体制移行の政治経済学 なぜ社会主義国は資本主義に向かって脱走するのか
価格:3,520円 (消費税:320円)
ISBN978-4-8158-0636-1 C3033
奥付の初版発行年月:2010年03月
歴史的大転換、そして多様なる資本主義へ。—— 中国やヴェトナム、ロシアや中東欧など諸国の比較にもとづき、社会主義の理念と現実、崩壊の理論的根拠、体制移行の戦略と過程、結果と評価、さらには民営化と腐敗の問題や、今後の行方まで、第一人者が幅広い視角から移行20年を徹底検証。
ご承知のとおり、社会主義から資本主義への体制移行が本格的に始まってから約20年が経ちました。なぜ彼らは資本主義へと脱走したのか? 巨大な金融・経済危機が生じたにもかかわらず社会主義の復活がありえないのはなぜか? 体制移行は経済発展とどのような関係にあるのか? 腐敗をかかえる中国はほんとうに移行に成功したと言えるのか? ロシアや中東欧の現在をどう捉えたらよいのか?——第一人者が幅広い視角から、未曾有の歴史的大転換を徹底的に検証した著作です。20世紀の後半から今日までの世界のあり方を考えるうえで、また、近隣を旧(現)社会主義国にかこまれた日本のこれからを考えるうえでも必読の一冊です。
書
目次
第1章 体制移行とは:いくつかの概念的枠組み
はじめに
1 歴史的大転換としての体制移行
2 体制移行と経済発展
3 体制移行を学ぶ意味について
コラム1 体制移行と体制転換
第2章 体制移行の歴史的背景
はじめに
1 社会主義の理想像
2 ロシア革命と国家社会主義
3 戦後社会主義の波及
4 理想と現実のギャップ
5 計画化の実態
6 体制内改革の試み
7 体制移行前の経済的低迷
コラム2 ロシア革命に対する評価:E. H. カーと渓内謙
第3章 体制移行の理論的根拠
はじめに
1 体制移行の原因をめぐって
2 体制内改革:構想の失敗と欠陥
3 体制の持続可能性
4 社会主義経済計算論争
5 計画化モデルの現実的操作性
6 2つの経済体制:資本主義・社会主義収斂論
7 体制移行の蓋然性
コラム3 「市場社会主義論」:ミラーとローマー
第4章 体制移行の過程
はじめに
1 体制移行の契機
2 ショック療法と漸進主義(1):政策的展開の違い
3 ショック療法と漸進主義(2):哲学的、思想的違い
4 ショック療法と漸進主義(3):理論的考察
5 ショック療法と転換不況
6 中国における移行戦略の特徴:増分主義と「計画からの成長」
7 政策順序(シークエンシング)をめぐって
コラム4 ブルスとコルナイ
第5章 体制移行の結果
はじめに
1 体制移行は何をもたらしたのか:経済実績の比較
2 成長パフォーマンスの決定要因
3 制度改革の進展
コラム5 体制と環境問題
第6章 民営化の経済学
はじめに
1 なぜ民営化か
2 民営化のタイプ
3 民営化の経済学的背景
4 民営化の進展
5 民営化の効果にかんする実証研究
6 民営化に対する国民的評価:ロシアの「強盗資本主義」と中国の「官製資本主義」
7 民営化、市場化、制度化
コラム6 民営化と私有化:国鉄の「民営化」を中心に
第7章 体制移行と腐敗
はじめに
1 腐敗とは何か
2 体制移行と腐敗
3 腐敗現象の経済理論的分析
4 腐敗の効果と要因:腐敗にかんする実証的計量分析(サーベイ)
5 抑止、軽減のための政策
コラム7 レフ=ハンチントン仮説とミュルダールの「軟性国家」論
第8章 体制移行の評価
はじめに
1 体制移行をどう評価するか
2 LiTSから見られる人々の体制移行評価
3 他の世界的規模の調査から
4 意識調査から窺えるもの
5 中国と中欧
コラム8 革命と人的犠牲:毛沢東とスターリン
終 章 資本主義に向かって脱走する移行経済国
はじめに
1 移行の終焉?
2 多様なる資本主義
3 2つの経済思想
4 中国の「社会主義市場経済論」
コラム9 イースタリー対サックス
補論1 社会主義経済計算論争再考:ランゲとハイエク
補論2 体制移行の分類学
補論3 腐敗の測定と各種データ