環太平洋地域の移動と人種 統治から管理へ、遭遇から連帯へ
価格:3,960円 (消費税:360円)
ISBN978-4-8140-0248-1 C3036
奥付の初版発行年月:2020年01月 / 発売日:2020年01月下旬
西欧の帝国主義・国民国家は肌の色など身体的特徴を「人種」としてカテゴリー化した。しかし今やさらに先鋭化した人種化が席捲している。文化や生活習慣など見えない差異で線をひく厄介な人種化は、人が複雑に移動し交錯してきた「環太平洋型」といえる。本書は環太平洋型の人種化の史的起源と現状を示し、さらに芸術や対話の場を通してオルタナティブなグローバル化の道を探る。
田辺 明生(タナベ アキオ)
東京大学大学院総合文化研究科教授。東京大学大学院総合文化研究科博士課程中退、博士(学術)。専門は、人類学・南アジア地域研究。主な著作に、『カーストと平等性――インド社会の歴史人類学』(東京大学出版会、2010年)、『現代インド1――多様性社会の挑戦』(共編、東京大学出版会、2015年)、『歴史のなかの熱帯生存圏――温帯パラダイムを超えて』(共編、京都大学学術出版会、2012年)、などがある。
竹沢 泰子(タケザワ ヤスコ)
京都大学人文科学研究所教授。ワシントン大学大学院地域研究研究科博士課程修了、博士(文化人類学)。専門は、人類学・アメリカ研究。主な著作に、『人種神話を解体する』(全三冊、監修・共編著、東京大学出版会、2016年)、Trans-Pacific Japanese American Studies: Conversations on Race and Racializations, University of Hawai'i Press, 2016. 『新装版日系アメリカ人のエスニシティー強制収容と補償運動による変遷』(東京大学出版会、2017年)、などがある。
成田 龍一(ナリタ リュウイチ)
日本女子大学人間社会学部教授。早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了、博士(文学)。専門は、歴史学(近現代日本史)。主な著作に、『「戦争経験」の戦後史――語られた体験/証言/記憶』(岩波書店、2010年)、『近現代日本史と歴史学――書き替えられてきた過去』(中央公論新社、2012年)、『近現代日本史との対話【幕末・維新~戦前編】/【戦中・戦後~現在編】』(集英社、2019年)、などがある。
上記内容は本書刊行時のものです。
目次
序論
Ⅰ 拡大する帝国・国民国家
第1章 遭遇としての植民地主義
――北海道開拓における人種化と労働力の問題をめぐって
[平野克弥]
第2章 植民地統治と「カテゴリー」
――植民地期シンガポールでの治安秩序維持を事例として
[鬼丸武士]
Ⅱ マイノリティたちの遭遇・共感・連帯
第3章 アメリカに渡った被差別部落民
――太平洋を巡る「人種化」と「つながり」の歴史経験
[関口 寛]
第4章 排日から排墨へ
――一九二〇年代カリフォルニア州における人種化経験の連鎖
[徳永 悠]
Ⅲ 政治実践としての記憶と表象
第5章 博物館におけるマイノリティ表象の可能性
――差別と人権の政治学 [吉村智博]
第6章 日系アメリカ人の原爆批評
――戦争の記憶と一九九五年のエノラ・ゲイ展
[内野クリスタル]
第7章 一九九二年ロスアンジェルス蜂起をめぐる表象の政治
――『薄明かり――ロスアンジェルス、1992』と記憶の重層性
[土屋和代]
Ⅳ グローバル化時代の管理と抵抗
第8章 巡礼する人種主義のためのノート [成田龍一]
第9章 ヴァーチャル化する「人種」
――現代インドにおけるデータガバナンスと人種化 [田辺明生]
第10章 「ほどく」「つなぐ」が生み出すマイナー・トランスナショナリズム
――井上葉子とジーン・シンの作品と語りから [竹沢泰子]
あとがき
索引