「アメリカの道具」 「休眠期」 といった否定的通説を斥け、ブレトンウッズ期IMFにおける自律的な制度・機構・政策体系の成立と、戦後国際金融秩序に及んだ広範な影響を解明、主要資本主義国の対応もふまえた包括的な記述により、毀誉褒貶を超えた一貫したIMF像を初めて示した画期的成果。
目次
序 章 IMFと戦後国際金融秩序
1 本書の視角
2 固定相場制時代のIMFのシステムとその運営
3 本書の概要
第Ⅰ部 IMFの成立と発展
第1章 IMFの成立 —— ブレトンウッズ会議までの議論と英米交渉
はじめに —— 問題の所在
1 基本的対抗軸はどこにあったのか
2 ケインズ案・ホワイト案の形成過程
おわりに
第2章 IMFの初期政策形成 —— NACの現場
はじめに —— ブレトンウッズ機関とNAC
1 IMF開業期のガバナンスと英米金融協定の破綻 (1945〜47年)
2 欧州復興計画の進展とIMF (1948〜50年)
3 冷戦のグローバル化と柔軟路線への転換 (1950〜52年)
おわりに
第3章 制度化の進展と国際環境 —— 1950年代のIMF
はじめに
1 1950年代前半における制度化の進展
2 ヤコブソンの就任と制度化の達成
3 1960年代初めのIMF最盛期における矛盾
おわりに
第4章 IMFの自由化政策路線 —— 対英政策の分析
はじめに
1 政策路線の形成
2 1950年代前半の対英政策
3 1950年代後半の対英政策
4 為替自由化の進展と国際通貨システムの変容
第5章 西欧通貨の交換性回復と国際流動性調達 —— IMFとキー・カレンシー
はじめに
1 「共同アプローチ」 —— ポンドの交換性回復
2 ランドール対外経済政策委員会答申
3 IMFによる交換性回復支援
4 FRBのBA市場振興策
5 スエズ危機と流動性
おわりに
第6章 1960年代の国際流動性問題 —— IMF理事会における議論
はじめに
1 国際通貨改革論争と国際流動性問題
2 IMF理事会議事録における国際流動性問題の展開
おわりに —— 議事録分析の成果と含意
第Ⅱ部 IMFと国民経済
第7章 IMFとフランス —— ブレトンウッズ秩序の多元性
はじめに —— 問題の所在
1 ブレトンウッズ協定とフランス —— クオータとIMF平価の設定
2 フラン切下げ —— フランスの独自路線とIMF・NAC
3 IMFの対仏14条国コンサルテーション —— 対立と妥協の争点
おわりに
第8章 IMFとドイツ —— 通貨危機と為替相場政策
はじめに
1 IMF加盟当初のドイツ
2 IMFとマルク切上げ
3 IMFとマルク交換性回復
おわりに
第9章 IMFとイタリア —— 貿易自由化と交換性回復への途
はじめに
1 イタリアのIMF加盟 (1944~47年)
2 通貨安定化 (1947年夏)
3 イタリアの変動相場制をめぐるIMFとの論争
4 公的準備の再建と貿易自由化への途
5 IMFコンサルテーションとイタリアの政策運営
おわりに
第10章 IMFとカナダ —— 変動相場制から固定相場制へ
はじめに
1 カナダの為替レートと為替制度 (1854~1962年)
2 1950年の変動相場制移行の要因
3 IMFの反応
4 成長率低下と失業率悪化 (1957~60年)
5 カナダの固定相場制復帰 (1961~62年)
おわりに
第11章 日本のIMF加盟と戦前期外債処理問題 —— ニューヨーク外債会議と日米・日英関係
はじめに
1 日本のIMF加盟と外資導入構想
2 戦前期外債の未払い問題と平和条約締結後の対応
3 ニューヨーク外債処理会議における議論 —— 通貨選択約款問題を中心に
おわりに
終 章 IMFの変容をどう理解するか —— ブレトンウッズ体制崩壊の捉え方
1 検討の結果みえてきたもの
2 IMFの役割とは
3 ブレトンウッズ体制はなぜ崩壊したのか