移民受入の国際社会学 選別メカニズムの比較分析
価格:5,940円 (消費税:540円)
ISBN978-4-8158-0867-9 C3036
奥付の初版発行年月:2017年02月 / 発売日:2017年03月上旬
誰を受け入れ、誰を排除するのか —— 移民受入をめぐる風景を一変させた政策と実態の変化を、古典的移民国、EU諸国、後発受入国の比較により鮮明に捉え、排除と包摂のメカニズムをトータルに示す。世界を震撼させる 「移民問題」 を冷静に考える確かな視点を得るために。
小井土 彰宏(コイド アキヒロ)
1958年 大阪市に生まれる
1992年 東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学、
ジョンズ・ホプキンズ大学大学院社会学部博士課程修了
北海道大学文学部助教授、上智大学国際関係研究所助教授を経て、
2001年 一橋大学社会学部助教授
現 在 一橋大学大学院社会学研究科教授、Ph. D. in Sociology
著 書 『移民政策の国際比較』(編著、明石書店、2003年)他
飯尾 真貴子(イイオ マキコ)
一橋大学特別研究員。
塩原 良和(シオバラ ヨシカズ)
慶應義塾大学法学部教授。著書に『変革する多文化主義へ――オーストラリアからの展望』(法政大学出版局、2010年)他。
堀井 里子(ホリイ サトコ)
国際教養大学国際教養学部助教。
柄谷 利恵子(カラタニ リエコ)
関西大学政策創造学部教授。著書に『移動と生存――国境を越える人々の政治学』(岩波書店、2016年)他。
伊藤 るり(イトウ ルリ)
一橋大学大学院社会学研究科教授。著書に『新編 日本のフェミニズム9 グローバリゼーション』(共編著、岩波書店、2011年)他。
久保山 亮(クボヤマ リョウ)
専修大学人間科学部兼任講師。
昔農 英明(セキノウ ヒデアキ)
明治大学文学部専任講師。著書に『「移民国家ドイツ」の難民庇護政策』(慶應義塾大学出版会、2014年)。
宣 元錫(ソン ウォンソク)
中央大学総合政策学部兼任講師。著書に『異文化間介護と多文化共生――誰が介護を担うのか』(共編著、明石書店、2007年)。
上林 千恵子(カミバヤシ チエコ)
法政大学社会学部教授。著書に『外国人労働者受け入れと日本社会――技能実習制度の展開とジレンマ』(東京大学出版会、2015年)。
鈴木江理子(スズキ エリコ)
国士舘大学文学部教授。著書に『日本で働く非正規滞在者――彼らは「好ましくない外国人労働者」なのか?』(明石書店、2009年)。
上記内容は本書刊行時のものです。
目次
序 章 選別的移民政策の時代
第Ⅰ部 古典的移民国の新たな選別戦略
第1章 アメリカ合衆国Ⅰ
高度技能移民政策の起源と変貌 —— H-1B ビザの神話を超えて
はじめに
1 人種主義的選別から 「普遍主義的」 選別へ
2 「高度技能ビザ (H-1B)」 の歴史的構築とその機能
3 グローバル IT 産業と越境的労働利用システムの構造化
4 高度技能移民をめぐる政策論争と改革の焦点
5 国内に頭脳を求めて —— 非正規移民第2世代からの選別
おわりに
第2章 アメリカ合衆国Ⅱ
非正規移民1150万人の排除と包摂 —— 強制送還レジームと DACA プログラム
はじめに
1 米国移民政策の歴史的背景
2 強制送還レジームの構築
3 特定移民層に対する暫定的な権利付与プログラム
4 国境を超える強制送還レジーム
おわりに
第3章 オーストラリア
「線」 の管理から 「面」 の管理へ —— 技能移民受入・庇護希望者抑留と空間性
はじめに —— 出入国管理における空間性の活用
1 オーストラリアの移住者受入政策
