情報とフィールド科学2
灯台から考える海の近代
価格:770円 (消費税:70円)
ISBN978-4-8140-0003-6 C0322
奥付の初版発行年月:2016年03月
数ある建築物の中でも,人間の「海に向かった認識」を支えるのが灯台だ。それは単に海上の安全を支えるだけではない。それぞれ海域の特性を,経緯度で刻まれた連続したシステムとして世界大の空間と繋いでいる。そこには,海に生きた人々の,ローカルな思いとグローバルな志とが,ともに照らし出されている。日本とアジアの近代化を灯台の歴史からひもとき,政治,外交,軍事から宗教まで,時代のうねりが刻まれた建築物をフィールドワークの資料とする方法を学ぶ。
谷川 竜一(タニガワ リュウイチ)
1976年大分県生まれ。2004年,東京大学大学院工学系研究科博士課程・建築学専攻 中退。東京大学生産技術研究所・技術職員,同助教,京都大学地域研究統合情報センター・助教を経て,2015年より金沢大学新学術創成研究機構・助教。博士(工学)。専門は建築史。主な研究テーマは,近現代日本とアジアの空間コミュニケーション史,文化資源の空間論。
主な著作に,「往古への首都建設——平壌の朝鮮式建物」(共編著書『記憶と忘却のアジア』(青弓社,2015),「流転する人々,転生する建造物——朝鮮半島北部における水豊ダムの建設とその再生」(『思想』No.1005,岩波書店,2008)など。
目次
建築の歴史から何が見えるか
灯台から考える海の近代
第1章 白洲灯台と近代日本
灯台と灯明台
明治初期の日本の灯台
灯台の見方
白洲灯台の物語
助左衛門の灯明台、ブラントンの灯台
灯明台の計画に現れた世界観
白洲灯台へ
場所が紡ぎ、育むもの
第2章 国際航路の建設
ブラントンの地図
香港から横浜へ
上海・横浜国際航路の中の白洲灯台
横浜・サンフランシスコを結ぶ航路
海の近代化を導いた国際公共財としての灯台
第3章 帝国主義と戦争
アジア・太平洋地域の灯台
西洋式灯台の点灯が始まった場所
東アジアへの列強の進出
近代国家日本の輪郭としての灯台
日露戦争と灯台
北進に向けた鴨緑江河口・大和島灯台の建設
求められた臨機応変な建設
朝鮮半島の植民地経営に向けて
アジア・太平洋の灯台の点灯と近代日本
終章 アジアの海の近代化