変容する親密圏/公共圏6
モダニティの変容と公共圏
価格:3,740円 (消費税:340円)
ISBN978-4-87698-378-0 C3336
奥付の初版発行年月:2014年01月 / 発売日:2014年01月上旬
これまで西欧近代社会をモデルとしてつくられてきた社会学の基礎概念は,グローバル化の進行に伴い相対化・再構成されつつある。モダニティの変容に伴って政治的領域の外部にまで展開し,「再帰的近代化」「第二の近代」とも特徴づけられる「公共圏」の内実を,西欧社会を基点にしつつアジアの視点からも理論的・複眼的に検討する。
田中 紀行(タナカ ノリユキ)
京都大学大学院文学研究科准教授。
京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。専攻:社会学史。
主な著作:「論壇ジャーナリズムの成立」青木保ほか編『近代日本文化論 第4巻 知識人』(岩波書店,1999年),「現代日本における歴史社会学の特質」鈴木幸壽ほか編『歴史社会学とマックス・ヴェーバー(上)』(理想社,2003年),「『ヴェーバー・パラダイム』をめぐる諸問題」(『哲学研究』第583号,2007年),「ヴェーバー受容と現代社会学」(『社会学雑誌』第27・28号(神戸大学社会学研究会),2011年)。
吉田 純(ヨシダ ジュン)
京都大学高等教育研究開発推進センター教授。
京都大学大学院文学研究科修士課程修了。博士(文学)。専攻:理論社会学,社会情報学。
主な著作:『インターネット空間の社会学—情報ネットワーク社会と公共圏』(世界思想社,2000年),『情報秩序の構築』(共著,早稲田大学出版部,2004年),『応用倫理学講義3 情報』(共著,岩波書店,2005年),『新リスク学ハンドブック—現代産業技術のリスクアセスメントと安全・安心の確保』(吉川榮和・杉万俊夫と共編,三松株式会社出版事業部,2009年)。
目次
序章 モダニティの変容と公共圏論の展開 [田中紀行・吉田 純]
はじめに
1 「公共圏」概念の再検討
1—1.「公共」をめぐる用語法の混乱
1—2.公/私の区別の諸類型
1—3.二つの「公共圏」概念とその関係
2 モダニティの変容と公共圏/親密圏
2—1.公共圏/親密圏のマッピング
2—2.親密圏と広義の公共圏の現代的変容
2—3.市民的公共圏の現代的変容—インターネット公共圏論を中心に
3 本書の特徴と構成
3—1.本書の特徴
3—2.本書の構成
第I部 モダニティと公共圏への視座
第1章 公共圏と親密圏のディアボリズム [三上剛史]
序
1 シンボリックなものの過剰と近代
2 「公共圏」「親密圏」再考:用語を巡る中間考察
3 親密圏とディアボリックなもの:「愛」
4 公共圏とディアボリックなもの:「信頼」
小括:ディアボリックなものの働き
第2章 機能分化社会と公共圏—メディア論の視点から [高橋顕也]
はじめに
1 問題設定
2 ハーバーマス理論における公共圏とメディア
2—1.間主観性の哲学的基礎づけ
2—2.公共圏を構成するメディアとしての言語
3 ルーマン理論におけるコミュニケーションとメディア
4 象徴システムの理論
4—1.象徴システムとしてのメディア
4—2.象徴システムの制御
5 公共圏の顕現の場としての「ソーシャルな」コミュニケーション
第3章 近代と非理性的モメント—公共圏論の理論的基礎づけに向けて [園 知子]
はじめに
1 公共圏論から捨象されたモメント
1—1.情念とレトリック
1—2.美的・文化的想念:K. タッカーの見解
2 詩的創造力:J.ピーターズによるハーバーマス批判
