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征服=入植運動・封建制・商業辺境の生成

辺境の生成 征服=入植運動・封建制・商業

A5判 612ページ 上製
価格:10,780円 (消費税:980円)
ISBN978-4-8158-0962-1 C3022
奥付の初版発行年月:2019年10月 / 発売日:2019年10月下旬

内容紹介

とめどなく生み出される無数の「辺境」――そこではなにが生起するのか。中世イベリア半島を舞台に、従来のレコンキスタの図式を排して、征服=入植運動、封建制、商業の展開プロセスを実証的に解明。遍在する「辺境」から、ラテン・ヨーロッパをも見通す新たなモデルを導き出す。

前書きなど

ラテン・ヨーロッパは、一般に中世盛期と呼ばれるおおよそ一〇〇〇年から一三〇〇年におよぶ時間的枠組みのなかで、急激な社会経済的成長を遂げるとともに、活発な征服=入植運動によってその周縁諸地域をも政治的、社会経済的、文化的に統合し、急速に拡大を遂げつつ形成された。その過程で統合された周縁諸地域、すなわち「辺境」には、ウェールズやアイルランド、バルト海沿岸やスカンディナヴィア、東ヨーロッパ、さらには地中海南ヨーロッパといった空間が含まれるが、互いに隔絶したそれらの空間では、ローマ・カトリック教会管区の組織的導入、封建的エリートの進出、入植にともなう自治都市や相対的に自由な村落の創出など、多様な差異を示しながらもおおむね類似の経験を共有したと考えられている。

本書では、ラテン・ヨーロッパの「辺境」とみなされているそれら諸地域のなかでも、アンダルス(al-Andalusイスラーム・スペイン)と対峙し、レコンキスタと呼ばれる軍事的征服運動が繰り広げられたことで知られるイベリア半島をとりあげる。もっとも、これらの歴史的事象をもって語られること自体、イベリア半島があくまでもラテン・ヨーロッパの「辺境」であって、本来はラテン・ヨーロッパの純粋な構成要素とみなされていないことを端的にものがたっている。そもそもイスラームと対峙する「辺境」(Frontera)や、わが国では「国土回復運動」という訳語があてられる、一九世紀初頭以来の造語であるレコンキスタ(Re-conquista)「再=征服」)これにつづく入植……

[「序章」冒頭より/注は省略]

著者プロフィール

足立 孝(アダチ タカシ)

1970年 愛知県に生まれる
1999年 名古屋大学大学院文学研究科博士後期課程修了
弘前大学人文学部准教授などを経て
現 在 広島大学大学院文学研究科准教授、博士(歴史学)
訳 書 メノカル『寛容の文化』(名古屋大学出版会、2005年)

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序 章
1 「辺境」と征服=入植運動
2 「辺境」とはなにか――史料概念・空間認知・実態
3 無数の「中心」、無数の「辺境」
4 封建的空間編成の展開モデルと征服=入植運動

第I部 アラゴン北部における封建的空間編成の展開

第1章 ウエスカ地方の城塞・定住・空間編成
1 城塞と国王ホノール
2 征服=入植運動と城塞集落の形成
むすび

第2章 シンカ川中流域の城塞・定住・空間編成
1 城塞と国王ホノール
2 アルムニア
3 王権とインカステラメント
4 競合する入植運動
むすび

第3章 都市ウエスカの定住と空間編成
1 史料の時間的・空間的ギャップ
2 市域の系譜論
3 都市的定住空間の形態生成
4 領域の空間的布置と土地利用
むすび

第II部 アラゴン南部における封建的空間編成の展開

第4章 13世紀の「辺境」と封建的空間編成の展開
1 理念と現実
 (1)ベルチーテ
 (2)アルカニス
2 騎士団の進出
 (1)テンプル騎士団領(アルファンブラ、カステリョーテ、カンタビエハ、ビジェル)
 (2)聖ヨハネ騎士団領(アリアーガ)
 (3)カラトラーバ騎士団領(アルカニス)
 (4)サンティアゴ騎士団領(モンタルバン)
3 「辺境」の生成と封建的空間編成の展開
むすび

第5章 テンプル騎士団領の定住・流通・空間編成
1 城塞ビジェルとその属域
2 コンセホと属域管理
3 組織的集村化と域内集住村落の形成
 (1)リブロス
 (2)リオデバ
 (3)ビジャスタル
4 域内分業と散居定住
5 生産物取引
6 食糧の域内流通と域外輸出
7 木材の域外輸出
むすび

第6章 サラゴーサ司教領の定住・流通・空間編成
1 土地分配・入植・集村化
2 プエルトミンガルボのコンセホ
3 市場開設特権
4 小麦取引
5 小麦売主・買主の動態分析
6 毛織物取引
7 羊毛生産の拡大と国際商業
むすび

終 章 「辺境」の遍在
1 征服=入植運動
2 封建制
3 商 業

補論1 オリジナルとカルチュレール
1 文書保管形式の差異
2 ボクロン家
3 イサーク家
4 ウエスカ司教座聖堂教会とイエ・アーカイヴズ

補論2 カルチュレールと公証人登記簿
1 『ビジェル緑書』
2 『1277年から1302年までのビジェル(テルエル)の公証人マニュアル』
3 カルチュレール=財産目録

補論3 公証人登記簿と商品交換
1 公証人制度の確立
2 プエルトミンガルボの公証人登記簿
3 債務弁済書式と商品交換
4 債務弁済書式と不在の買主

あとがき

参考文献
略号一覧
図表一覧
索 引


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