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持続的な生存基盤を求めて地球圏・生命圏・人間圏

地球圏・生命圏・人間圏 持続的な生存基盤を求めて

杉原 薫:編著, 川井 秀一:編著, 河野 泰之:編著, 田辺 明生:編著
菊判 454ページ 上製
価格:4,510円 (消費税:410円)
ISBN978-4-87698-940-9 C3030
奥付の初版発行年月:2010年03月 / 発売日:2010年03月下旬

内容紹介

産業革命以降,温帯地域の諸国は経済成長に力を注ぎ「先進国」となった.新興国・発展途上国はその恩恵に与れない一方,資源の枯渇や地球温暖化の悪影響を被ることになる.生物多様性や生態系の持続性に鑑み,人類の生存基盤をどう構築すべきか.アジア・アフリカ地域研究の偏った認識枠組を質し,新しい社会システムの指針を提示する.

著者プロフィール

杉原 薫(スギハラ カオル)

京都大学東南アジア研究所教授,京都大学グローバルCOEプログラム「生存基盤持続型の発展を目指す地域研究拠点」拠点リーダー.専攻:近代経済史.

京都大学経済学部卒,東京大学大学院経済学研究科博士課程修了.経済学博士.大阪市立大学経済学部助教授,ロンドン大学東洋アフリカ学院歴史学部シニアレクチャラー,大阪大学大学院経済学研究科教授を経て現職.主要著作に,『アジア間貿易の形成と構造』(ミネルヴァ書房,1996年),『アジア太平洋経済圏の興隆』(大阪大学出版会,2003年), Japan, China and the Growth of the Asian International Economy, 1850—1949 (編著, Oxford University Press, 2005), Labour-intensive Industrialization in Global History, (共編,Routledge, forthcoming).

川井 秀一(カワイ シュウイチ)

京都大学生存圏研究所教授・所長.農学博士.専攻:森林科学.

京都大学木質科学研究所助手,教授を経て現職.2004年「日本の森を育てる木づかい円卓会議」議長(日本木材学会主催),主な著作に『図解木材・木質材料用語集』(東洋書店),『建築に役立つ木材・木質材料学』(東洋書店),鏑ife Cycle Assessment of Preservative-treated Wood: A Case Study of Wooden Bridge,* Doboku-Gakkai Ronbunshu, No755/VII—30: 45—56 (共著,2004). 溺anufaeture of Oriented Board Using the Mild Steam Treated Some Plant Fiber Bundles.* Journal of Wood Science 54: 369—376 (共著,2008).

河野 泰之(コウノ ヤスユキ)

京都大学東南アジア研究所教授,専攻:東南アジア地域研究(土地・水資源管理).

東京大学大学院農学系研究科博士課程修了.農学博士.アジア工科大学院Assistant Professor,京都大学東南アジア研究センター助教授などを経て現職.主要著作にEcological Destruction, Health, and Development: Advancing Asian Paradigms(共編,Kyoto University Press, 2004),Small-scale Livelihoods and Natural Resources Management in Marginal Areas of Monsoon Asia(共編,Bishen Singh Mahendra Pal Singh,2006),『論集モンスーンアジアの生態史 第1巻 生業の生態史』(編著,弘文堂,2008年)など.

田辺 明生(タナベ アキオ)

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科教授,博士(学術),専攻:歴史人類学,南アジア地域研究.

東京大学法学部卒業,東京大学大学院総合文化研究科博士課程退学.東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所助手,京都大学人文科学研究所准教授などを経て現職.主な著作に, The State in India: Past and Present, (共編, New Delhi: Oxford University Press, 2006),『南アジア社会を学ぶ人のために』(共編,世界思想社,2010年),『カーストと平等性—インド社会の歴史人類学』(東京大学出版会,2010年)など.

