宗主権の世界史 東西アジアの近代と翻訳概念
価格:6,380円 (消費税:580円)
ISBN978-4-8158-0787-0 C3022
奥付の初版発行年月:2014年11月
現代の国際秩序を問い直す——。「宗主権」 とは何か。西洋人が多用したこの不可思議な概念の背後に歴史的大転換を読み解くことで、東西の多元的な文化圏を統合したオスマン帝国と清朝の 「普遍性」 の解体をはじめて包括的に捉え、現在までつづく世界秩序の形成過程を解明した画期的著作。
目次
導 論 世界史と宗主権
第Ⅰ部 オスマン秩序体系の転換と西洋
第1章 オスマン帝国における附庸国と 「宗主権」 の出現 —— ワラキアとモルドヴァを例として
はじめに
1 前近代におけるオスマン宗主権とワラキア・モルドヴァ
2 転換点としての18世紀と 「宗主権」 の登場
おわりに
第2章 主権と宗主権のあいだ —— 近代オスマンの国制と外交
はじめに
1 近世外交
2 「特権」 の時代の対外交渉
3 主権と宗主権
おわりに
第Ⅱ部 西方から東アジアへ
第3章 宗主権と国際法と翻訳 —— 「東方問題」 から 「朝鮮問題」 へ
はじめに
1 ホイートンとsuzerainty
2 『萬國公法』 から 『公法會通』 へ
3 「朝鮮問題」 と 「上國」 概念
おわりに
補 論 東西の君主号と秩序観念
はじめに —— 「君主号」 が示すもの
1 オスマン帝国における君主号 —— 17世紀まで
2 君主号の修正 —— 18世紀以降
3 西欧の君主号と漢語の君主号
4 君主号の定着と漢語圏の変貌
第4章 ロシアの東方進出と東アジア —— 対露境界問題をめぐる清朝と日本
はじめに
1 ロシアの伝統的対清関係の成立
2 日本へのロシア接近と北方領域をめぐる言説
3 アロー戦争時の露清境界交渉をめぐる概念
4 日本の条約交渉と領土経営
5 ロシアの衝撃と日・清の岐路
第Ⅲ部 近代日本と翻訳概念
第5章 Diplomacyから外交へ —— 明治日本の 「外交」 観
はじめに
1 「外交」 と “diplomacy” の語源と変遷
2 「外国交際」 と福沢諭吉
3 朝鮮問題と 「外交」 観の変化
おわりに
第6章 日清開戦前後の日本外交と清韓宗属関係
はじめに
1 日清戦争前の東アジアと日本外交
2 朝鮮内政改革案による 「宗主国」 の争点化
3 朝鮮独立論による清韓宗属関係の否定
4 朝鮮内政改革案と朝鮮独立論のその後の展開
おわりに
第Ⅳ部 翻訳概念と東アジアの変貌
第7章 モンゴル 「独立」 をめぐる翻訳概念 —— 自治か、独立か
はじめに
1 「独立」 を何というか?
2 露蒙協定、蒙蔵条約における 「自治」、「独立」
3 露中宣言における 「宗主権」 と 「自治」
4 キャフタ会議における 「自治」 と 「独立」
おわりに
第8章 チベットの政治的地位とシムラ会議 —— 翻訳概念の検討を中心に
はじめに
1 清朝崩壊後のチベットの政治的地位をめぐって
2 シムラ会議における翻訳概念
3 シムラ条約の調印
おわりに
第Ⅴ部 東西新秩序のゆくえ
第9章 中国における 「領土」 概念の形成
はじめに
1 「属地」 概念
2 「領土」 概念
おわりに
第10章 宗主権と正教会 —— 世界総主教座の近代とオスマン・ギリシア人の歴史叙述
はじめに
1 二つの中心
2 独立と自治のあいだ
3 反スラヴのエキュメニズム
4 特権と平等
5 帝国の残影
おわりに