生態システムをフラスコの中に再現させた「ミクロコズム」、多くの微生物が棲みついて草を分解している牛の反芻胃「ルーメン」、そして竹筒の溜まり水の中で繰り広げられるボウフラの攻防。著者はかつて、このような、ミクロな世界を生態系として捉えることで、生態システムにおける全体と部分の統合の問題に切り込んだ。そして、今、自然環境に対する人間の無謀な介入から引き起こさせる手痛いしっぺ返しの数々は、生物をシステムとして理解しなかったことによると言う。本書は、人間と自然に関わる諸問題に取組もうとしている人たちに、生態システムの解析手法を通じて未来への指針を与えるものである。
目次
Ⅰ 生物の世界
1.生物の世界をどうみるか
2.主体-環境系
3.地球生態システムの成立
Ⅱ 多様性
1.種多様性とは
2.ニッチの分化
3.特殊化の条件
Ⅲ 安定性
1.群集の安定性
2.多様性と安定性
3.弱者と強者の共存
4.安定性と進化-ミクロコズムの実験
Ⅳ 全体と部分
1.生態システムの全体と部分
2.微生物・ルーメン・ウシ
3.ルーメン微生物の安定性
Ⅴ 生態システムの解析
1.手法と問題点
2.生態システムの単純化
3.生態システムの分割
4.溜り水の世界
5.段階的分割の意味-主動要素の抽出
6.比較による主動要素の抽出
7.副次的要素について
Ⅵ 生態ステムと人間の諸問題
1.自然物と人工物
2.動物と人間の行動の抑制について
3.生態システムからみた人間の特異性
Ⅶ 生態-人間システム
1.人為と自然
2.再び全体と部分について
3.生態-人間システムの諸問題
Ⅷ おわりに-グローバリゼーション
1.生態システムとグローバリズム
2.ポスト工業化社会
3.生態-人間システムの未来について