帝国から開発援助へ 戦後アジア国際秩序と工業化
価格:5,940円 (消費税:540円)
ISBN978-4-8158-0865-5 C3022
奥付の初版発行年月:2017年02月 / 発売日:2017年02月上旬
アジアの経済的再興を可能にしたものとは。コロンボ・プランなどイギリスの政策構想を手がかりに、先進国からの所得移転が果たした役割を、戦前以来の連続性のもとで解明、アジアの主体的対応も含めた戦後開発援助の新たな全体像を描き出し、グローバルヒストリーの新機軸を示す。
秋田 茂(アキタ シゲル)
1958年 広島県に生まれる
1985年 広島大学大学院文学研究科博士後期課程中退
大阪外国語大学助教授などを経て、
現 在 大阪大学大学院文学研究科教授、博士(文学)
著 書 『イギリス帝国とアジア国際秩序』(名古屋大学出版会,2003年,第20回大平正芳記念賞)
『イギリス帝国の歴史』(中公新書,2012年,第14回読売・吉野作造賞)
『アジアからみたグローバルヒストリー』(編著,ミネルヴァ書房,2013年)他
目次
序 章 経済援助・開発とアジア国際経済秩序
1 本書の課題 —— 脱植民地化、冷戦と経済開発
2 1930年代からの連続性 —— スターリング残高の蓄積とスターリング圏
3 1950~60年代アジアの国際経済秩序と経済開発・開発主義
4 戦後アジアの経済開発の類型
第Ⅰ部 コロンボ・プランからインド援助コンソーシアムへ
第1章 脱植民地化とインドのコモンウェルス残留
1 なぜインドはコモンウェルスに残留したのか
2 インドとコモンウェルス、スターリング圏の相互依存
3 ネルーの外交政策と対英観の転換
4 現実主義と歴史認識、経済協力
第2章 コロンボ・プランの変容とスターリング圏
1 コロンボ・プランの変容 —— 資金援助から技術協力へ
2 1950年代末の経済開発援助とスターリング圏
3 「コロンボ・プランの将来」 —— コモンウェルス経済開発計画
4 コロンボ・プラン10周年 —— 東京とクアラルンプール
5 イギリスの開発援助政策の転換点 —— 1958年
第3章 インド援助コンソーシアムと世界銀行
1 五カ年計画と経済援助
2 コロンボ・プランからインド援助コンソーシアムへ
3 ソ連の 「経済的攻勢」 とインドの輸入代替工業化
4 インド援助コンソーシアムの変容
5 山積する課題 —— インド経済開発計画と経済援助の問題点
第4章 1960年代の米印経済関係 —— PL480 と食糧援助問題
1 インドの経済開発と経済援助
2 アメリカの対印経済援助と PL480
3 インド食糧危機とアメリカの経済援助
4 世界銀行主導の食糧コンソーシアムとその余波
5 「緑の革命」 の起源とインド食糧援助、世界銀行
第Ⅱ部 東アジアの開発主義と工業化
第5章 1950年代の東アジア国際経済秩序とスターリング圏
1 アジア国際秩序とイギリス帝国
2 オープン勘定支払協定から対日スターリング支払協定へ —— 1948~51年
3 戦後日本とスターリング圏の相互依存 —— 1951~54年
4 スターリング支払協定の変容と多角主義への移行 —— 1954~57年
5 スターリング圏と東アジア経済秩序の変容
第6章 東アジアの開発主義と経済援助 —— 台湾・韓国・香港
1 東アジアの工業化と開発主義
2 台湾の開発主義とアメリカの軍事・経済援助
3 韓国の開発主義と開発援助 —— 日米の役割分担
4 香港の再植民地化と輸出志向型工業化の展開
5 輸出志向型工業化の展開と二つの類型
第7章 開発主義とシンガポールの工業化
1 アジアの工業化と開発主義の出現
2 歴史的背景 —— 自由貿易体制とシンガポール
3 シンガポールの工業化戦略 —— 外資依存・輸出志向型工業化
4 外資導入に依存した国家主導の開発主義
終 章 経済開発から東アジアの経済的再興へ
1 「アジアの開発の時代」 の到来
2 アジアのイニシアティヴと開発主義
3 多国間援助と1960年代のアジア国際経済秩序
4 1970年代以降への展望 —— 東アジアの経済的再興 (東アジアの奇跡)