ヨーロッパ統合史[第2版]
価格:3,960円 (消費税:360円)
ISBN978-4-8158-1165-5 C3031
奥付の初版発行年月:2024年08月 / 発売日:2024年09月上旬
政治・経済から軍事・安全保障、規範・社会イメージにわたる複合的な国際体制の成立と変容を膨大な史料に基づいて描き出し、今日にいたるヨーロッパ統合の全体像を提示した最も信頼できる通史。加盟や脱退、戦争、通貨、移民・難民など度重なる危機の中、統合はどこに向かうのか。
遠藤 乾(エンドウ ケン)
東京大学大学院法学政治学研究科教授〈国際政治、ヨーロッパ政治〉。北海道大学大学院法学研究科修士号、ベルギー・カトリック・ルーヴァン大学MA、オックスフォード大学政治学博士号。欧州共同体(EC)委員会「未来工房」専門調査員(1993)、イタリア・ヨーロッパ大学院大学ジャンモネ研究員(2000-01)、ハーヴァード法科大学院エミールノエル研究員(2001-02)、パリ政治学院客員教授(2006, 2010)、北海道大学大学院教授(2006-21)などを経て現職。著書に The Presidency of the European Commission under Jacques Delors : The Politics of Shared Leadership (Macmillan, 1999)、『原典 ヨーロッパ統合史──史料と解説』(編、名古屋大学出版会、2008年)、『統合の終焉──EUの実像と論理』(岩波書店、2013年、読売・吉野作造賞)、『欧州複合危機――苦悶するEU、揺れる世界』(中央公論新社、2016年)など。
板橋 拓己(イタバシ タクミ)
東京大学大学院法学政治学研究科教授〈国際政治史、ドイツ近現代史〉
『分断の克服 1989-1990──統一をめぐる西ドイツ外交の挑戦』(中公選書、2022年)他
戸澤 英典(トザワ ヒデノリ)
東北大学大学院法学研究科教授〈国際関係論、EU研究〉
『戦後民主主義の青写真──ヨーロッパにおける統合とデモクラシー』(ナカニシヤ出版、2019年)他
上原 良子(ウエハラ ヨシコ)
フェリス女学院大学国際交流学部教授〈フランス現代史、フランス外交〉
『フランスと世界』(共編著、法律文化社、2019年)他
細谷 雄一(ホソヤ ユウイチ)
慶應義塾大学法学部教授〈国際政治学、外交史〉
『迷走するイギリス──EU離脱と欧州の危機』(慶應義塾大学出版会、2016年)他
川嶋 周一(カワシマ シュウイチ)
明治大学政治経済学部教授〈国際関係史、ヨーロッパ政治外交史〉
『独仏関係と戦後ヨーロッパ国際秩序──ドゴール外交とヨーロッパの構築 1958-1969』(創文社、2007年)他
橋口 豊(ハシグチ ユタカ)
龍谷大学法学部教授〈冷戦史、イギリス外交史〉
『戦後イギリス外交と英米間の「特別な関係」──国際秩序の変容と揺れる自画像、1957~1974年』(ミネルヴァ書房、2016年)他
妹尾 哲志(セノオ テツジ)
専修大学法学部教授〈国際政治、ドイツ外交〉
『冷戦変容期の独米関係と西ドイツ外交』(晃洋書房、2022年)他
鈴木 一人(スズキ カズト)
東京大学公共政策大学院教授〈国際政治経済学、ヨーロッパ研究〉
『宇宙開発と国際政治』(岩波書店、2011年)他
目次
第2版への序
凡 例
略語表
序 章 ヨーロッパ統合の歴史
—— 視座と構成
1 はじめに
2 なぜヨーロッパ統合史なのか
3 どのような視座に立つか
4 本書の射程
5 本書の構成
第1章 ヨーロッパ統合の前史
1 はじめに ——「ヨーロッパ」の自画像
2 古代・中世と「ヨーロッパ」意識
3 近代の幕開けとヨーロッパ構想
4 「長い19世紀」とヨーロッパ統合
5 おわりに
第2章 ヨーロッパ統合の胎動
—— 戦間期広域秩序論から戦後構想へ
Ⅰ 戦間期におけるヨーロッパ広域秩序再編構想
1 はじめに
2 「相互依存」とヨーロッパ域内行政協力の進展
3 第一次世界大戦の衝撃
4 大陸ヨーロッパ経済の再編
