奴隷貿易をこえて 西アフリカ・インド綿布・世界経済
価格:6,380円 (消費税:580円)
ISBN978-4-8158-1037-5 C3022
奥付の初版発行年月:2021年10月 / 発売日:2021年10月中旬
豊かな消費市場として発展を始めたアフリカが、18・19世紀の世界経済の興隆に果たした役割とは。奴隷貿易史観をこえ、現地の動向からインド綿布への旺盛な需要がもたらしたインパクトを実証、グローバル化の複数の起源を解き明かし、西アフリカの人々の主体的活動に新たな光をなげかける。
1750年から1850年にかけて、世界は一連の政治的経済的変容を経験した。歴史家はこのダイナミックな時代について、近代世界をもたらした「革命の時代」(age of revolutions)と呼んで議論している。そのなかでも、経済史研究者にとってもっとも重要な出来事は、イギリスの産業革命である。その理由は、工業化こそが、イギリス経済を資本集約的な発展に導き、世界の他地域との所得格差――「大分岐」――を引き起こした、と考えられているからである。近年、グローバル・ヒストリー研究の高まりのなかで、経済史研究者は、工業化の問題をより広い視野のもとで構想するようになった。なぜ最初の工業化は、18世紀半ばのイギリスで起こり、同時代の中国やインドで起こらなかったのか、といった問題である。この問題をめぐって、経済史研究では、新しいエネルギー源(石炭)、有用な知識、綿工業の機械化、貿易の役割など、さまざまな要素が検討されてきた。それに続く19世紀には、工業化は大陸ヨーロッパ……
[「序章」冒頭より/注は省略]
小林 和夫(コバヤシ カズオ)
1985年生。2016年、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス・アンド・ポリティカル・サイエンス(LSE)にてPhD(経済史)取得。日本学術振興会特別研究員(PD)、大阪産業大学経済学部専任講師を経て、現在、早稲田大学政治経済学術院准教授。著書、Indian Cotton in Textiles in West Africa: African Agency, Consumer Demand and the Making of the Global Economy, Cham: Palgrave Macmillan, 2019
上記内容は本書刊行時のものです。
目次
地図
序 章 西アフリカとインド綿布からみるグローバル経済史
はじめに
1 西アフリカのエージェンシー再考
2 工業化以前の世界におけるインド綿布
3 西アフリカと南アジアの経済関係史
4 主要史料
5 本書の構成
第1章 西アフリカの海上貿易
――大西洋奴隷貿易から「合法的」貿易への移行
はじめに
1 大西洋奴隷貿易と西アフリカのジハード
2 19世紀前半の西アフリカからの輸出品
3 19世紀前半の西アフリカへの輸入品
おわりに
第2章 セネガル川下流域のインド綿布ギネ市場
――19世紀前半における消費主導の貿易
はじめに
1 ギネとは何か
2 なぜインド製ギネは好まれたのか
3 セネガル川下流域の商業ネットワーク
4 貨幣としてのギネ
おわりに
第3章 西アフリカ向けインド綿布の調達
――英仏による管理と投資
はじめに
1 インド綿布調達再考
2 管理制度と世界情勢――イギリスの政策
3 ポンディシェリの復興と紡績への投資――フランスの政策
おわりに
第4章 仲介者としてのヨーロッパ商人と西アフリカ
――流通における奴隷貿易以降の変化と連続性
はじめに
1 奴隷からパームオイルへ――イギリス商人と西アフリカ
2 ボルドーの進出――フランス商人と西アフリカ
おわりに
終 章 西アフリカと近代世界経済の興隆
はじめに
1 19世紀西アフリカの経済発展
2 アフリカ、帝国、そしてグローバル・ヒストリー
3 近代世界経済の興隆と多元的グローバル化
参考文献
あとがき
図表一覧
索引