東アジアのなかの日本文化
価格:4,180円 (消費税:380円)
ISBN978-4-8329-3410-8 C1021
奥付の初版発行年月:2021年03月 / 発売日:2021年03月上旬
日本文化はいかにして形成されたのか。最初からあったのではない、東アジアの交流を母胎として生み出されてきたのである――文化を政治や外交との絡み合いのなかで捉え、対中国・朝鮮、蝦夷地、琉球、境界の島々(竹島や尖閣諸島)を視野に入れ、日本文化の形成と諸相を縦横に論じる。
*2005年に刊行された同名の放送大学テキストの増補改訂版(5章増補して計20章構成)
増補=第3章、第14章、第15章、第16章、第20章
村井 章介(ムライ ショウスケ)
1949年、大阪市生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。博士(文学)。
同大学史料編纂所、同文学部・人文社会系研究科、立正大学文学部を経て、現在東京大学名誉教授、公益財団法人東洋文庫研究員。
専門は日本の対外関係史。国家の枠組みを超えて人々が活動し、「地域」を形成していく動きに関心をもち、あわせてかれらの行動を理解するのに不可欠な船、航路、港町などを研究している。
おもな著書に、『中世倭人伝』(岩波新書、1993年)、『東アジア往還─漢詩と外交─』(朝日新聞社、1995年)、『世界史のなかの戦国日本』(ちくま学芸文庫、2012年)、『日本中世境界史論』(岩波書店、2013年)、『日本中世の異文化接触』(東京大学出版会、2013年)、『古琉球─海洋アジアの輝ける王国─』(角川選書、2019年)ほかがある。
目次
まえがき
第1章 遣唐使と中国文化の輸入
1 「日出づる処の天子」
2 留学生・留学僧と文化の輸入
3 「明月帰らず碧海に沈む」
4 「吉備大臣」へのあゆみ
5 鬼に変じた仲麻呂、真備を助ける
第2章 破綻する「小中華帝国」
1 新羅人放還の官符
2 東夷の小帝国
3 新羅の外交攻勢と「新羅征討」計画
4 外交から貿易へ
5 新羅商人と大宰府貿易
6 排外意識の発生
第3章 エミシからエゾ、そして平泉王国へ
1 列島北辺の民族動態
2 ヤマト・エミシ戦争と境界
3 エミシからエゾへ
4 境界都市と王国中央──衣川・平泉
5 もし平泉が鎌倉に勝っていたら?
第4章 渤海使節と詩を競う
1 渤海、失われた王国
2 日本海を越えて
3 漢詩と外交
4 詩を競う両国文人
5 裴・菅両家二代の交友
6 渤海の滅亡と交流の多様化
第5章 生身の釈迦、海を渡る
1 留学から巡礼へ
2 勅版大蔵経と釈迦瑞像
3 中国人の日本観の刷新
4 奝然入宋の歴史的意義
5 現し身の仏
6 天竺憧憬と清凉寺式釈迦像
第6章 刀伊の入寇、被害者の証言
1 寝耳に水の惨劇
2 京都にて
3 高麗にて
4 『小右記』の醍醐味
5 女ふたり、恐怖を語る
6 軍事情報と高麗観
第7章 海に開かれた窓、博多と寧波
1 住蕃貿易と市舶司
2 「天一閣博物館」の博多宋人刻石
3 文字史料に見える中国人街
4 墨書陶磁器は語る
5 博多都市遺跡の発掘
6 「博多綱首」の生活と営業
第8章 朝鮮渡来の海洋性陶器、カムィヤキの世界
1 カムィヤキ窯跡群の発見
2 カムィヤキはどこから来たか
3 カムィヤキの生産と流通
4 『海東諸国紀』の絵地図を読む
5 マージナル・マン金元珍
第9章 宋へ渡ろうとした鎌倉将軍
1 東大寺の再建
2 「入唐三度聖人」
3 鎌倉右大臣源実朝
4 砂に朽ちる唐船
5 暗殺とその後
第10章 蒙古襲来と異文化接触
1 アジアの蒙古襲来と「三別抄」
2 武器と戦法のちがい
3 海戦の描写
4 よみがえる異国合戦──鷹島海底遺跡
5 神国思想の浸透
第11章 看板としての寺社造営料唐船
1 海上の道、海底の船
2 新安沈船の「国籍」をめぐって
3 看板としての「寺社造営」
4 倭舶と唐船
5 大智は新安沈船の乗客か
第12章 輸入文化としての禅宗
1 “ZEN”は「日本文化の粋」か?
2 さわがしい茶の文化
3 初期禅文化と北条氏
4 にぎわう東シナ海
5 国際性の喪失
第13章 文化史上の「日本国王源道義」
1 「日本国王良懐」
2 王権の競合
3 北朝接収、南朝解消
4 革命前夜
5 冊封体制への参入
6 革命の挫折
第14章 15世紀日朝交隣外交と漢詩
1 日朝交隣外交の成立と倭寇
2 『老松堂日本行録』にみる詩交
3 地域外交の媒介者たち
4 四年に三度の日本国王使
5 個人外交(1)──癸亥約条と李藝
6 個人外交(2)──真使便乗型偽使と文渓正祐
第15章 外交僧雪舟と「実用絵画」論
1 遣明使節としての雪舟
2 「国々人物図巻」の人・獣・船づくし
3 「勝景」描出のメンタリティ
4 金山寺、西湖、「実用風景画」
5 大内使、雪舟画を携え朝鮮ヘ
第16章 古琉球と「女の領域」
1 女と外交
2 聞得大君と世主
3 石碑と神歌(ミセゼル)
4 ウヤガンと冊封使
5 ヤマト化とジェンダー
第17章 対馬のサバイバルゲーム
1 対馬島、慶尚道に隷す
2 あの手この手の情報操作
3 三浦の乱後の「日本国使臣」
4 朝鮮侵略と講和交渉
5 国書改竄
第18章 東アジア知識人の共有文化
1 東アジア三国の儒と仏
2 室町時代の儒教と外交
3 朱子学の登場
4 朝鮮王朝の性理学
5 藤原惺窩と林羅山
第19章 明清交代を見すえる朝鮮と日本
1 「北虜南倭」
2 「中華」への挑戦──秀吉の世界構想
3 明から清へ
4 朝鮮の党争と「崇明排清」運動
5 江戸幕府の対明復交交渉
6 「華夷変態」と日中関係の定置
第20章 境界域としての竹島・尖閣諸島
1 領土論争と境界史料
2 鬱陵島と于山島
3 鬱陵島と境界人たち
4 元禄時代の「竹島問題」
5 冊封使のみた尖閣諸島と久米島
索 引(人名、地名、事項)