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民族意識の形成とその基層〈アゼルバイジャン人〉の創出

プリミエ・コレクション77
〈アゼルバイジャン人〉の創出 民族意識の形成とその基層

A5判 434ページ 上製
価格:5,500円 (消費税:500円)
ISBN978-4-8140-0078-4 C3322
奥付の初版発行年月:2017年03月 / 発売日:2017年04月上旬

内容紹介

民族概念は,支配者による規定によって構築される,というのが一般的な学問的理解だ。しかし,アゼルバイジャンは違う。固有のアイデンティティを持ちたいと欲した知識人達が,当時新しく発表された言語学用語を援用して民族名を名乗り,それを芸術や学術作品の中で普及する。民族意識の下からの形成現場を生き生きと描く。

著者プロフィール

塩野崎 信也(シオノザキ シンヤ)

1982年,長野県上田市生まれ。
京都大学文学部卒業。京都大学大学院文学研究科博士後期課程研究指導認定退学。現在,日本学術振興会特別研究員(PD)。
博士(文学)。

主な業績
「18世紀におけるダルバンドの支配者と住民」『東洋史研究』第68巻第4号,2010年。
ŞİONOZAKİ Şinya. Qubalı Fətəli xan və Dərbəndin əhalisi. Azərbaycan Respublikası: uğurlar və perspektivlər. Y.M. Mahmudov, T.T. Mustafazadə, E.Ə. Məhərrəmov(red.), Bakı, 2012.
Mullā Mīr Maḥmūd b. Mīr Rajab Dīvānī Begī Namangānī『Chahār Faṣl(Bidān)/ Muhimmāt al-Muslimīn』濱田正美(解説),濱田正美,塩野﨑信也(校訂),京都大学大学院文学研究科,2010年。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

凡例

序 章
第1節 術語解説
 1.コーカサス,カフカース
 2.南東コーカサス,アーザルバーイジャーン,アゼルバイジャン
 3.イラン世界
 4.トルコ,テュルク
 5.民族,ネイション,エトニ
第2節 先行研究
 1.アゼルバイジャン国外の研究
 2.アゼルバイジャン国内の研究
第3節 問題の所在と本書の構成
 1.本書の主題
 2.構成

第1章 南東コーカサス略史
第1節 イラン世界の中の南東コーカサス
第2節 イスラーム化,テュルク化,シーア派化
 1.アラブの征服とイスラーム化
 2.セルジュークの西進とテュルク化
 3.サファヴィー朝の支配とシーア派化
第3節 3帝国の狭間で
 1.サファヴィー朝の崩壊
 2.ロシア帝国への併合
第4節 2つの民族共和国とソヴィエト

第2章 〈アゼルバイジャン〉とは,どこか
第1節 〈アゼルバイジャン〉の語源
第2節 〈アゼルバイジャン〉の定義
 1.地理書などに見る地理区分
 2.ペルシア語辞典における〈アゼルバイジャン〉
第3節 現地住民の視点
 1.南東コーカサス地方史に見る地理認識
 2.詩人たちの「ふるさと」

 補論1 ペルシア語史書に見る〈アゼルバイジャン〉の用法
  1.イラン世界の北西方面を指す〈アゼルバイジャン〉
  2.〈アゼルバイジャン〉の北の端
  3.拡大していく〈アゼルバイジャン〉
  4.〈カフカース〉の普及
 補論2 各言語の史料に見る〈アゼルバイジャン〉
  1.オスマン語史料に見る〈アゼルバイジャン〉
  2.西欧語史料に見る〈アゼルバイジャン〉
  3.ロシア語史料に見る〈アゼルバイジャン〉

第3章 新たな帰属意識の模索
――近代歴史学の祖バキュハノフと〈東コーカサス地方〉――
第1節 バキュハノフの生涯と作品
 1.バキュハノフの生涯
 2.バキュハノフの作品群
第2節 バキュハノフと近代的歴史学
 1.『エラムの薔薇園』の文体の特徴
 2.バキュハノフの語る「歴史学」
 3.バキュハノフと新たなる学問
第3節 バキュハノフの歴史認識と地理認識
 1.〈東コーカサス地方〉
 2.バキュハノフの見た南東コーカサスの人々と言語

