図説ユーラシアと日本の国境 ボーダー・ミュージアム
価格:1,980円 (消費税:180円)
ISBN978-4-8329-6806-6 C3025
奥付の初版発行年月:2014年03月 / 発売日:2014年02月下旬
日本とユーラシアの国境・境界の問題をよく知るためのビジュアル本。国境の変遷やそれに伴う人々の暮らしの変化、境界をまたいで活躍した人々など、多数の地図と写真から国境地域の歴史と現在に迫る。北大博物館で試みたボーダースタディーズ(境界研究)の実験的展示の成果。
ボーダースタディーズ(境界研究)と言う言葉をご存じの方はほとんどいないだろう。すこし気取ってまとめれば、私たちが取り組むこの学問領域は次のようになる。
境界現象とは、人間が生存する実態空間そのもの及びその人間の有する空間及び集合認識のなかで派生する差異化(つまり、自他の区別)をもたらすあらゆる現象を指し、いわばボーダースタディーズはその形成及び変容ならびに紛争回避メカニズムの解明にある。現代社会においては、実態空間としては国と国の接触点(国境)や民族と民族が対立あるいは協力する様々な衝突点が存在する。そしてそのボーダーに分断されて、あるいはボーダーを跨いで生活する人々は、その実態に左右されながらも、ある場所では自他の認識を鮮明に、別の場所では曖昧なグラデーションをもって表象する。もとよりこれらの境界は実態でも認識でもズレを抱え込みながら、歴史のなかで再生産され続ける。境界研究はこのような境界現象にかかわる問題をどのように読み解くかという問題意識を共有しつつ、具体的なエリアにおいて問題の存在を探り、その問題の様態を考察し、解決方法を模索し、その実現に向けて提言をも行う学問領域である。
岩下 明裕(イワシタ アキヒロ)
北海道大学スラブ研究センター教授
木下 克彦(キノシタ カツヒコ)
北海道大学スラブ研究センター特任教授
伊藤 薫(イトウ カオル)
風交舎
北村 嘉恵 (キタムラ カエ)
北海道大学大学院教育学研究院准教授
安 渓遊地(アンケイ ユウジ)
山口県立大学国際文化学部教授
安渓 貴子(アンケイ タカコ)
山口大学医学部非常勤講師
望月 哲男(モチヅキ テツオ)
北海道大学スラブ研究センター教授
井上 暁子(イノウエ サトコ)
北海道大学スラブ研究センター非常勤研究員
野町 素紀(ノマチ モトキ)
北海道大学スラブ研究センター准教授
福田 宏(フクダ ヒロシ)
京都大学地域研究統合情報センター助教
後藤 正憲(ゴトウ マサノリ)
北海道大学スラブ研究センター助教
越野 剛(コシノ ゴウ)
北海道大学スラブ研究センター准教授
渡辺 浩平(ワタナベ コウヘイ)
北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院教授
谷古宇 尚(ヤコウ ヒサシ)
北海道大学大学院文学研究科准教授
水谷 裕佳(ミズタニ ユカ)
上智大学外国語学部グローバル教育センター助教
山崎幸治(ヤマザキ コウジ)
北海道大学アイヌ・先住民研究センター准教授
上記内容は本書刊行時のものです。
目次
序 ボーダースタディーズ(境界研究)の実験
第1章 ユーラシア国境の旅
国境は変わる:ヨーロッパ
コーカサスと環黒海
南アジアと中国
中央アジアと中国
中国とロシア
日本とロシア
第2章 国境をゲートウェイにする:秋野豊のメッセージ
秋野豊と北海道
ユーラシアの覚醒(1993-1997年)
第3章 海疆ユーラシアと日本
知られざる北の国境:北緯50度の記憶(北ゾーン)
知られざる南西国境:砦とゲートウェイの狭間(南ゾーン・西ゾーン)
第4章 海を越える人々:沖縄・八重山から台湾と朝鮮半島をみる
海続きの島々,浮現する境界
済州島漂流民の記憶:口頭伝承でよみがえる15世紀の与那国島
宮本常一と歩く国境の島じま
第5章 揺れる境界:文学がみつめるもの
亡命と移住の文学:ポーランドの作家たち
境界の言葉を作り,そして詠う:ウンドラ・ウィソホルスキ
言語の境界に生きた作家:フランツ・カフカ
言語の逆説を生きた詩人:ゲンナジー・アイギ
第6章 ポスターと絵画を読む:中国とロシアの心象風景
フェラーリを拭く雷鋒
香月泰男がみた中国とロシアの境界地域
ロシアからみた境界のイメージ
第7章 先住民という視座からの眺め
北極圏のコミュニケーション:境界を越えるサーミ
北米先住民ヤキの世界
アイヌと境界
おわりに ミュージアムの現場から
図版出典一覧
参考文献
展示協力
関連書
『国境・誰がこの線を引いたのか』(2006.北海道大学出版会)
『日本の国境・いかにこの「呪縛」を解くか』(2010、北海道大学出版会)