オスマン帝国の世界秩序と外交
価格:5,940円 (消費税:540円)
ISBN978-4-8158-1117-4 C3022
奥付の初版発行年月:2023年02月 / 発売日:2023年03月中旬
イスラム的世界帝国の
理念・現実・変容
ナショナルな主権国家とは異なる秩序観に基づき、多様な人々を包摂した大帝国。
そのダイナミックな「国際」関係や対外交渉行動を描くとともに、近代の西欧国際体系との関係を、
外交使節や公館、革命や大戦への対応などから論じた、碩学の労作。
原初から終焉までの600年余を文明史的視角から一望する。
鈴木 董(スズキ タダシ)
1947年生
1982年 東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了、法学博士
東京大学東洋文化研究所教授などを経て、
現 在 東京大学名誉教授
著書:
『オスマン帝国――イスラム世界の「柔らかい専制」』(講談社現代新書、1992年)
『オスマン帝国の権力とエリート』(東京大学出版会、1993年)
『オスマン帝国とイスラム世界』(東京大学出版会、1997年)
『世界の食文化(9) トルコ』(農村漁村文化協会、2003年)
『ナショナリズムとイスラム的共存』(千倉書房、2007年)
『文字と組織の世界史』(山川出版社、2018年)
『オスマン帝国の解体――文化世界と国民国家』(講談社学術文庫、2018年)
『文字世界で読む文明論――比較人類史七つの視点』(講談社現代新書、2020年)
『食はイスタンブルにあり――君府名物考』(講談社学術文庫、2020年)
『帝国の崩壊――歴史上の超大国はなぜ滅びたか』(編著、山川出版社、2022年)他
目次
序 章 イスラム的世界帝国としてのオスマン帝国
1 オスマン帝国とは何か
2 オスマン帝国の形成
3 内的統合のシステムと「イスラム的寛容」
4 イスラム的世界秩序と対外関係
5 近代西欧国際体系とオスマン帝国
6 帝国の解体とその後にくるもの
7 本書の構成
第I部 オスマン帝国の世界秩序
第1章 イスラム世界の「内」と「外」
――境界・言語・移動
はじめに
1 オスマン帝国と境界
2 言語と文字と異言語集団間媒体
3 ヒトとモノと情報の移動
おわりに
第2章 オスマン帝国の異文化集団支配
1 政治単位の諸タイプと異文化集団間関係
2 イスラム世界における異文化集団支配の伝統
3 オスマン帝国における異文化集団支配
4 ナショナリズムの衝撃と伝統的システムの解体
第3章 イスラム国際法とオスマン帝国の外交
1 文化世界・世界秩序・「国際法」
2 文化世界としてのイスラム世界とその対異文化世界関係
3 イスラム的世界秩序の理念
4 政治的基本単位の性格
5 世界法としてのシャリーアと異教徒の処遇
6 オスマン帝国と西欧世界
7 「西洋の衝撃」の到来
第4章 オスマン帝国の世界秩序観と国際関係の変容
1 オスマン帝国の世界秩序観とイスラム的伝統
2 オスマン帝国における国際関係の現実とその変容
3 世界秩序観とアイデンティティーの変容
第5章 オスマン帝国の対外交渉行動
はじめに
1 オスマン帝国の対外行動と戦争行動の優位
2 オスマン的交渉行動とその背景
3 後期オスマン帝国における交渉行動の重要化とその対内的影響
4 後期オスマン帝国の事例と幕末日本の事例
5 交渉行動の技術的普遍性と文化的特殊性
第II部 オスマン帝国と近代西欧国際体系
第6章 ウィーン派遣大使と『ウィーン使節記』
1 18世紀初頭オスマン帝国の対西欧関係
2 オスマン帝国の使節たち
3 大使イブラヒム・パシャのウィーン派遣の背景
4 ウィーン派遣大使イブラヒム・パシャについて
5 『ウィーン使節記』
おわりに
第7章 パリ派遣大使と『フランス使節記』
はじめに
1 イルミセキズ・チェレビィの経歴(1)――パリ派遣まで
2 パリ奉使行と『フランス使節記』
3 イルミセキズ・チェレビィの経歴(2)――パリ派遣後
おわりに
第8章 オスマン帝国とフランス革命
はじめに
1 オスマン帝国とフランス――地中海の二つの「友邦」の二世紀半
2 革命期フランスと東方
3 オスマン人の革命期フランス観
おわりに
第9章 オスマン帝国の在外公館網の拡大
はじめに
1 オスマン帝国の常駐在外公館制度の拡大過程とその特色
2 日本及び中国のケースとの比較
おわりに
第10章 オスマン帝国と第一次世界大戦
はじめに
1 オスマン帝国と「欧州」諸国――ハプスブルクとフランスと
2 新たな脅威と新たな友邦
3 領土喪失・改革・革命
4 諸戦争から大戦へ
5 大戦と帝国の運命
あとがき
初出一覧
註
索引