第4章 近代的民族意識の萌芽
――国民文学の父アーフンドザーデと〈イラン〉との間――
第1節 アーフンドザーデとその評価
 1.アーフンドザーデの生涯と作品
 2.評価と位置付け
 3.アーフンドザーデの民族主義分析のための史料
第2節 アーフンドザーデとイラン民族主義
 1.古代ペルシアの末裔としての〈イラン民族〉
 2.反アラブ
第3節 民族としての〈イスラーム〉
 1.イスラームのミッレト
 2.「我らの民族」としての〈イスラーム〉,〈イラン〉,〈トルコ〉
 3.「我らの民族」の後進性と文字改革
第4節 アーフンドザーデの地理認識と帰属意識
 1.〈カフカース〉
 2.〈タタール〉
 3.〈アゼルバイジャン〉

 補論3 19世紀ヨーロッパにおける「民族」の理論
  1.フィヒテの民族観
  2.ミルの民族観
  3.ルナンの民族観

第5章 変化していく「我々」の輪郭
――『種蒔く人』と民族としての〈カフカースのムスリム〉――
第1節 ゼルダービーとその周辺
 1.ゼルダービーの生涯
 2.種蒔きの担い手たち
 3.セイイト・エズィーム・シルヴァーニー
第2節 『種蒔く人』に見る帰属意識と啓蒙思想
 1.民族としての〈ムスリム〉
 2.西洋に倣え
第3節 南東コーカサスにおける〈カフカース〉
 1.〈カフカース〉の普及
 2.〈カフカース〉の指す領域

第6章 〈アゼルバイジャン人〉の出現
――ウンスィーザーデとティフリスの論客たち――
第1節 1880年代,ティフリスにて
 1.〈アゼルバイジャン語〉の受容
 2.ウンスィーザーデ3兄弟
第2節 ケシュキュルに施されたもの
 1.『ケシュキュル』における言語の呼称
 2.『ケシュキュル』の民族観
 3.民族の名は〈アゼルバイジャン〉
第3節 なぜ〈アゼルバイジャン人〉だったのか
 1.シャーフタフティンスキーによる説明
 2.ティフリスにおけるテュルク語の言論界
 3.冬の時代へ

 補論4 カーゼム=ベクと〈アゼルバイジャン語〉
  第1節 南東コーカサスの住民と言語の呼称
   1.住民の呼称
   2.言語の呼称
  第2節 〈アゼルバイジャン語〉の登場と普及
   1.『トルコ・タタール語一般文法』と,言語名としての〈アゼルバイジャン〉
   2.カーゼム=ベクの生涯とカザン学派
   3.〈アゼルバイジャン・タタール語〉の普及
  第3節 〈アゼルバイジャン語〉とは,いかなる言語か
   1.なぜ〈アゼルバイジャン〉だったのか
   2.言語か,方言か

第7章 祖国〈アゼルバイジャン〉の形成
――『モッラー・ネスレッディーン』誌に見る帰属意識の変化――
第1節 アゼルバイジャン人民共和国への道
 1.20世紀初頭の南東コーカサス
 2.民族意識の普及
 3.ゴリ師範学校
第2節 メンメドグルザーデと『モッラー・ネスレッディーン』
 1.メンメドグルザーデの生涯
 2.『モッラー・ネスレッディーン』に見る帰属意識
第3節 祖国としての〈アゼルバイジャン〉
 1.〈カフカース〉から〈アゼルバイジャン〉へ
 2.民族国家の成立と祖国の呼称
 3.祖国の呼称,民族の呼称

終 章 ニザーミーとハターイー
――〈アゼルバイジャン人〉とは,誰か――
第1節 〈アゼルバイジャン人〉としてのニザーミー
 1.「イラン詩人」ニザーミーという「誤解」
 2.「ふるさとの大詩人」から「民族の大詩人」へ
第2節 「アゼルバイジャン・サファヴィー朝国家」
 1.「アゼルバイジャンの英雄」シャー・イスマーイール1世
 2.「アゼルバイジャン・サファヴィー朝国家」の源流
 3.「アゼルバイジャン・サファヴィー朝国家」の成立
 4.「アゼルバイジャン・サファヴィー朝国家」の定着
第3節 拡大していく〈アゼルバイジャン〉
 1.その後の「アゼルバイジャン・サファヴィー朝国家」
 2.「アゼルバイジャン・サファヴィー朝国家」の変容
 3.アラズ川を越えて

結 論
付録1 19世紀の南東コーカサスで著された歴史書・地誌
付録2 ロシア帝政期南東コーカサスにおけるテュルク語定期刊行物
付録3 バキュハノフ『エラムの薔薇園』前文及び序章
付録4 新聞・雑誌記事抄録
参考文献
あとがき
索 引
英文要旨


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