2 技能移民受入における選別性の強化と空間的配置の最適化
3 「コミュニティ・ベース」 の庇護希望者抑留
おわりに —— グローバリズムと出入国管理政策
第Ⅱ部 EU 諸国の受入政策の転換
第4章 EU
「国境のないヨーロッパ」 という幻想 —— EU 共通移民政策の展開
はじめに
1 シェンゲン・エリアの誕生と基本的制度枠組み
2 ブルーカード指令による高度技能移民の受入
3 EU 域外国境管理政策とフロンテクスの活動
4 近年の大規模な難民の到来と EU の対応
おわりに —— 国境のないヨーロッパという幻想
第5章 イギリス
ポイント・システム導入と民営化の進展 —— 敵対的選別化への道
はじめに
1 ポイント・システムの展開
2 入国管理制度の評価
3 敵対的選別化のための入国管理制度との交差・連関の中で
おわりに
第6章 フランス
共和国的統合コンセンサスへの挑戦とその帰結
—— サルコジ政権下の 「選択的移民」 政策
はじめに —— 戦後フランスの移民政策と 「選択的移民」
1 「選択的移民」 と 「統合コンセンサス」 への挑戦
2 高度技能移民と 「労働力不足職種」 リスト
3 移民の地位の不安定化 —— 家族移民、庇護申請者、非正規滞在者
おわりに —— 静かなパラダイム・シフトと移民政策の民主的統御
第7章 ドイツⅠ
移民政策のパラダイム・シフト —— 国民福祉国家から国民競争国家へ
はじめに —— 移民制御法施行からの10年
1 欧州諸国の選別的移民政策の出発点と要因
2 高度・技能人材獲得へ —— 2004年法以後の移民政策改革
3 労働市場保護から市場のプロモーターへの変貌 —— 人材獲得戦略
おわりに —— 「移民国家」 への道を歩むドイツ?
第8章 ドイツⅡ
難民受入をめぐる移民政策の変容 —— 排除と包摂のはざまで
はじめに
1 エスニック・ネーションからシビック・ネーションへ
2 エスニック・ネーションにおける難民の包摂と排除の論理
3 市民的統合における難民の包摂的な排除
おわりに
第9章 スペイン
新興移民受入国のダイナミズム —— なぜ2000年代を代表する移民国家となったのか
はじめに
1 スペインの経済発展と人間の移動の概観
2 スペインの政治体制変動と移民政策の形成
3 「複合レジーム」 としての移民規制・受入体制とその選別性
4 国境管理の実態 —— カナリア諸島と地中海域
5 社会統合政策の形成・実践・変容
おわりに
第Ⅲ部 後発受入国の戦略形成
第10章 韓国
政府主導の 「制限的開放」 移民政策の形成 —— 人権と競争力の交差
はじめに
1 移民政策の創設期 —— 冷戦終焉、民主化、新自由主義
2 民主化レジームと移民政策の転換
3 外国人労働者需給システムの運営主体の変更
4 「人材誘致」 重視の移民政策
5 短期就労者と定住者の選別
おわりに —— 「分離」 とインセンティブ
第11章 日本Ⅰ
高度外国人材受入政策の限界と可能性 —— 日本型雇用システムと企業の役割期待
はじめに
1 高度外国人材受入政策における日本の位置づけ
2 高度外国人材受入政策の展開 —— IT 技術者と留学生
3 高度外国人材優遇のためのポインド制度
4 企業の高度外国人材受入
5 日本企業の高度外国人材への役割期待
おわりに —— 残された課題
第12章 日本Ⅱ
外国人選別政策の展開 —— 進行する選別的排除
はじめに
1 形式的排除の時代の非正規滞在者
2 移民/外国人選別時代の非正規滞在者
3 管理強化と排除の拡大
おわりに —— 「移民政策ではない」 外国人政策
終 章 選別的移民政策の国際比較
はじめに
1 高度技能移民政策の多様性
2 選別的包摂と排除の重層構造
おわりに