近代チベット政治外交史 清朝崩壊にともなう政治的地位と境界
価格:7,920円 (消費税:720円)
ISBN978-4-8158-1146-4 C3022
奥付の初版発行年月:2024年02月 / 発売日:2024年03月上旬
仏教を介して中国と特別な関係を結び、広大な領域を治めたダライ・ラマ政権。東アジア国際秩序の構造転換を前に、彼らは勢力を維持すべくいかに行動したのか。そこで主張された「独立」「自治」の意味とは何か。現代に至るチベット問題の起源を、チベット語を中心とする多元的な史料にもとづき究明した画期的成果。
小林 亮介(コバヤシ リョウスケ)
2010年 筑波大学大学院人文社会科学研究科博士課程修了
現 在 九州大学大学院比較社会文化研究院准教授
主要業績に、「19世紀の清・チベット関係──境界地域の視点から」吉澤誠一郎ほか編『岩波講座 世界歴史 17──近代アジアの動態(19世紀)』(岩波書店、2022年)、「チベットと近代世界」岩尾一史・池田巧編『チベットの歴史と社会』上巻(臨川書店、2021年)、The Resurgence of """"Buddhist Government"""" : Tibetan-Mongolian Relations in the Modern World(共著、Union Press, 2019)などがある。
目次
凡 例
地図(19世紀チベット地域図)
序 章
1 清朝崩壊とチベット
2 シムラ会議とチベット
3 先行研究
4 史 料
5 本書のさらなる課題 ——「近代チベット政治外交史」の試み
6 本書の構成
第Ⅰ部 境界地域をめぐる相剋
第1章 ダライ・ラマ政権と清朝の境界地域
1 はじめに
2 ダライ・ラマ政権とカムおよびアムド
3 境界の画定
4 金川戦争後のカム
5 19世紀のダライ・ラマ政権と境界地域
第2章 ダライ・ラマ政権のカム支配(1865〜1911年):前編
1 はじめに
2 19世紀後半、ダライ・ラマ政権のカム東部進出
3 ダライ・ラマ政権のカム支配の始動
4 清朝の対応
5 小 結
第3章 ダライ・ラマ政権のカム支配(1865〜1911年):後編
1 はじめに
2 19世紀末、カム支配をめぐる相剋
3 清末新政の始動
4 ダライ・ラマ政権のカム支配の終焉
5 小 結
第4章 ダライ・ラマ政権のカム支配とデルゲ王国(徳格土司)
1 はじめに
2 デルゲ王国と清朝・チベット関係
3 ダライ・ラマ政権によるデルゲ支配
4 王位継承問題
5 デルゲ帰属問題の形成
6 小 結
第Ⅱ部 近代国際社会とチベット
第5章 日露戦争とチベット
—— ダライ・ラマ13世の川島浪速宛書簡
1 はじめに
2 黎明期のチベット・日本関係と国際社会
3 日露戦争下での接触
4 川島浪速宛チベット語書簡(1905年)
5 小 結
第6章 チベットとアメリカの邂逅
—— ダライ・ラマ13世とロクヒル
1 はじめに
2 ロクヒルとチベット
3 五台山と北京にて
4 インドからの書簡
5 小 結
第7章 辛亥革命とチベット・日本関係
1 はじめに
2 明治日本の仏教界とチベット
3 川島浪速宛書簡(1909年)とその背景
4 辛亥革命とその後
5 小 結
第8章 ルンシャル使節団とイギリス
1 はじめに
2 ルンシャル使節団とダライ・ラマ13世の親書
3 書簡の翻訳をめぐって
4 イギリスと中国の反応
5 小 結
第Ⅲ部 政治的地位と境界をめぐって
第9章 チベットの政治的地位とシムラ会議
1 はじめに
2 チベット語会議録『クンセルメロン』について
3 シムラ会議における翻訳概念
4 シムラ条約の調印
5 小 結
第10章 シムラ会議・境界紛争・停戦協定
——「内チベット」と「外チベット」
1 はじめに
2 「チベット」をめぐる構想と抗争
3 「内チベット」をめぐる相剋
4 チャムド停戦協定
5 ロンパツァ協定とその後
6 小 結
第11章 境界紛争と僧院
1 はじめに
2 チベット仏教僧院と境界問題
3 タルギェー僧院とダライ・ラマ政権
4 タルギェー僧院と境界紛争(1930〜33年)
5 僧院復興をめぐる交渉
6 小 結
終 章
1 境界問題の形成
2 近代国際社会との関わり
3 シムラ会議とその後
4 「事実上の独立」の終焉
あとがき
初出一覧
注
文献一覧
図表一覧
索 引