北海道大学大学院文学研究科研究叢書17
現代本格ミステリの研究 後期クイーン的問題をめぐって
価格:3,520円 (消費税:320円)
ISBN978-4-8329-6732-8 C3095
奥付の初版発行年月:2010年03月 / 発売日:2010年04月下旬
〈探偵はどんなに論理的に推理を行ったところで、唯一絶対の真実には到達できない〉〈完全な本格ミステリは存在しない〉という「後期クイーン的問題」を軸に個々の作品を分析。新本格からゲームまで現代ミステリの初の本格的研究。
諸岡 卓真(モロオカ タクマ)
1977年 福島県生まれ
2008年 北海道大学大学院文学研究科博士後期課程修了
博士(文学)北海道大学
現 在 北海道大学大学院文学研究科専門研究員,藤女子大学ほか非常勤講師
専 門 ミステリ論,テレビゲーム論
論文等 共著に『幻想文学,近代の魔界へ』(青弓社,2006年),『ニアミステリのすすめ』(原書房,2008年)。論文に「九〇年代本格ミステリの延命策」(「ミステリーズ!」vol.3,2003年,第10回創元推理評論賞佳作),「〈日常〉の謎――加納朋子『ななつのこ』論」(『日本近代文学会北海道支部会報』第11号,2008年),「ねじれた推理――『かまいたちの夜×3』論」(『層―映像と表現』vol.3,2010年)など。
目次
序 章 「後期クイーン的問題」をめぐって
1 ミステリの現在
2 後期クイーン的問題の見取り図
3 各章の構成
第一章 多層化する境界線――氷川透『人魚とミノタウロス』論――
1 探偵の死
2 メタレベルからの保証
3 メタファーとしてのゲーデル問題
4 偽の手がかり問題
5 二重のカタルシス
6 顔のない死体
7 それでも行方不明になる真実
8 THE BORDERLINE CASE
第二章 本格ミステリ殺人事件――麻耶雄嵩『翼ある闇』論――
1 語り手の立場
2 香月実朝の矛盾
3 推理の検証――メルカトル鮎の場合
4 推理の検証――香月実朝の場合
5 メルカトルを殺したのは誰か
6 銘探偵の掟
第三章 九〇年代本格ミステリの延命策
1 銘探偵のアポリア
2 二重の回避
3 新たなロジカル・タイピング
4 捏造の徴候
5 行方不明になる真実
6 ずれていく真実
7 偽の手がかり問題の回帰
8 後期クイーン的問題の功罪
第四章 置き去りの推理―― 『逆転裁判』論――
1 一九九四年の転機
2 小説/ゲームの本格ミステリ
3 『逆転裁判』におけるプレイヤーとPC
4 『逆転裁判』における偽の手がかり問題
5 置き去りの推理
6 変 節
7 千尋の言葉と意外性
8 再び置き去りの推理
9 最後の企み
10 ゆさぶられるのは誰か
第五章 並立の推理―― 『逆転裁判2』論――
1 二つの論証
2 サイコ・ロック
3 制限される情報
4 「僕は誰も殺していない」
5 並立の推理
6 宙吊りの決断
7 正しさ/適切さ
第六章 操りという幻想――西澤保彦『神のロジック 人間のマジック』論――
1 ネタとしての後期クイーン的問題
2 見えるものが見えない
3 思い込み
4 肥大化する操り
5 異教徒と暴力
6 完全な操り/操りの自壊
7 最後の思い込み
第七章 現代本格ミステリのアポリア
1 操りの時代
2 探偵の失敗
3 手がかりの真偽
4 混乱の原因
5 空転する論理
6 偶然と奇跡
7 現代本格ミステリのアポリア
終 章 本研究の成果と課題
注
引用・参考文献一覧
あとがき
初出一覧
人名索引
事項索引