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

口絵

図表・写真一覧



序 章 持続型生存基盤パラダイムとは何か(杉原 薫)

1 問題の提起

2 地表から生存圏へ

3 生産から生存へ

4 温帯から熱帯へ



第1編 環境・技術・制度の長期ダイナミクス



第1章 グローバル・ヒストリーと複数発展径路(杉原 薫)

1 西洋中心史観の相対化

2 温帯の発展径路—二径路説

 2—1 発展径路とは

 2—2 グローバル・ヒストリーへの適用

 2—3 工業化の二類型

 2—4 二つの径路の融合

 2—5 人的資源集約型発展径路

3 熱帯の発展径路—複数発展径路説

 3—1 分析枠組の再検討

 3—2 環境の包括的把握

 3—3 生命資源の稀少化

 3—4 水と生存

 3—5 生存基盤確保型発展径路

4 生存基盤持続型発展径路



第2章 東アジアモンスーン地域の生存基盤としての持続的農業(田中耕司)

1 東アジアモンスーン地域と「草木深し」

2 東アジアモンスーン地域の農業を支えた自然基盤

 2—1 ユーラシア大陸東縁のグリーンベルト

 2—2 アルプス造山運動と沖積地

 2—3 豊かな一次生産力

3 東アジアモンスーン地域の農業と農法 —水田農業と多毛作体系に注目して—

 3—1 東アジアの農業様式

 3—2 「水稲が優占する集約的自給的農業」

 3—3 水田の多毛作化—西欧とは異なる農法展開

 3—4 東アジアモンスーン地域の農法展開

4 熱帯における土地利用技術の特徴

 4—1 東アジアモンスーン熱帯の農業の特徴

 4—2 プランテーション農業と小農による樹木作物栽培

5 東アジアモンスーン地域の生存基盤

 5—1 生命圏と人間圏の統合場としての農業

 5—2 生存基盤の持続性のために

第3章 乾燥オアシス地帯における生存基盤とイスラーム・システムの展開(小杉 泰)

1 はじめに

2 イスラーム文明圏の眺望

3 イスラーム文明の「三項連関」論

4 三項連関に立脚して,何が生まれたか

5 生存基盤持続型のイスラーム的システム

6 現代におけるイスラーム復興

7 おわりに



第2編 地球圏・生命圏の中核としての熱帯



第4章 地球圏の駆動力としての熱帯(甲山 治)

1 地球圏の理解に向けて

 1—1 生存基盤としての地球圏

 1—2 地球圏における熱循環と水循環

 1—3 地球圏科学に向けた学融合

2 大気と水の循環のメカニズム

 2—1 南北方向の大気循環と水循環

 2—2 東西方向の大気循環と水循環

3 地球圏からみた熱帯と温帯の違い

 3—1 南北の温度差と偏西風が作り出す温帯の特徴

 3—2 豊富な日射と水蒸気がもたらす熱帯の特徴

 3—3 熱帯降雨観測衛星TRMM を用いた熱帯降水の特徴

4 生命圏および人間圏が水循環系に与える影響

 4—1 陸面が大気・水・熱循環に与える影響

 4—2 モンスーンアジアにおける森林伐採と水循環

 4—3 灌漑と都市化

5 新たな「学融合」に向けて



第5章 生存基盤としての生物多様性(神崎 護・山田明徳)

1 生物多様性とは

2 多様性はいかにして形作られてきたのか

3 熱帯の生物多様性

 3—1 フタバガキ科の進化と多様性

 3—2 シロアリの進化と多様性

 3—3 多様性をめぐる二つの対極的な考え方

4 多様性と機能と安定性

 4—1 多様性と生産・分解過程

 4—2 多様性と安定性

5 生存基盤としての多様性

 5—1 資源としての多様性

 5—2 保全のパラダイム



第6章 水の利用からみた熱帯社会の多様性(河野泰之・孫 暁剛・星川圭介)

1 水問題へのアプローチ

2 水の多様性

 2—1 地球の水循環

 2—2 近代土木による水制御

 2—3 熱帯社会の水環境

3 生業の多様性と水利用

 3—1 水を探る

 3—2 水を貯める・使いまわす

 3—3 洪水と生きる

4 持続型生存基盤における水



第3編 森林からの発信 —バイオマス社会の再構築—



第7章 熱帯林生命圏の創出(川井秀一)

1 人工林は何故必要か—森林再生の重要性

2 何故,熱帯地域か

3 天然林から産業造林の利用へ

4 炭素ストックの動的解析

5 大規模熱帯造林地の森林バイオマスの推定と評価

6 森林・木材の炭素貯蔵機能

7 持続性の検証と評価 —森林バイオマス生産の持続性構築に向けて—



第8章 大規模プランテーションと生物多様性保全 —ランドスケープ管理の可能性—(藤田素子)

