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科学的不確実性に挑んだ日米欧の50年化学物質管理法の成立と発展

化学物質管理法の成立と発展 科学的不確実性に挑んだ日米欧の50年

A5判 576ページ 上製
価格:11,000円 (消費税:1,000円)
ISBN978-4-8329-6822-6 C3032
奥付の初版発行年月:2016年04月 / 発売日:2016年04月中旬

内容紹介

環境法の中には,科学的不確実性を有する規制対象に対処するため予防原則,順応的管理などの考え方をとり入れているものがあるが,その仕組みは国によって異なる。それらは各国における法制度の制定経緯の違いに根ざしていると考えられる。
本書は,今後,科学的不確実性を有する対象に規制措置を発動するにあたっての予防原則,順応的管理の適用場面やその程度を決定する際の参考になることを意識して,日本,米国,欧州の化学物質管理法をとりあげて検討した。それぞれの制定時や改正時における法規制の考え方などを把握し,制度の発展経緯と特徴を比較検討することにより,科学的不確実性に対処する際の法規制の適用領域とその限界について考察した。

著者プロフィール

辻 信一(ツジ シンイチ)

1985年 京都大学大学院工学研究科修了
同 年 通商産業省入省
現 在 名古屋大学特任教授
専 攻 環境法,環境政策
おもな編著書 『汚染とリスクを制御する(シリーズ 環境政策の新地平6)』(大沼あゆみ・岸本充生編,共著,岩波書店,2015年)

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

 まえがき

序章 化学物質のリスクとその管理
はじめに
1.リスクとその対処
(1)リスクの考え方
(2)予防原則の登場
(3)予防原則の活用
2.化学物質の有するリスク
(1)化学物質の有するリスクの特徴
(2)環境汚染の原因となる化学物質の特徴
(3)化学物質の毒性
(4)直接暴露と間接暴露
3.化学物質のリスク評価の概要
(1)化学物質の有害性評価
(2)化学物質の暴露評価
(3)化学物質のリスク評価
(4)化学物質の複合影響について
4.化学物質のリスク管理の基本的な考え方
(1)排出規制と製造等規制
(2)大気,水質,土壌の汚染防止対策としての排出規制
(3)特定用途規制と一般用途規制
(4)独自の法律により管理されている化学物質
(5)既存化学物質と新規化学物質
5.リスク管理手法の新たな展開
(1)情報の公開
(2)リスクコミュニケーションの促進
(3)環境マネジメントシステムの活用
(4)事業者との協働
(5)PRTR制度によるリスク管理
(6)GHSとSDS(セーフティデータシート)
6.化学物質の有するリスクへの法的対応
(1)科学的不確実性の介在
(2)予防原則による対処
7.科学的不確実性を有する課題に対する政策決定
(1)政策決定における市民の意見の反映
(2)テクノロジーアセスメント
(3)コンセンサス会議
(4)討論型世論調査などの手法
(5)化学物質管理への市民の声の反映

第1章 わが国の化審法の成立と発展
はじめに
1.化学物質管理の特徴─科学的不確実性と既存化学物質の存在
(1)化学物質の有するリスクの特徴と予防原則
(2)既存化学物質管理の重要性
2.化審法とTSCAの成立─化学物質管理における予防原則の始まりとわが国の継受
(1)化学物質の事前審査制度と予防原則について
(2)米国環境諮問委員会報告書『Toxic Substances(有害物質)』の作成とTSCA法案の起草
(3)TSCA法案の推移
(4)わが国の化審法の成立
(5)TSCAの成立
(6)小 括
3.リスク配慮の導入─指定化学物質制度と「危険の疑い」
(1)被害が生じるおそれが「疑われる」段階での規制のはじまり
(2)OECDによる化学物質管理の国際調和の動き
(3)昭和61年の化審法改正の経緯
(4)第二種特定化学物質と指定化学物質の法的性格の考察
(5)わが国の化学物質管理政策における昭和61年の化審法改正の意義
(6)小 括
4.生態系保護規定の導入─科学的不確実性の限界事例への対応
(1)化学物質管理における生態系保護
(2)わが国における生態系保全の沿革
(3)生態系保全のための化学物質規制の検討の経緯
(4)平成15年の化審法改正─予防原則の適用としての生態系に影響を与える物質の規制の開始
(5)わが国の化学物質管理政策における平成15年の化審法改正の意義
(6)小 括
5.既存化学物質問題への対処─WSSD実施計画とREACHの登場
(1)化学物質管理の新たな動向
(2)REACHの成立
(3)小 括─なぜ化審法とREACHが異なる制度となったのか
6.順応的管理の導入─化学物質管理における新たな試み
(1)予防原則を活用した制度の見直しと順応的管理
(2)順応的管理の登場と適用
(3)平成21年の化審法改正の経緯
(4)平成21年改正化審法の特徴
(5)リスク評価の導入と予防原則
(6)順応的管理手法の化学物質管理への適用
(7)予防原則と順応的管理との関係
(8)順応的管理の射程と統制原理
(9)小 括
章のおわりに

第2章 米国有害物質規制法の成立と発展
はじめに
1.TSCAの構造
2.TSCAの成立過程における制約の導入
(1)『Toxic Substances』における提案
(2)S.1478上院案の提案
(3)S.1478上院案の評価とわが国の継受
(4)TSCAにおけるEPA長官の主な権限と特徴
(5)TSCAにおける権限行使にあたっての制約と問題点
(6)自発的なプログラムの活用
(7)TSCAにおける予防原則の活用についての考察
(8)TSCAとREACH,化審法との比較
(9)TSCAの問題点に対する改正の方向
3.TSCA改正への動き
(1)EPAのTSCA改正の基本原則の公表
(2)議会におけるTSCA改正法案の動向
(3)S.1391法案の特徴
(4)S.3209法案の特徴
(5)S.847法案の特徴
(6)S.1009法案の特徴
(7)Chemicals in Commerce Act草案(CICAⅡ草案)の特徴
(8)S.697法案の特徴
(9)H.R.2576法案の特徴
(10)H.R.2576上院修正法案の特徴
4.考  察
(1)現行のTSCAの問題点は改正法案でどこまで改善されたか
(2)TSCA法案におけるリスク評価と予防原則の活用
章のおわりに

第3章 欧州における化学物質管理法の成立と発展
はじめに
1.化学物質の有するリスクの特徴と法的対応
(1)化学物質の有するリスクの特徴
(2)化学物質の有するリスクへの法的対応
2.ドイツにおける化学物質管理政策の推移と環境保護概念の欧州への展開
(1)ドイツにおける環境保護概念の形成と発展
(2)ドイツの環境法にみる環境保護概念の展開
(3)EUにおける予防原則の展開
(4)ドイツとわが国における環境保護概念の比較
3.既存化学物質への対応とREACHの登場
(1)既存化学物質への対応
(2)EU白書
(3)REACHの登場─予防原則,原因者負担原則など環境保護概念の活用
(4)REACHの概要
(5)REACH提案後の欧州の動向
4.考  察
(1)危険概念からリスク概念へ
(2)なぜ化審法とREACHが異なる制度となったのか

終  章

付  表
事項・人名索引  
判例索引

関連書

類書なし


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