—— ナウマンの『中欧論』、ルシュール、マイリシュ
5 クーデンホーフ・カレルギーとブリアン
6 ファシズムのヨーロッパ、ナチズムのヨーロッパ、「グレイ・ゾーン」の
ヨーロッパ
7 戦間期のアポリア
Ⅱ 戦後構想とヨーロッパ運動
8 第二次世界大戦中の戦後秩序の模索
9 「解放」後 —— 戦後秩序の黎明期
10 おわりに —— ヨーロッパ統合構想における「断絶」と「連続」
第3章 ヨーロッパ統合の生成 1947-50年
—— 冷戦・分断・統合
1 はじめに
2 マーシャル・プラン —— 経済統合と冷戦の始まり
3 「ヨーロッパの春」—— ハーグ・ヨーロッパ会議
4 ドイツ問題の隘路
5 英仏主導のヨーロッパの模索と挫折
6 欧州審議会
7 北大西洋条約とドイツ再軍備問題の浮上
8 おわりに
第4章 シューマン・プランからローマ条約へ 1950-58年
—— EC-NATO-CE 体制の成立
1 はじめに
2 シューマン・プランとヨーロッパ統合の発展
3 政治統合の蹉跌 —— イーデン・プラン、EDC、EPC
4 パリ条約からローマ条約へ
5 マクミランの挑戦
6 おわりに
第5章 EEC の定着と大西洋同盟の動揺 1958-69年
1 はじめに —— ヨーロッパ統合史のなかの60年代
2 ヨーロッパ統合の新しいダイナミズムの登場
3 大西洋同盟の動揺
4 共同体の危機と経済統合の深化
5 おわりに
第6章 デタントと危機のなかの EC 1969-79年
—— ハーグから新冷戦へ
1 はじめに
2 ポスト・ハーグの統合過程とデタントの進展
3 EC-NATO 体制の変容
4 ヨーロッパ統合の停滞と再生の試み
5 「静かなる革命」
6 おわりに
第7章 ヨーロッパ統合の再活性化 1979-91年
1 はじめに —— 長い80年代と短い80年代
2 欧州悲観主義の時代
3 政治的イニシアティブ
4 方法的革新およびイデオロギー的収斂
—— 相互承認の原則とミッテラン政権のUターン
5 「1992年ブーム」—— 単一欧州議定書からドロール・パッケージまで
6 通貨統合の胎動
7 東欧革命とドイツ統一 ——「EU-NATO-CE 体制」の動揺
8 マーストリヒト条約
9 おわりに
第8章 冷戦後のヨーロッパ統合 1992-98年
1 はじめに —— 1990年代という時代
2 「最悪の年(Annus Horribilis)」(1992年)
——マーストリヒト批准過程における混迷
3 「民主主義の赤字」論
4 単一通貨「ユーロ」への道
5 「ドロール白書」—— 新自由主義の時代における社会的イニシアティブ
6 アムステルダム条約
7 域外関係の変化と共通外交安全保障政策
8 東方拡大へ
9 「やわらかい統合」
10 おわりに
第9章 2000年代の欧州統合
—— ユーロの誕生からリスボン条約まで
1 はじめに
2 新たな秩序形成主体としての EU
3 ポスト 9・11 の世界秩序に戸惑うヨーロッパ
4 欧州憲法条約の不成立 —— 統合の論理の破綻
第10章 複合危機の2010-20年代
—— ユーロ危機からウクライナ戦争まで
1 はじめに
2 ユーロ危機
3 難民危機とテロリズム —— シェンゲンの綻び
4 ブレグジット
5 ポピュリズムの興隆
6 規制帝国=EU のゆくえ
7 アメリカの変調 —— 大西洋同盟、米中対立、経済安全保障
8 コロナ危機と復興基金
9 ロシア=ウクライナ戦争 ——「ヨーロッパ」の戦争
終 章 ヨーロッパ統合とは何だったのか
—— 展望と含意
1 何をどのように明らかにしようとしたのか
2 EU-NATO-CE 体制の成立、変容、終焉、そして(一時的)再生
3 帝国アメリカを抱きしめて
4 主権を超えて? —— 国民国家と EU との関係
5 「ステルスのヨーロッパ」—— 統合の機能的手法とその問題点
6 失われた「ヨーロッパ」を求めて —— 理念と機能の多元化
7 結語 —— 地域統合はどこに行くのか
付 図
ヨーロッパ統合史略年表
参考文献
史料一覧
初版あとがき
第2版あとがき
索 引