変容する親密圏/公共圏12
せめぎ合う親密と公共 中間圏というアリーナ
価格:4,620円 (消費税:420円)
ISBN978-4-8140-0058-6 C3336
奥付の初版発行年月:2017年01月 / 発売日:2017年01月中旬
秋津 元輝(アキツ モトキ)
1960年生まれ,京都大学大学院農学研究科教授
主要論文・著書:『農業生活とネットワーク―つきあいの視点から』(御茶の水書房,1998年),共著『農村ジェンダー―女性と地域への新しいまなざし』(昭和堂,2007年),編著『集落再生―農山村・離島の実情と対策』(農山漁村文化協会,2009年),「食と農をつなぐ倫理を問い直す」(桝潟俊子ほか編『食と農の社会学―生命と地域の視点から』ミネルヴァ書房,2014年),「近代農法を支えた思想と社会」(江頭宏昌編『人間と作物』ドメス出版,2016年)
渡邊 拓也(ワタナベ タクヤ)
1974年生まれ,大谷大学文学部講師
主要論文・著書:「医療化の周辺:ADHDの出現とその功罪」(『京都社会学年報』12,2004年),「医薬品からドラッグへ:一九世紀フランスにおける阿片」(『ソシオロジ』56 (1),2011年),共訳書『教えてデュベ先生,社会学はいったい何の役に立つのですか?』(フランソワ・デュベ著,山下雅之・濱西栄司との共訳,新泉社,2014年),訳書『教えてルモアンヌ先生,精神科医はいったい何の役に立つのですか?』(パトリック・ルモアンヌ著,新泉社,2016年)
目次
序 章 中間圏:親密性と公共性のせめぎ合うアリーナ [秋津元輝]
1 つながりと現代
2 親密圏と公共圏の継ぎ目
2─1.親密圏と公共圏の定義
2─2.対抗的公共圏
2─3.ソシアビリテ(sociabilité)
3 コミュニティから「中間圏」へ
3─1.コミュニティとの訣別
3─2.アリーナとしての「中間圏」
3─3.中間圏が占める場所
4 中間圏を構成する2つの問題系
4─1.中間圏への期待のまなざし ─ライン1─
4─2.生成空間としての中間圏 ─ライン2─
5 本書の課題と構成
第I部 岐路に立たされるコミュニティ
第1章 岐路に立たされるコミュニティ ―宮古島の祭祀組織の生成と再編成を事例に [平井芽阿里]
1 祭祀組織から考える
2 調査地の概要
2─1.宮古島西原
2─2.祭祀組織
2─3.村落祭祀
2─4.神役の役割
3 変容
3─1.意図的に開く
3─2.加入者数
3─3.途中加入者
3─4.「あなたの知らない世界」
4 公開
4─1.写真集の発売
4─2.外部に開かれる
4─3.CDの販売
4─4.雑誌への公開
5 生成と再編成
5─1.開かれながら閉じる
5─2.開くことで閉じる
5─3.祭祀組織を考える
第2章 「コミュニティ」のはらむ問題性 ―マヤ系先住民女性の家事労働の視点から考える [中田英樹]
1 グァテマラに暮らすマヤ系先住民
2 先住民文化の否定から多文化主義下での観光資源化へ
3 本章の理論的枠組みと分析対象の設定
4 先住民女性の労働構成変化─ライフ・ヒストリーの聞き取りから
4─1.Aさん:地元定住拡大家族を基盤に村のインテリへ
4─2.BさんとCさんの姉妹の事例:山奥から移住後は兄姉で支え合って安定した現在
4─3.DさんとEさんの事例:家族分断で移住した脆弱な互助の土壌
5 再生産労働からみた生産労働市場
第3章 地域社会のグレーゾーン ―ホームレスから地元志向現象を考える [川端浩平]
1 はじめに―コミュニティと中間圏の間
2 「ホーム」を守る
2─1.岡山ガーディアンズの結成
2─2.ストリートネームとモチベーション
2─3.高圧的ではない防犯パトロール
2─4.「見て見ぬふりをしない」
2─5.軽犯罪者予備軍の管理とジレンマ
2─6.小括
3 「ホーム」におけるつながり
3─1.深夜のゲームセンター
3─2.ホームタウンのホームレス,河島君との出会い
3─3.河島君の生業
3─4.河島君の楽しみと貧困ビジネス
3─5.ホームレスを排除するデザイン
3─6.小括
