カントの世界論 バウムガルテンとヒュームに対する応答
価格:6,050円 (消費税:550円)
ISBN978-4-8329-6816-5 C3010
奥付の初版発行年月:2015年11月 / 発売日:2015年11月下旬
本書の目的は、「世界の統一」の問題を軸にして、カントの批判哲学に基づく世界論と伝統的世界論との間の連続性と断絶を示すことである。そのために本書では「複合体」と「系列」という世界を考察する二つの観点に着目して議論の中心に据え、主にバウムガルテンとカントの世界論の比較検討により、カントも「世界の統一」の問題を主題的に論じていたこと、この問題に対してカントが従来の哲学者とは異なる仕方で応答を試みていたことの二点を示す。
本書はカントの世界論がアンチノミー論よりも広範で豊かな内容を持つ議論であること、そしてこの新たな世界論を根拠付けている点にも批判哲学の意義が見出されることを明らかにした。
増山 浩人(マスヤマヒロト)
1983年 東京都福生市に生まれる
2002年 啓明学園高等学校卒業
2006年 学習院大学文学部哲学科卒業
2014年 北海道大学大学院文学研究科博士後期課程修了 博士(文学)
現 在 日本学術振興会特別研究員PD(上智大学)
日本カント協会 第6回濱田賞(2011年)
論文等 「第二類推論と充足根拠律」(『カントと幸福論(日本カント研究11)』理想社,2010年,123-138頁),「デザイン論証とAls-Obの方法――ヒュームの『自然宗教に関する対話』に対するカントの応答」(日本哲学会『哲学』第64号,191-205頁,2013年),酒井潔,佐々木能章(監修) 『ライプニッツ著作集 第Ⅱ部 第1巻 哲学書簡』(工作舎,2015年,共訳者として参加)など
目次
序 論
第一節 本書の目的
第二節 ヴォルフ学派とヒュームの双方に対する応答としてのカント批判哲学
第三節 バウムガルテンの『形而上学』とカントの講義録・メモの重要性
第四節 世界論の対象
第五節 伝統的世界論の世界の考察方法──「複合体」と「系列」という二つの観点
第六節 本書の問題設定
第七節 本書の方法と概要
第一章 バウムガルテンの世界論
はじめに
第一節 バウムガルテンの『形而上学』の特色と体系構成
第二節 世界論の二つの主題──複合的存在者としての世界と実体としての世界の部分
第三節 存在論によるモナドの諸属性の導出
1.「内的一般的述語」による「存在者」の導出
2.「内的選言的述語」によるモナドの導出
第四節 モナドの表象性格の受容
第五節 モナド間の相互性と予定調和説の証明
1.議論の前提と三種類の説の概要
2.三種類の説に対する評価
第六節 バウムガルテンの物体論
1.「延長体」の成立条件としてのモナド間の異種性とモナドの接触
2.物体の成立条件としての慣性力と運動力
3.以上の議論の総括と意図
第七節 バウムガルテンにおける「系列の全体性」の問題──「無限への進行」の不可能性
おわりに
第二章 カントにおける世界考察の方法
はじめに
第一節 「世界の質料」、「世界の形式」、「世界の全体性」という三分法の典拠
第二節 「世界の質料」、「世界の形式」、「世界の全体性」という三分法の導入の目的
おわりに
第三章 カントの自然概念
──「名詞的自然」としての世界
はじめに
第一節 『純粋理性批判』における世界と自然の区別
第二節 「形容詞的自然」と「名詞的自然」の区別とその歴史的源泉
第三節 バウムガルテンの自然概念──「存在者の自然(natura entis)」と「全自然(natura universa)」
第四節 カントによるバウムガルテンの自然概念の受容
第五節 「質料的な意味での自然」と「形式的な意味での自然」
おわりに
第四章 第二類推論と充足根拠律
はじめに
第一節 ヴォルフ学派による「充足根拠律」の証明とその問題点
第二節 物の「充足根拠律」の限界確定──「あらゆる偶然的な物は根拠を持つ」という命題をめぐって
第三節 物の「充足根拠律」の新たな証明としての「第二類推論」
第四節 「ヴォルフ学派に対するカントの応答」としての「第二類推論」の位置づけ
第五節 「第二類推論」をヒュームに対する応答として読む際に発生する問題点──ヒュームの実体と力の観念に関する批判
おわりに
第五章 モナド論に対する応答としての「第三類推論」
はじめに
第一節 「第三類推論」の証明構造
第二節 原因性のカテゴリーと相互性のカテゴリーの役割の違い
第三節 『就職論文』における実体間の相互性の問題
第四節 「第三類推論」における「現象的実体」
第五節 「第三類推論」における空間の役割
おわりに
第六章 デザイン論証とAls-Obの方法
──ヒュームの『自然宗教に関する対話』に対するカントの応答
はじめに
第一節 カントの『対話』解釈──「擬人神観」と「有神論」の不可分性と両立不可能性
第二節 『対話』に対する応答の前提としてのカントの因果論
第三節 Als-Obの方法と「有神論」の擁護
おわりに
結 語
文 献 表
あとがき
バウムガルテン『形而上学』引用箇所索引
著作名索引
人名索引
事項索引
関連書
『カントと自由の問題』(北海道大学出版会、1993)
『カント哲学のコンテクスト』(北海道大学出版会、1997)
『実践と相互人格性』(北海道大学出版会、1997)