明代の女真人 『女真訳語』から『永寧寺記碑』へ
価格:15,400円 (消費税:1,400円)
ISBN978-4-87698-794-8 C3020
奥付の初版発行年月:2009年11月 / 発売日:2009年11月上旬
女真学は,女真文字の難解さに制約からいまだポピュラーとは言えない.本書では,四夷館による語彙集『女真訳語』と漢文・モンゴル文・女真文の三体碑文『永寧寺記碑』との二つの女真文字で書き残された史料に直接あたり,15世紀における女真語を文字・音韻・文法の面から解き明かす.中世北東アジア研究に新たな一側面を提供する.
愛新覚羅 烏拉煕春(アイシンギョロ ウルヒチュン)
立命館アジア太平洋大学教授・京都大学ユーラシア文化研究センター研究員・文学博士
中国内蒙古文化芸術商会名誉理事長・中国遼寧省満洲族経済文化発展協会境外顧問
専攻 契丹・女真・満洲をはじめとするユーラシア諸民族の言語文字と歴史文化
主要著作
『満語語法』内蒙古人民出版社 1983年
『満語読本』内蒙古人民出版社 1985年
『満族古神話』内蒙古人民出版社 1987年
『満洲語音韻研究』玄文社 1992年
『最後の公爵──愛新覚羅恒煦』朝日新聞社 1996年
『女真文字書研究』風雅社 2001年
『女真語言文字新研究』明善堂 2002年
『契丹語言文字研究』(記念金啓_先生学術叢書之一)東亞歴史文化研究会 2004年
『遼金史與契丹女真文』(記念金啓_先生学術叢書之二)東亞歴史文化研究会 2004年
『契丹大字研究』(記念金啓_先生学術叢書之三)東亞歴史文化研究会 2005年
『契丹文墓誌より見た遼史』松香堂 2006年
『愛新覚羅烏拉煕春女真契丹学研究』松香堂 2009年
目次
序 言
第一章 元明時代の女真
第一節 歴史上の「女真」と「女直」
第二節 女真の民族文化
一 言語文字
二 文学
三 名字と姓氏
四 生活習俗
五 宗教
六 文化史
第三節 女真と周辺民族との関係
一 女真と朝鮮との関係
二 女真と明朝との関係
三 女真とモンゴルとの関係
第四節 女真の経済生活
一 牧畜・狩猟・採集
二 農業
三 手工業
四 貿易
第五節 女真の諸部族
第二章 『女真訳語』
第一節 『女真訳語』解題
第二節 『女真訳語』の雑字
第三節 『女真訳語』雑字の表意字、不完全な表意字及び表音字
第四節 女真大字の表音方式
一 膠着
二 重合
三 借音
四 重複
第五節 『女真訳語』雑字の女真大字における問題
一 誤字の問題——その一(本字が判明するもの)
二 誤字の問題——その二(本字が判明しないもの)
三 異体字の問題
第六節 『女真訳語』雑字の女真語彙
第七節 『女真訳語』雑字の女真語彙における問題
一 余計な格語尾の附く単語
二 綴りが誤った単語
三 釈義が誤った単語
四 所属門類が誤った単語
五 女真語文法に合わない連語
六 動詞の形態上における不統一
第八節 『女真訳語』雑字の注音漢字
一 便宜上の表音
二 漢語の意味にこじつけた注音
三 女真字の音韻に合致しない注音
四 音節末の子音に統一的な注音漢字を使用しない
五 音節末の子音を表記しない
六 不完全な表意字の注音に統一的原則が存在しない
七 字に従う注音と単語に従う注音との区別
第九節 『女真訳語』雑字の手本
一 『女真訳語』の注音漢字が一部の不完全な表意字に注音する
のは『女直字書』の表意字の本来の音韻である
二 『女真訳語』の表音字が表記するのは元代の発音である
三 『女真訳語』の女真字は金代石刻よりは『女直字書』のほう
に似ている
四 『女真訳語』と『女直字書』の門類・語彙における類似性
第三章 『永寧寺記碑』
第一節 石碑の建造経緯
第二節 石碑の発見と関係する記述
第三節 石碑文字の性格
第四節 女真大字碑文の研究史
第五節 女真大字碑文の言語的背景
一 音韻上の特徴
二 語彙上の特徴
三 文法上の特徴
第六節 女真大字碑文の書写上における特徴
第七節 碑文に見える「吉列迷」と「諸種野人」
第八節 女真大字・モンゴル字碑文の復元
第九節 女真大字碑文の訳文
第十節 漢字碑文の録文
第十一節 女真大字碑文の考証と解読
第十二節 女真大字・モンゴル字碑文語彙総録
一 女真大字碑文語彙
二 モンゴル字碑文語彙
附 録 「明王慎德、四夷咸賓」
結 語