4 まとめに―2つの意図せざる結果
第II部 中間圏という視座
第4章 インターネットとまたがる「コミュニティ」 ―西表島リゾート開発と「ネット原告団」編成を事例に [越智正樹]
1 本章の目的
1─1.普遍,特殊,当事者性
1─2.表象可能性の濃淡と当事者性の問題
2 事例─リゾート開発と「ネット原告団」
2─1.事例の概要
2─2.「地元の実態」─場所の履歴と集団編成
2─3.本訴原告団の編成
2─4.小括
3 「ネット原告団」という中間圏の場
3─1.「ネット原告団」の諸特性
3─2.「ネット原告団」と親密圏・公共圏
4 むすび―当事者性が立ち現れる場
第5章 新しい多世代コミュニティ ―政策対象としての可能性と課題 [柴田 悠]
1 なぜ多世代コミュニティに着目するのか
1─1.社会関係の定形化条件
1─2.背景としての社会保障財政
1─3.多世代コミュニティへの期待
2 多世代コミュニティ―事例比較から見る成立条件
2─1.地縁型
2─2.共住型
2─3.デイケア型
2─4.保育型
2─5.居場所型
2─6.多世代コミュニティの成立条件
2─7.政策対象となったコミュニティが孕む限界
3 多世代コミュニティの可能性と課題
第6章 離散をつなぎなおす ―なぜサハリン残留日本人は帰国できたのか [中山大将]
1 〈場〉から観る「残留日本人」の戦後
2 樺太日本人社会の形成と解体
2─1.樺太日本人社会の形成
2─2.樺太日本人社会の解体
3 冷戦期ソ連サハリン社会の中での残留日本人
3─1.サハリン残留日本人の概要
3─2.冷戦期の残留日本人の孤立化
3─3.州都グループという〈場〉
3─4.州都グループとサハリン残留日本人
4 ポスト冷戦期サハリン残留日本人帰国運動
4─1.州都グループからサハリン北海道人会へ
4─2.永住帰国と家族・国家
4─3.サハリン北海道人会という〈場〉
5 〈場〉の脆さと外部要因の重要性
第7章 インターネットカフェという場所 ―マニラ首都圏の事例からみるつながりの課題 [平田知久]
1 はじめに―方法としてのインターネットカフェ
2 人材の送り出し国としてのフィリピンとIC
2─1.平日の深夜にICで
2─2.不安定なフィリピンの雇用環境
3 ICに見る英語の功罪
3─1.Microsoft Office 2010が使えます!
3─2.英語とゲーム
4 ICが地域に根付くということ
4─1.ICオーナーたちの実践
4─2.OFWとIC
5 おわりに―人々のつながりを維持するための条件とその課題
第III部 中間圏概念の地平
第8章 雑談が人を結ぶ ―つながりに関する歴史社会学的考察 [渡邊拓也]
1 中間圏の位相
2 共食・浴場・カフェ
3 対面的/非対面的コミュニケーション
4 共的(コミュナル)なつながりから社交的(ソーシャル)なつながりへ
5 「コミュニケーション能力」の時代
第9章 モノと人との出会い―農業機械をめぐるユーザーとメーカーの交渉 [芦田裕介]
1 モノと人の「出会い」
2 「カスタマイズ型」技術開発
2─1.ユーザーと農業機械との関わり方
2─2.プロ農家における農業機械との関わり方
2─3.小括
3 「汎用型」技術開発
3─1.農業機械産業の歴史
3─2.藤井鉄工所からセイレイ工業へ
3─3.クボタの開発
3─4.現場の意見を汲み上げる
3─5.小括
4 モノと人の関係の再編に向けて
第10章 演奏空間という〈場〉 ―立ち上がるリミナリティとチベット難民社会の日常性 [山本達也]
1 音,身体,中間圏
2 概説
2─1.チベット難民とは,その生活環境
2─2.難民社会の文化ナショナリズム政策とアカマバンドの概略
3 ムンドゴッド公演を取りまく状況
3─1.伝統公演初日の事例
3─2.アカマの公演2日目の事例
4 難民社会内の「都市・農村問題」
5 ムンドゴッドでの演奏空間から見えてくるもの
6 演者たちが引きずる情動
7 暴力と中間圏
終章 〈絆〉の理論から〈場〉の理論へ [渡邊拓也]
あとがき
索引(人名・事項)
執筆者紹介