プルーストと創造の時間
価格:7,260円 (消費税:660円)
ISBN978-4-8158-0754-2 C3098
奥付の初版発行年月:2013年12月
それが存在しない世界に——。科学的な実証知が勃興し、旧来の人文教養が失墜した世紀末の憂鬱の只中で、それでも 「文学に賭ける」 決断を下したプルースト。作家が格闘した、『失われた時を求めて』 誕生以前の文の地形を明らかにすることを通して、その出現の意味を探る労作。
目次
はじめに 文学に賭ける —— マルセル・プルーストの選択
序 章 世紀末の憂鬱 —— 二つの 〈文学的病〉
1 新たなる 「世紀病」 —— 〈書く病〉
2 旧き教養人の愉しみ —— 〈読む病〉
3 二つの 「文学的病」 から瘉えるために
第Ⅰ部 文学の位置 —— 時代といかに闘うか
第1章 文学教養 —— 〈読むこと〉 と 〈書くこと〉 の不純な関係
第2章 〈教養小説〉 を読む方法
1 〈教養〉 から 〈習得〉 へ —— 『失われた時を求めて』 は 〈教養小説〉 か
2 人と作品 —— 〈教養小説〉、あるいは近代批評の自画像の誕生
第3章 マルセル・プルーストの修業時代
第Ⅱ部 小説の可能性
第1章 時代と闘う二つの美学 —— 前衛的であったということ
1 世紀末のゲーテの弟子たち
2 水脈をたどって —— 世紀末からの脱出を図る美学の干渉
第2章 〈鏡映〉 の美学を超えて —— レアリスムとの闘い
1 『シクスティーヌ』、あるいは世紀末小説の鏡
2 ユベールよりももっと先へ —— 『パリュード』
第3章 反=日記あるいは 「文学生活」 批判
1 〈生きること〉 と 〈書くこと〉 の曖昧な関係
2 生という作品
第4章 歴史は物語ではない —— 小説的真実のゆくえ
第Ⅲ部 近代批評と小説 —— 『サント=ブーヴに逆らって』 の射程
第1章 サント=ブーヴの喪が明けて
第2章 テーヌの未完の小説 —— 〈教養小説〉 が不可能になるところ
第3章 サント=ブーヴをパロディ化する
1 「ある朝の思い出」 —— サント=ブーヴ的舞台装置の構築
2 「マルタンヴィルの鐘塔」 考 —— 〈生成小説〉 のミニアチュール
3 錬金術あるいはルモワーヌの夢から醒めるために
第4章 近代 「生成批評」 のその後
第Ⅳ部 プルースト小説の地平
第1章 『ジャン・サントゥイユ』 から 『失われた時を求めて』 へ —— 〈書けない主人公〉 の
誕生
第2章 「天職の物語」 の終わりかた
第3章 『見出された時』 を読む —— 作家はいつ書き終えるか
終 章