地域研究のフロンティア6
脱新自由主義の時代? 新しい政治経済秩序の模索
価格:3,520円 (消費税:320円)
ISBN978-4-8140-0103-3 C3331
奥付の初版発行年月:2017年03月 / 発売日:2017年04月上旬
経済システムの崩壊とハイパーインフレを緊急に克服するという意味では,ネオリベラリズムは一部の地域,特に南米と東欧で一定の成功を示した。しかし,その重篤な副作用としての格差の拡大固定,民主主義の形骸化や人間的な社会関係の喪失は,強く批判されている。ネオリベラリズムとは世界史にとって何だったのか。現場から検証する。
仙石 学(センゴク マナブ)
1964年生 北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター教授
比較政治学,中東欧比較政治経済専攻
最近の業績は「動揺するヨーロッパ —中東欧諸国はどこに活路を求めるのか?」村上勇介・帯谷知可編『融解と再創造の世界秩序』(青弓社,2016年),『ネオリベラリズムの実践現場 —中東欧・ロシアとラテンアメリカ』(村上勇介と共編)(京都大学学術出版会,2013年)他。
目次
はしがき
序章 「ネオリベラリズム」の後にくるもの[仙石 学]
Ⅰ なぜいま再び「ネオリベラリズム」なのか ——経済の選択と政治の選択
Ⅱ 新興民主主義諸国における「ネオリベラリズム」後の「ネオリベラリズム」?
Ⅲ 本書の構成
第1章 「ポストネオリベラル」期の年金制度?
——東欧諸国における多柱型年金制度の再改革[仙石 学]
Ⅰ 東欧諸国における年金制度の再改編 ——「ポスト」ネオリベラル型の年金制度?
Ⅱ 第2次年金制度改編の背景と方向性
Ⅲ 基金型年金制度とリベラル系政党の対応
Ⅳ 「ポストネオリベラリズム期」における混迷?
第2章 危機意識に支えられるエストニアの「ネオリベラリズム」[小森宏美]
Ⅰ 依然として「ネオリベラリズム」なのか?
Ⅱ 改革党の躍進とその全盛期
Ⅲ エストニア政治の不安的な側面
Ⅳ 限られた選択肢の中での安定
第3章 ネオリベラリズムと社会的投資
——チェコ共和国における家族政策,教育政策改革への影響とその限界
[中田瑞穂]
Ⅰ ネオリベラリズム,社会的投資戦略に基づく社会改革の試みと限界
Ⅱ チェコの家族政策・教育政策
Ⅲ EUのリスボン戦略とOECD
Ⅳ EU加盟以降の改革の試みと政党間対立
Ⅴ ハイブリッドレジームにおける歴史の呪縛
第4章 スペイン・ポルトガルにおける新自由主義の「奇妙な不死」
——民主化と欧州化の政策遺産とその変容[横田正顕]
Ⅰ 新自由主義の強靭性
Ⅱ 政党間競争のダイナミクス
Ⅲ 新自由主義的欧州の中のスペイン・ポルトガル
Ⅳ 危機の政治的帰結
Ⅴ 新自由主義の「再埋め込み」?
第5章 ラテンアメリカ穏健左派支持における経済投票
——ウルグアイの拡大戦線の事例[出岡直也]
Ⅰ 「ポストネオリベラル」期ラテンアメリカにおけるネオリベラル的政策の連続・逆転を決めるものとしての経済投票?
Ⅱ ウルグアイの事例の意味
Ⅲ ウルグアイにおける左派政権成立・維持の経緯,および,説明されるべき選挙結果
Ⅳ 拡大戦線票に関連する先行研究からの考察
Ⅴ 2001年と2008年のサーベイ・データによる拡大戦線票の分析
Ⅵ 結論と含意
第6章 ポスト新自由主義期ラテンアメリカの「右旋回」
——ペルーとホンジュラスの事例から[村上勇介]
Ⅰ ポスト新自由主義段階にあるラテンアメリカ
Ⅱ ペルーの「急進左派」勢力の台頭と政権の軌跡
Ⅲ 「右旋回」の構造的背景
Ⅳ ホンジュラスの事例
Ⅴ ポスト新自由主義期の「右旋回」の構造的な背景
索 引