人間知性の歴史のなかで、宗教・形而上学から科学まで様々な形をとって展開してきた 「世界の複数性」 論 ——。本書は、天文学的複数性論を軸にその水脈をつぶさにたどり、宇宙に関する知的考察を方向づけてきたこの世界観=「巨大仮説」 の意義を初めて明らかにする。自己中心性に根ざす単一性論が促進してきた 「近代」 を問い直す圧倒的な力作。
目次
第1章 複数性の時代
1 「空々茫々たる廣き天に」
2 明治初期の宇宙人像
3 江戸時代のニュートン主義と世界の複数性
4 ミクロとマクロの複数世界
第2章 複数世界論の再生
1 ヨーロッパ思想史上の複数世界論
2 近代の複数世界論
第3章 形而上学、科学、自然神学 —— 17世紀
1 天文学的複数性論の成立
2 王政復古後の天文学的複数世界論
3 「啓蒙」 と比較宇宙生命論の起源
第4章 ニュートン主義と地球外生命存在説 —— 18世紀
1 天文学と自然神学
2 複数世界論と理神論
3 道徳科学と複数性論
4 近代複数性論のテクストと議論
5 天文学的複数性論とニュートン主義
第5章 複数世界と理性
1 ニュートン主義と不可知の世界
2 コモン・センスと 「無知の知」
3 複数世界と 「人間精神」 の研究
第6章 複数性論から単一性論へ —— 19世紀
1 宇宙と自己中心性
2 自然神学と進化
3 複数性論の行方
4 単一性論の時代
エピローグ 複数性論の意味と意義