タマリンドの木に集う難民たち 南スーダン紛争後社会の民族誌
価格:6,600円 (消費税:600円)
ISBN978-4-7985-0373-8 C3039
奥付の初版発行年月:2024年04月 / 発売日:2024年03月下旬
「ジュバ虐殺」から10年――虐殺を生き延びた南スーダン、ヌエル社会の人々は、隣国ウガンダで難民としての新たな生を営み始めた。難民とは、果たして私たちがイメージするように、脆弱で支援を求める受動的な犠牲者に過ぎないのだろうか。本書では、太古より遊牧の歴史を歩んできたヌエルの人々が、避難先で新たな秩序をどのように創り出し、他者と生きる方法をどう編み出してゆくのかを報告する。
タマリンドの木は、南スーダン各地に伝わる起源神話において、人類の「故郷」や「母」を意味する。難民となったヌエルの人々は、避難先に新たな「タマリンドの木」を見つけ、その木の下で悩み、世界に対する問いを発していた。「難民の世紀」において、私たちは彼らから何を学ぶことができるだろうか。
本書では、南スーダンの紛争後社会を生きる人々が持つ、既存の秩序と向き合い、自らの生を生き直す技法を、南スーダンの避難民キャンプとウガンダの難民居住区でのフィールドワークから明らかにする。南スーダン難民の生活や文化・政治活動などを捉えた写真多数収録。
橋本 栄莉(ハシモト エリ)
立教大学 文学部 准教授
1985 年 新潟県生まれ。2009 年より南スーダンでフィールドワークを始める。専門は文化人類学。
2015 年 一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。博士(社会学)。
ジュバ大学平和開発研究センター研究員、日本学術振興会特別研究員、高千穂大学人間科学部准教授などを経て、現職。
著書に『エ・クウォス:南スーダン・ヌエル社会における予言と受難の民族誌』(単著、九州大学出版会、2018 年)、『アフリカで学ぶ文化人類学』(共編著、昭和堂、2019年)などがある。
目次
第 Ⅰ 部 問題と予期——私たちのことばと南スーダンの歴史
第1章 境界線の話法、問いとつながりの技法——問題はどこから生まれるか
第2章 〈予期のセット〉が生み出す境界線——民族は存在したのか
第3章 増殖する境界線——人々は民族をどう生きたか
第 Ⅱ 部 〈家〉——難民たちが創り上げる秩序
第4章 小さなチエン——避難民キャンプは人々を救済したか
第5章 大きなチエン——模倣は国家を越えるか
第 Ⅲ 部 子宮と墓——神話と牛が語るいのちの持続
第6章 タマリンドの木の下に集う——世界樹は何を語るか
第7章 侵犯する血——牛から逃れて生きることはできるか
第 Ⅳ 部 若者は問う——複数の秩序との付き合い方
第8章 真正の男とコピーの男——「本物の人間」とは誰か
第9章 窮状を笑う——「わたし」は「あなた」になることができるか