学術選書090
宅地の防災学 都市と斜面の近現代
価格:2,200円 (消費税:200円)
ISBN978-4-8140-0252-8 C1344
奥付の初版発行年月:2020年04月 / 発売日:2020年04月下旬
大災害の時代、平成……自然の猛威に翻弄される一方で、私達は「人災」の脅威を体験した。谷埋め盛土の緩い地盤、豪雨とともに頻発する地すべり――人の営みで変化した土地がいま牙を剥いている。この時代に、都市づくりと土砂災害の関係史を辿ることこそが防災の基礎になる。江戸から平成までの全国の災害地域史を追うことで、宅地のどこに地すべりの危険は潜んでいるのか、どのようにして斜面災害の芽は生み出されるのかを解き明かし、次の時代の防災を考える。
釜井 俊孝(カマイ トシタカ)
京都大学防災研究所教授。
1957年東京都生。1979年筑波大学卒業(地球科学専攻)。1986年日本大学大学院修了(地盤工学専攻)。民間地質調査会社、通産省工業技術院地質調査所、日本大学理工学部土木工学科助手・専任講師・助教授、京都大学防災研究所助教授などを経て現職。博士(工学)。
【主な著書】
『埋もれた都の防災学—都市と地盤災害の2000年』(京都大学学術出版会、2016年)、『宅地崩壊—なぜ都市で土砂災害が起こるのか』(NHK出版、2019年)、他論文報告多数。
目次
はじめに
序章……近代以前
新地開発
江戸の都市計画と斜面災害
コラム1 坂の文化
第I部 発生と拡大——都市と斜面災害の関係史
第1章……近代都市の試練と復興
富国強兵の遺産
江戸から東京へ
関東大震災——江戸の終焉、住まいは西へ
災後の都市——郊外住宅地の発展
阪神間モダニズムと大土石流
コラム2 山の大震災
第2章……家が買いたい——災害リスクの源流
市中の閑居——戦前の借家暮らし
持ち家社会の源流——占領政策の光と影
第3章……高度経済成長と宅地斜面災害
持ち家社会の発展
崖っぷちの風景
多摩へ——パイプの発見と生田事故
横須賀ストーリー——泥岩の坂道
湘南の変貌——古都鎌倉の内と外
コラム3 都市の地下水
第4章……オイルショック期——谷間の時代の宅地災害
高速成長からのギアチェンジ
戦後初の都市型地震災害——一九七八年宮城県沖地震
長崎の雨——一九八二年の山崩れ
ニュータウンの裏山——一九八五年地附山地すべり
第5章……バブルとその後遺症
爛熟の持ち家社会
この頃の災害——御用邸の街の地すべり
ポスト持ち家社会——過疎化するニュータウン
第II部 新たな危機——深刻化する宅地の斜面災害
第6章……予告された災害の記録
一九九五年兵庫県南部地震——モダン都市の大震災
二〇〇四年新潟県中越地震——全村避難と復興の陰で
二〇〇七年新潟県中越沖地震——中小都市に拡がる宅地崩壊
みちのくの地震と谷埋め盛土地すべり——二〇〇三年、二〇〇八年築館
コラム4 隠された川の行方
第7章……連続する地震災害
二〇一一年東北地方太平洋沖地震——日本が揺れた日
二〇一六年熊本地震——肥後大変
二〇一八年大阪北部地震——予行演習の様な地震
二〇一八年北海道胆振東部地震——ノーマークの災害
コラム5 別荘地と地すべり
第8章……激甚化する豪雨——土砂に流される街
斜面都市広島一九九九、二〇一四
二〇〇〇年東海、二〇〇六年福井、二〇一〇年呉——頻発する極端豪雨災害
二〇一七年三郷町——倒れる擁壁
二〇一八年西日本豪雨——逃げない人々
コラム6 千年盛土の作り方
第9章……新たな公害の予兆——建設残土処理問題
二〇一四年豊能町、二〇一七年岸和田——崩れる「農地」
二〇一三年大津から二〇一八年京都へ——越境する残土
二〇一四年横浜——街角の残土崩壊
急がれる対策
コラム7 緑の力
終章……宅地の未来
歴史に学ぶ
国民の義務と教養
楽しい住まい
建築の力
コラム8 都市開発における成功の条件
おわりに
索引
基礎知識1 崖崩れと地質
基礎知識2 浅層崩壊と深層崩壊
基礎知識3 地すべりと地質
基礎知識4 土砂災害と法律
基礎知識5 宅地と法律
基礎知識6 活断層
基礎知識7 土石流の仕組み
基礎知識8 命を守る地図