量子論に基づく無機化学 群論からのアプローチ
価格:5,060円 (消費税:460円)
ISBN978-4-8158-0637-8 C3043
奥付の初版発行年月:2010年04月
分子の構造はいかにして決まるのか? 化学反応が自発的に進むかどうかを、どう判定するのか?現代化学の理解に不可欠の群論を、基礎から効率よく身につけながら、無機化学を論理的かつ系統だって学びなおす、まったく新しい教科書。マーカス理論についても詳述。
無機化学と聞くと、往々にして「羅列的だ」とか「没論理的だ」などと思われる方が多いのですが……
そんな無機化学も、「群論」を利用して分子の対称性を考えると、通常の無機化学の教科書では「場当たり的」な説明がなされている現象を系統的に理解・予測できてしまうのです!
「群論はどうも苦手なんだよな……」とご心配の方も大丈夫! まずは必要最低限の群論の知識を初学者にもわかる形で解説し、そのあと具体的に応用していきます。
「群論」という強力な武器でもって、「無機質」な無機化学を「有機的」に解説してしまう、まったく新しい教科書です。
目次
第Ⅰ部 群論の基礎
第1章 群論入門
1-1 対称操作と対称要素
1-2 点群の表記とその例
1-3 ショーンフリース記号とインターナショナル記号の対応
1-4 指標表(character table)の構成と読み方
1-5 既約表現と直積
第2章 指標表の見方と使い方
2-1 指標表に現れる軌道多重度と群軌道の概念
2-2 群軌道の作り方
2-3 数学的演算と指標表
2-4 既約表現と指標表の性質(Ⅰ)
2-5 既約表現と指標表の性質(Ⅱ):ちょっと数学的な関係
第3章 錯体の対称性によって変化する軌道の帰属
3-1 Kugel群とその部分群
3-2 正8面体型錯体よりも低対称な錯体におけるd 軌道分裂
第Ⅱ部 構造とスペクトル
第4章 群論と分子の振動
4-1 基準振動
4-2 赤外分光法とラマン分光法
4-3 分子の基準振動モードの解析
第5章 遷移金属錯体のd-d 吸収スペクトル
5-1 多電子系の合成スピン角運動量と合成軌道角運動量
5-2 遷移金属自由イオンのスペクトル項
5-3 spin factoringによるスペクトル項の導出法と配位子場によるスペクトル項の分裂
5-4 強配位子場(strong field)における項
5-5 中間配位子場における各状態のエネルギー
5-6 低対称場における半定量的取り扱い
5-7 スピン-軌道相互作用
第6章 化学構造を支配する物理学的理論
6-1 MO理論による直接的方法:Walshの方法
6-2 ヤーン-テラー効果と構造変化経路
6-3 2次のヤーン-テラー効果を用いた安定構造の解析法
6-4 2次のヤーン-テラー効果を用いた安定構造解析の具体例
6-5 遷移金属錯体の構造に関する考察
第Ⅲ部 無機化学反応
第7章 無機化学における溶液論
7-1 液体の定義
7-2 溶液に関する理論1:理想溶液/無熱溶液/正則溶液
7-3 溶液に関する理論2:希薄溶液と電解質溶液論
7-4 イオン会合
7-5 反応速度定数のイオン強度依存症
7-6 標準状態の考え方
第8章 溶液内の反応速度論
8-1 反応速度論に関係する用語
8-2 反応速度定数の求め方
8-3 拡散律速反応(diffusion-controlled reaction)
8-4 遷移状態理論
8-5 核磁気共鳴法を用いた化学交換速度定数の測定原理
第9章 電子移動反応とその理論
9-1 外圏型電子移動反応に関するマーカス-ハッシュ理論と外圏活性化自由エネルギー
9-2 内圏活性化自由エネルギー
9-3 二状態理論(two state model)と調和性(harmonicity)
9-4 マーカスの交差関係
9-5 半古典論的拡張
9-6 外圏型電子移動反応の非断熱性
9-7 内圏型電子移動反応に関する理論と非断熱性
9-8 非断熱的電子移動反応とプロトン移動反応の類似性
第10章 化学反応を支配する物理学的理論
10-1 反応の断熱性とそれを保証する条件
10-2 2次のヤーン-テラー効果と反応の活性化エネルギー
10-3 principle of least motion (PLM)
10-4 単分子解離反応
10-5 軌道対称性の要請に基づく反応性の判断
10-6 活性化エネルギーと反応座標に関するより深い考察
10-7 非断熱的反応過程——軌道対称性禁制反応の抜け穴
第11章 溶媒交換反応と配位子置換反応
11-1 反応機構に関する一般論
11-2 理論的なアプローチ
11-3 低対称錯体の反応
付録A 周期表に見られる相対論的効果
付録B 遷移金属錯体に関連する色々な対称性の分子の基準振動モード
付録C 正8面体と正4面体における結晶場分裂エネルギー