横浜・神戸に代表される国際貿易港から全国の中小港湾まで、帝国日本を世界と結んだ海港はいかにして形成されたのか。開港から戦後に至る史的展開を示すとともに、港湾整備の知られざる難題を剔出、日本の交通インフラ整備が抱える政治的課題をも浮き彫りにしたわが国初の近代海港史。
目次
序 章 近代海港史とは何か
第1章 日本における海港行政の始動 —— 維新官僚と旧条約・殖産興業
1 旧条約と開港行政
2 殖産興業と海港修築 —— 野蒜・宇品・門司
3 海港整備をめぐる競合 —— 第一次横浜築港
小 括
第2章 世界交通網の拡充と日本の海港 —— 地方長官・議会政治家と海港論
1 海港論の展開 —— 海港配置と地域社会
2 大阪築港の着手 —— 内務省と地域社会
3 貿易港制度の変更 —— 大蔵省と地域社会
小 括
第3章 改正条約の実施と海港行政 —— 大蔵官僚の理想
1 海港行政をめぐる三省対立
2 海港行政の再編 —— 第二次横浜築港と第一次神戸築港
小 括
第4章 緊縮財政下の海港修築 —— 地方実業家の取り組み
1 内務省による海港整備
2 市営築港の縮小 —— 大阪築港打ち切り問題
3 民営港の積極的展開 —— 北九州諸港の整備
小 括
第5章 政党内閣期の海港行政 —— 内務官僚による統率
1 地方港整備の展開 —— 伏木・境・敦賀
2 港湾協会の設立とその活動
小 括
第6章 戦時体制と海港行政 —— 逓信官僚の挑戦
1 1930年代における海港問題 —— 日本海ルートと産業振興
2 戦時体制から戦後へ
小 括
終 章 国民国家の時代の海港