3 近代と非理性的モメント—公共圏論の新たな理論的基礎づけの試み
3—1.ニーチェの近代批判
3—2.ハーバーマスの近代論
4 公共圏論の再構築に向けて
第4章 境界線を引きなおして他者を迎え入れる—公共圏,親密圏,シティズンシップ [中村健吾]
はじめに
1 公共圏のウェストファリア・モデルに対する批判
2 ハーバーマスとトランスナショナルな公共圏
3 公共圏の内部における排除と「翻訳」
4 親密圏における他者との対面
5 シティズンシップ—地位身分から実践へ
第II部 モダニティの多様性と公共圏・親密圏
第5章 社会主義的近代社会とその体制変容—親密圏と公共圏の再編成の困難 [ライカイ・ジョンボル]
はじめに
1 社会主義的近代社会
2 社会主義期のハンガリー
2—1.1950年代の前期
2—2.1950年代の後期〜1980年代の末期
3 ポスト社会主義期のハンガリー
3—1.概観
3—2.市民社会の形成の困難
3—3.社会的・制度的信頼と家族成員間の信頼
4 社会統合の基礎となる家族の連帯
5 静態的モデルから動態的モデルへ:親密圏と公共圏の変容
第6章 「つくられる共同体」の社会学的地平—親密圏と公共圏の交差 [田 恩伊]
はじめに
1 「つくられる」ゲマインシャフト
2 インテンショナル・コミュニティ—歴史と特徴
2—1.新しい共同体の模索(1940年代前後)
2—2.アーバン・コミュニティの芽生え(1940年代前後〜1970年代)
2—3.個人化時代と「分業」する共同体(1990年代〜)
3 新たな親密圏づくりの実践—日本と韓国の事例から
3—1.日本の事例から
3—2.韓国の事例から
3—3.小括
4 親密圏と公共圏が交差する「つくられる共同体」
5 結論 185
第7章 後期トゥレーヌの脱近代化論—モダニティをめぐる諸理論と現代アジア [濱西栄司]
1 現代アジアの社会変動をいかに理論化するか
1—1.「圧縮された近代」論と「モダニティの徹底化」論
1—2.多元的近代論とアラン・トゥレーヌ
2 後期トゥレーヌの脱近代化論
2—1.前・中期トゥレーヌとモダニティ
2—2.合理性/主体性としてのモダニティと脱近代化
2—3.モダニティの二重性,非−規範性,個々人の経験
3 新しい原理から文化運動へ
3—1.個性化への要求と葛藤のプロセス
3—2.批判理論/リキッド・モダニティ論との関係性
3—3.主体化を促進する場・連帯・制度
4 トゥレーヌ理論に基づくモダニティの制度/アクター分析
4—1.理論的枠組みの構築
4—2.現代アジアにおけるアクターの重層化
第8章 グローバリゼーションの到来と儒教倫理—社会学的研究 [林 端](高橋顕也訳)
はじめに
1 「普遍主義」対「個別主義」—ヴェーバーとパーソンズ:プロテスタンティズムの倫理と儒教倫理の関係をめぐって
2 儒教倫理の「文脈的普遍主義」—仁
3 普遍主義と個別主義についての現代社会学理論—ウルリッヒ・ベックの「文脈的普遍主義」
4 その他の現代世界論
5 結論
第9章 現代社会のヴィジュアル・ターンと東アジアの文化変容—ポピュラーカルチャーが相互浸透する時代の東アジア像 [油井清光]
はじめに
1 「啓蒙の弁証法」のなかの文化産業
2 現代社会の再魔術化とヴィジュアル・ターン
3 現代社会の基本構造の変容
4 文化的卓越性と文化資本
5 「文化仲介者」の決定的役割
6 東アジアにおける文化産業の興隆と交流
7 グローバルな文化現象としてのアニメ・マンガ:東アジアでの実態調査
8 「アジア主義」とヴィジュアル・ターン—グローバルとローカルの間で
あとがき [田中紀行・吉田 純]
索 引
執筆・翻訳者紹介