇Tとしての「是 (shi) 」
4.5.2.「A是A構文」の統語的派生
4.5.2.1.包括コピー
4.5.2.2.Nominalization
4.5.2.3.Predication Merge
4.5.3.まとめ
4.6.「A是A構文」の解釈
4.7.まとめ
4.8.Appendix
5.動詞重複構文
5.1.Predication関係としての動詞重複構文
5.2.役割分担コピー
5.3.具体的な分析
5.4.先行研究との比較
5.4.1.本章の提案のまとめ
5.4.2.Huang (1982)
5.4.3.Cheng (2007)
5.4.4.Kuo (2015)
5.5.まとめ
5.6.Appendix
6.結 論
参考文献
あとがき
索 引