学術選書
マングローブ林 変わりゆく海辺の森の生態系
価格:2,200円 (消費税:200円)
ISBN978-4-8140-0088-3 C1345
奥付の初版発行年月:2017年03月 / 発売日:2017年03月中旬
エビの養殖や炭焼き産業、スズの採掘で荒廃してきた生物多様性の宝庫「マングローブ林」は再生できるのか。原生林が残る時代からほぼ全域が二次林化した時代、荒廃地を植林で再生する時代へ、海辺の森の変貌を35年にわたって見つめてきた著者によるマングローブ研究の集大成。後戻りはしない自然とのつきあい方を探り、これからの地球環境を考える。
小見山 章(コミヤマ アキラ)
1951年 京都市に生まれる
1971年 京都大学農学部入学、同修士課程を修了した後に、農学研究科博士後期課程を単位取得退学し、1989年に農学博士(京都大学)。専門は森林生態学と造林学。
現職、岐阜大学・応用生物科学部・教授。元応用生物科学部・学部長および元岐阜大学理事(学術研究・情報・国際戦略担当副学長、図書館長)。
著書に『森の記憶―飛騨・荘川村六厩の森林史』(京都大学学術出版会)、『岐阜から生物多様性を考える』(監修、岐阜新聞社)など。
目次
はじめに
第1章……マングローブ林に魅せられて
1 マングローブ林に魅せられて
2 マングローブ林について
3 海水に対抗するマングローブ
4 根と泥の奇妙な関係
5 生態系が実感できる森林
6 マングローブ林に生きる人々
7 根掘りがきっかけ
ボックス1 「森林の一次生産力を調べる方法」
第2章……かつて南タイにマングローブ原生林があった
1 憧れの熱帯林
2 南タイに世界最大級のマングローブ林があった
3 森林調査のプロトコル
4 地上の現存量を調べる
5 はじめて根を掘った
6 泥と格闘の日々
ボックス2 「根の分布から現存量を求めるモデル」
第3章……マングローブ原生林の不思議な構造
1 ウォレスの地、はるかなるモルッカ諸島へ
2 ワラセアにたどり着く
3 カウ村上陸作戦
4 ソソボックのマングローブ原生林
5 帯状分布の不思議
6 根系の違いが帯状分布に関係する?
第4章……マングローブ原生林の地下に眠る怪物
1 根だらけ仮説
2 相対成長式の分離に悩まされる
3 再び原生林で根を掘る
4 マングローブの根の張り方
5 マングローブ林の地下に眠る怪物
6 ハルマヘラ島を去る
ボックス3 「地の果て」
第5章……そしてマングローブ林は二次林と化した
1 変貌するマングローブ林
2 巨大災害とマングローブ
3 七五%の現存量が消えた!
4 深刻だった三大産業の影響
5 森林管理のシステム
6 炭焼きシステムを検証してみたら
第6章……マングローブ二次林は炭素の貯蔵庫となるか
1 二次林の炭素固定機能の研究へ
2 新しい調査地を求めて
3 世界共通式の作成に挑む
4 樹形のパイプモデル
5 二次林の炭素吸収速度
6 まるで炭素の貯蔵庫
ボックス4 「マングローブの成長に海水は邪魔?」
第7章……マングローブの植林と再生に関する問題
1 マングローブ林経営のお手本
2 意外に難しいマングローブの植林
3 タネ不足が起こる
4 水流散布の意外な性質
5 標高の僅差で苗の運命が決まる
6 植林密度と間伐の問題
第8章……二次林世界の再構築
1 原生林の死
2 再訪、三三年後のハッサイカオ
3 何年待つと原生林は甦るか
4 後戻りしない自然
5 二次林世界の再構築
ボックス5 「生物多様性考」
おわりに
引用文献
用語解説
索引