1 なぜ,プランテーションか

2 熱帯の土地利用変化と生物多様性

3 温帯地域における生態系管理

4 スマトラ島アカシア植林地での鳥類多様性

5 植林地における生物多様性の保全にむけて



第9章 歴史のなかのバイオマス社会 —熱帯流域社会の弾性と位相転移—(石川 登)

1 なぜ,バイオマス社会に着目するか

2 バイオマス社会の歴史的展開

3 バイオマス社会の弾性

4 バイオマス社会の位相転移



第10章 産業構造の大転換 —バイオリファイナリーの衝撃—(渡辺隆司)

1 問題の所在とその背景

2 バイオリファイナリーが社会・経済・環境に及ぼす影響

 2—1 バイオマスのエネルギーポテンシャル

 2—2 バイオマスの温暖化ガス削減効果

 2—3 バイオリファイナリーによる新産業の創成

 2—4 バイオリファイナリーによる既存産業構造の改編

 2—5 バイオリファイナリーによる地域社会の活性化

 2—6 エネルギー安全保障への貢献

3 バイオリファイナリーに必要な技術革新

 3—1 バイオディーゼルの製造

 3—2 糖の発酵によるバイオエタノールやバイオ化学品の製造

 3—3 バイオリファイナリーのための微生物の改変と利用

 3—4 微生物変換と熱化学変換の統合バイオリファイナリー

4 バイオリファイナリーを基盤とした持続的社会の構築に向けて



第4 編 人間圏の再構築



第11章 グローバル化時代の地域ネットワークの再編 —遠隔地環境主義の可能性—(清水 展)

1 地球と地域

2 有限の地球

 2—1 宇宙船地球号

 2—2 共有地の悲劇,あるいは成長の限界

 2—3 暗い未来に抗して

3 グローバル化と地域社会

 3—1 グローバル化の進展

 3—2 北部ルソン山奥村の変容

4 「グローカル」な生活世界

5 遠隔地環境主義



第12章 われわれの〈つながり〉 —都市震災を通じた人間圏から生存基盤への再編成—(木村周平)

1 〈つながり〉としての生存基盤

 1—1 生存基盤とは

 1—2 生存基盤とそれを脅かすもの —自然災害—

 1—3 イスタンブル—ローカルな生存基盤

2 ローカルとグローバルの往復運動

 2—1 地震の知識のネットワーク

 2—2 〈つながり〉の変容 —科学・政策・社会—

 2—3 イスタンブルの脆弱性

3 コジャエリ地震

 3—1 被災と人びとのつながりの顕在化

 3—2 つながりの再編—暗い将来へ?

4 新たな〈つながり〉へ

 4—1 住民防災チーム

 4—2 イスタンブル,未来の地震と“われわれ”

 4—3 〈つながり〉の拡大

5 人間圏から生存基盤へ



第13章 生存基盤の思想 —連鎖的生命と行為主体性—(田辺明生)

1 人間圏の再構築の必要性

2 歴史のなかの人間圏—その構造変動

 2—1 神話的世界から宗教的世界へ

 2—2 科学的世界から持続型生存基盤へ

3 生存基盤という思想—生の作法へ

 3—1 「生のかたち」を支える生存基盤

 3—2 自己と環境の相互作用としての生命

 3—3 政治と生態の融合—法的主体から生命的行為主体へ

 3—4 合理主義と調和論の対立を超えて

4 人間の生を支えるもの —いのちのつながり—

 4—1 いのちの営み

 4—2 個体的生命と連鎖的生命

 4—3 インドの宇宙観と人間観 —連鎖するいのち—

 4—4 いのちの価値—生と死の場としての生存圏

5 地域の潜在力—生存の技法と技術

 5—1 多元的な発展径路

 5—2 インド型発展径路とカースト

 5—3 社会と自然のネットワーク

 5—4 生存学へ

6 持続型生存基盤の構築のために



終 章 生存基盤指数からみる世界(佐藤孝宏・和田泰三)

1 生存基盤指数の目指すもの

2 平均寿命指数から障害調整健康余命へ

3 教育関連指数の発展

4 経済活動を通じた人間と「環境」の関わり

 4—1 地球圏と生命圏

 4—2 生命圏の持つ潜在力と実際の生物生産力

 4—3 実際の生物生産力とエコロジカル・フットプリント —再生可能資源の利用—

 4—4 望ましいエネルギー消費水準とは —枯渇性資源の利用—

5 生存基盤指数のさらなる発展に向けて



あとがき

索引


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