外交官の誕生 近代中国の対外態勢の変容と在外公館
価格:6,820円 (消費税:620円)
ISBN978-4-8158-0687-3 C3022
奥付の初版発行年月:2012年02月
科挙官僚の帝国で、いかにして近代外交の担い手は生まれたのか —— 。清末の公使館や領事館の開設はゴールではなく始まりにすぎない。体制外的な 「洋務」 機関たる在外公館を孵化器に、対外交渉を経験し積極的に国際法を援用するなど西洋国際関係を受容していく中から、国際認識や外交観とともに職業外交官が形成されていく過程を、個々の外交交渉のみならず、外交人事の実態を含めて把握することで、中国近代外交の形成が、「伝統」 からの断絶ではなく、連続性において捉えられることを実証的に明らかにした力作。
目次
序 論
第Ⅰ部 清朝在外公館の設立
第1章 清朝による常駐使節の派遣
はじめに
1 バーリンゲーム使節団の派遣
2 海防論議と使節派遣
3 初期の常駐使節と李鴻章
小 結
第2章 清朝による領事館の設立とその特徴
はじめに
1 西洋領事の駐在と清朝の領事観
2 対日関係と領事の派遣
3 華工問題と清朝の対応
4 南洋への領事派遣議論
小 結
第Ⅱ部 1880年代以降における中国外交の変化
第3章 在外華人保護の動きとその限界
—— 駐米公使・張蔭桓の移民問題に関する対米交渉を例として
はじめに
1 ロックスプリングス事件の発生と清朝による 「自禁政策」 の提唱
2 条約締結交渉
3 張蔭桓の在外活動と清末外交
小 結
第4章 清朝外交のイメージの形成
—— 清英 「ビルマ・チベット協定」 (1886年) を例として
はじめに
1 清朝側の対応
2 英国側の思惑
3 李鴻章・オコナー会談
4 「ビルマ・チベット協定」 調印
小 結
第5章 「遠略に勤めざるの誤りを論ず」
—— 薛福成による新しい清朝外交の追求
はじめに
1 滇緬界務交渉
2 薛福成の外交方針とその意味
小 結
第Ⅲ部 「外交官」 の誕生とその特徴
第6章 在外公館における外交人材の養成
—— 日清戦争までを中心に
はじめに
1 洋務と在外公館
2 初期の在外公館
3 清仏戦争後の変化
小 結
第7章 外交制度改革と在外公館
—— 日露戦争後の人事制度改革を中心として
はじめに
1 二つの視点
2 外務部の組織と人事制度
3 日露戦争後の人事制度改革 (1906~07年)
小 結
第8章 「外交官」 たちの国際認識
はじめに
1 英露対立と清朝 —— 銭恂の対外関係研究
2 職業外交官の必要性とその養成方法 —— 呉宗濂の意見書
3 人材登用の新しい動き —— 孫宝琦の果たした役割
4 「外交官」 たちの対外認識 —— 日露戦争後の国際情勢への対応をめぐって
5 「経世家」 と 「外交官」
小 結
補 論 領事館の増設とその意味
—— 陸徴祥によるオランダとの領事館設立交渉を中心に
はじめに
1 蘭印領事館設置交渉 (1908~11年) の発端
2 蘭印華人の国籍問題と 「大清国籍条例」 の制定
3 領事館設置交渉と陸徴祥の方針
小 結
結 論